HEREが描く地図の未来
2016/7/31(日)
オンラインの地図を開発、提供しているHERE。本拠はドイツにあり、全世界に地図を配信しています。世界的に大きなシェアを持つ同社ですが、日本における地図の整備は進んでいません。また、2015年には、BMW、ダイムラー、アウディの3社の自動車メーカーによって買収されました。これにより、HEREの地図がドイツに独占されるのでは、という懸念も広がっています。HEREのこれからの動向について、Head of Product Marketing – AutomotiveのMartin Birkner氏に伺いました。
[LIGARE vol.28 (2016.7.31発行) より記事を再構成]高精細マップで世界をリードするHERE
HEREは、リーディング・ロケーション・クラウドのサービスを提供しています。これからの未来、ものがどこにあるのか、人がどこにいるのか、クルマがどこにあり何をしているのかという情報は、IoTの世界、自動車業界、またその他コンシューマービジネスにおいても重要性が非常に高くなります。場所や位置というものにいかに意味を持たせるのかが大切です。HEREはそれを一つのクラウド・インフラストラクチャーという形に集約し、位置情報によってつくられたアプリや経験を、自動車業界やコンシューマーカンパニーに提供しています。Googleが検索のクラウド、Facebookはソーシャルのクラウドとして有名ですが、HEREは世界でリーディング・ロケーション・クラウドのサービスを展開しています。「位置情報、それが私たちすべての情熱を傾けている分野なのです」。現在に至るまで25年ほど、そのような位置情報が事業の中核を成しています。例えば25年前には、BMWと協同で地図ベースの自動車用ナビゲーションシステムを業界で初めて開発しました。
20年ほど前を考えると簡単な2Dの地図が主流でした。しかし、今ではクラウドベースの高精度HDマップが主流になっています。これにより、cm単位で位置を明らかにできる、極めて精度が高い位置情報が提供できるようになりました。高い精度の位置情報がわかることで、クルマやスマートフォンに対してパーソナライズされたナビゲーションの経験を提供することができます。クルマであれば、自動運転を実現することにもつながります。
HEREは、さまざまな「史上初」というイノベーションを生み出しています。例えば、2015年にはクルマから得られるセンサー情報を取り込み、HDマップに反映するためのオープン仕様を初めて公表しました。今後はOEMだけでなく、他の業界のプレーヤーにも参加してもらい、標準化されたオープンな仕様を使って、さまざまなデータを地図に取り込んでいきます。
独コンソーシアムによる買収の真意
2015年8月、Audi、BMW、ダイムラーのOEM3社がHEREを買収しました。長い間これらのOEMとは協業してきた歴史があり、HEREは今回の買収を歓迎しています。買収の一つの大きな意味は、自動車業界がデータというアセット共有化の必要性を認識したというところにあります。3社は激しく競合しているにもかかわらず、協同のコンソーシアムでHEREを買収するに至りました。自動車業界の将来にとって、データの重要性にコミットしたということでもあります。
しかし、買収があったからといってHEREがその他のOEMに対して商品やサービスを提供しないということは全くありません。もちろん、大企業やコンシューマーカンパニーともビジネスをしていきます。HEREはオープンで独立し、独自のビジネス、独自の価値を創り出していくことに期待されているのです。オープンであるということは、全ての参加者、お客様に対してデータプラットフォームを提供することを意味します。独立性とは、3社がHEREのビジネスの判断に何ら影響しないということです。買収を受けて、ロケーション・クラウドが3社だけのクローズドな環境になるのではないかという不安が広がっていますが、どこか1社、あるいは3社の株主によって支配されることはありません。
このように、オープンであるということが一つの特徴ですが、それは自動車業界に限ったことではありません。自動車業界だけでなく多くの企業とデータをシェアすることが実現すれば次世代の高度にパーソナライズされたナビゲーションを実現することができます。
買収のもう一つの意味は、3社のOEMのクルマから集まるデータを取り込むことができることです。HEREのロケーション・クラウドのプラットフォームやサービスをさらにパワーアップしていくことができます。
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