人工筋肉が調節、冷暖房シートは26年実用化目指す

自社ブースに展示された「VODY2.0」は、人工筋肉を組み上げたシート。空気圧がかかると人工筋肉が動き、シートが伸び縮みする。座る人の体重や姿勢に応じて空気圧を調整して、最適な座り心地を図る。トヨタ紡織は研究を進め、センシング結果を製品開発に生かす考え。



26年の実用化を目指す「サーマルコンフォートシート」も出展した。シートが座る人を直接温める・冷やすことで冷暖房の効率化・電力使用を抑制し、EVの電費向上につながる。

ロボタクシー時代のコンセプト車「MX221」

「MX221」は、「ライドシェア移動空間」。10年以内に実用化されると見込む、レベル4自動運転のロボタクシーへの搭載を想定して作られたコンセプトモデルだ。

自動運転中の車室内で乗員が有意義な時間を過ごせるようにする。横になる、食事する、快適に移動するなどの機能をもたせたシートを配置する。トヨタ紡織はシート交換に「テーラードスペースシステム」を採用。無人搬送車と車室床面のレールを利用することで簡単に入れ替えできる。



「MX221」はグレード別のサービスを想定していて、「Pass」「Plus」「Prime」の3種類に分かれ、各グレードのシートに入れ替わる設定。車いす仕様の「Access」も含めて計4種のシートからロボタクシー配車時に選択する。

標準設定の「Pass」よりも上位の「Plus」で使うシートは、座席を回転させて向かい合わせにできる。さらに上位の「Prime」は、完全にリクライニングして車内で短時間でも上質な睡眠がとれるようにしている。

自動運転中「5分で眠れる」車いす移動も軽々

「Prime」シートは、人が横になると、ゆりかごのように前後上下に揺れ、音漏れが非常に小さいパーソナルスピーカーからヒーリング音楽が流れたり、アロマが噴射されたりしてリラックスした眠りに誘う。目的地に近づくとシートから風が吹き、目覚めを促す音楽が流れる。

シートの心地よい揺れの研究は大学と共同で手掛けている。快適な感じは大きく「5分で眠る」という説明にもうなずける。この揺れの技術を取り込んだシートは「アルファード」などショーファーカー向けで提案しているという。


車いす固定・脱着機能付きのシート「Access」は、車いす利用者が一人で乗降しやすい。車両には電動スロープが搭載されていて、呼び出されたタクシーから自動でスロープが下りる。車いすで乗り込み、シートに固定するまで「30秒もかかりません」とチーフ・ブランディング・オフィサーのリチャード・チャン氏は実演後に説明した。

トヨタ紡織は車いす「MX ACCESS」も発表。独自開発した小型の水素燃料電池により、軽い力で簡単に坂道を登れる。いす部分は自動車シート並みの安全性を持たせた。

未来の車室をサービス事業者と共創

チャン氏によると、トヨタ紡織は「MX221」を米Uberや中国の滴滴出行などライドシェアのサービスプロバイダーに対して提案。関心を示している企業があり、プロバイダーと共に未来の車室空間を作っていくという。

トヨタ紡織は自社ブースで展示した「MX221」以外にもコンセプトカーをモビリティショーで出品した。車内の天井、モニター、窓に当たる透明ディスプレイに拡張現実(AR)・仮想現実(VR)コンテンツを再生するバス「MOOX-RIDE」と、車室内のシート、テーブルを変形・回転させる「T-FAS（Tailored Flexible Autonomous Space)」の2種。



白柳正義社長は会見で「モビリティの中で人にもっとも近い部分である自動車のシート」や内装部品を生産する企業として、「移動空間の新しい価値を創造する『インテリアスペースクリエイター』になることを掲げており、技術開発を進めている」と話した。