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人と街が近づくバイクシェアを目指して―ドコモ・バイクシェア 堀社長インタビュー

2018/6/27(水)

株式会社ドコモ・バイクシェア 代表取締役社長・堀清敬氏

株式会社ドコモ・バイクシェア(以下、ドコモ・バイクシェア)は、2011年の横浜市「baybike」のサービス開始を皮切りに、首都圏などでサービスを展開し着実に拡大を続けている。ここ数年は、海外企業や他業界からの参入など、市場が混沌としている印象だ。国内で先駆けて取り組んできたドコモ・バイクシェアの今と、MaaSを含めた将来の展望について代表取締役社長・堀清敬氏(以下、堀氏)に話を伺った。

 

ドコモ・バイクシェアのサービス概要

――ドコモ・バイクシェアは既にさまざまな都市で展開している印象ですが、導入状況について教えてください。

2011年横浜市で実証実験という形式を採りサービスを開始しました。2018年3月末時点で、東京都内を中心に25都市に、7,200台の自転車、約700カ所のポート(駐輪スペース)を設置し、サービスを展開しています。利用状況は毎年倍々で増加していき、2017年度は利用回数が470万回(前年度220万回)に到達しました。

 

――サービスの特徴について教えてください。

自転車側にテンキーとIC読み取り機能を備えた通信モジュールを組み込んでいます。いわゆるIoT自転車ですね。貸し借りや駐輪場所の制御などを自転車の通信モジュールでおこなっていることが特徴のひとつです。
IC読み取り機能は、SuicaやICOCAなどの交通系ICカードを一度登録していただければ、モジュールにカードをかざすだけで開錠できるようになるものです。日本ではすっかり定着した交通系ICカードを便利に利用していただけるこの機能は、他社との差別化につながる点です。
サービス導入当初から電動アシスト付自転車を展開している点も特徴です。たとえば、東京都内においても坂道が各所にあります。そうした日本の地理的特徴に合っており、お客様から非常に高い評価を頂いています。

自転車シェアリングシステムについて (本記事で使用する資料は全てドコモ・バイクシェアより提供)


――そのほか、自転車本体や端末以外の点で特徴はありますか?

簡易設置型のビーコンでポートを仮想管理している点があります。ポートに設置したビーコンと自転車側のモジュールが通信できる半径5m以内の範囲でなければ駐輪できないというシステムです。GPSに加え、このビーコンとの通信を活用することで、より厳密な駐輪スペースというものが実現できます。
GPSとビーコンシステムで駐輪スペースを制御するということは、ポートに特殊な工事は不要で、非常に簡単な工事でポートが設置できます。この利点は災害時などにも大変有効で、直近の話では、熊本地震の際にこのポートを設置し、自治体の職員やドコモのスタッフに利用していただきました。

 

――GPSは自転車のモジュール側に搭載されているのでしょうか?

はい、モジュールの中に搭載しています。自転車の方から移動系統情報を上げるようになっています。頻繁に通信が発生すると電池容量の問題も出るため、現状では数分間に1度情報を上げる程度ですが、これがいわゆる走行データとして蓄積されます。データを自治体などに提供して活用いただいています。今後はマーケティングにも活用できればと考えていますが、まだ模索している段階であり、これからの課題です。

 

――ポートに特殊な工事が不要という点ですが、そうした方法を採用した理由を教えてください。

現状日本国内でシェアサイクルをやっている主な企業にも共通していますが、駐輪場側に大きな時間とコストを掛けないようなシステムにしています。これが欧州では少し事情が違っており、ポート側にロック機能が付いていたり、開錠やチャージなどもポート側の機械で行ったりします。つまり、ポート側に通信や制御機能を入れて貸し借りするシステムが主流ということです。そうすると電源をポートに引き込む必要が生じるなど、導入するには時間もコストもかかってしまいます。それではやはり事業として採算が厳しいということでこのようなシステムを開発しました。

 

広がりを見せる利用スタイル

――主にどのような用途で利用されているのでしょうか?

全体的には、通勤通学目的の利用が主です。時間帯でいうと朝方と夕方が最も利用される時間帯ということになります。それに比べ、昼間はあまり利用されていない時間帯です。当社としては、この時間帯にもっと利用していただくことが経営の安定化につながっていくと考えています。そのため、今力を入れている施策として、法人利用の促進があります。東京都内では法人利用が進んでいる状況です。

法人利用の事例


――法人利用の具体的なモデルについて教えていただけますか?

都内を中心に、Uber EATS(※)というサービスがあり、法人契約を結んでいます。宅配機能を持たない店舗の料理を、Uber EATSのスタッフがお客様のところへ届けるということが、都内では随分定着してきています。それをわれわれの赤い自転車に乗って料理を届けるということも同時に定着しました。
もう一つは富士ゼロックスとの事例があります。同社はコピー機のトナーの交換や保守のため、定期的に複数のオフィスを行き来する必要があります。従来は、自転車を購入し、駐輪場を確保し、自転車のメンテナンスまで自社で行われていましたが、われわれのサービスを利用していただくことで、非常にかさんでいたメンテナンス費用がゼロになり、自社の駐輪場まで返却しに行く必要がなくなった、というメリットが生まれました。ポートでの乗り降りが可能となったため直行直帰の促進につながり、「働き方改革」の面からも高い評価を頂いています。こうした例のような法人利用をさらに増加させたいと考えており、営業に注力しています。

※ Uber EATS:Uberが展開するフード宅配サービス。ユーザーはアプリに登録された店舗から料理を注文し、宅配パートナーが配達を行う。従来は東京23区と横浜7区が対象エリアだったが、今年4月から大阪市内の一部でもスタートした。

 

――シェアリングには偏在という問題がありますが、解消のためにどのような工夫をされていますか?

偏在はサービス的にも大きな課題になっていて、現状ではトラックを走らせて、自転車が多いポートから抜いて、足りないところへ再配置するということを地道にやっています。

 

――もっと台数や利用回数が増えてくるとうまく循環していくものでしょうか?

まず日本では、どこでも自転車を乗り捨てていい、あるいは一定エリアであればどこに自転車を駐輪しても構わないというサービスは、なかなか実現が難しいと思っています。各自治体は違法駐輪問題や、駅前に自転車があふれかえり通行に支障をきたすといった課題を抱えているためです。駐輪できる場所にしっかり停める、あふれてしまう状態になれば責任をもって再配置する、というのは事業者の義務だと考えており、規模が大きくなってもそうした責任をしっかり果たすという点は変わらないと思っています。
ただ、ポート配置については工夫の余地があると思っています。朝方は通勤通学の利用で駅前に自転車がどんどん増えていくわけですから、駅の周辺に駐輪できるスペースを増やせば、あふれることもなければ、再配置する必要はないと考えます。お客様の動線をきちんと理解した上で、戦略的にポートを作っていくことが重要だと考えています。

 

公共性の確保と、グループとしてのサービス展開


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