日野がめざす物流課題の解決とCN達成は、NLJやCJPT、統合新会社の枠組とも協調【JMS2023】
2023/11/14(火)
日野自動車株式会社(以下、日野)はジャパンモビリティショーで、すでに展開中の小型BEVトラックやトヨタと共同開発中の大型FCVトラックを展示。さらにNEXT Logistics Japan株式会社(以下、NLJ)の取り組みも紹介し、2024年問題など物流課題の解決やカーボンニュートラルの達成に向けた方針を示した。
人流・物流の課題解決に注力した展示
日野が今回展示した実車両は、小型BEVトラック「日野デュトロ Z EV」と燃料電池大型トラック「日野プロフィア Z FCV プロトタイプ」の2種類。コンセプト車両を展示しなかった意図について、小木曽社長は「ジャパンモビリティショーのテーマと向き合い(中略)人流・物流に携わる方々につながるテーマに集中しようと考えた」と説明した。「日野デュトロ Z EV」は、超低床構造によって荷役作業や乗り降りを容易にし、ドライバーの負担軽減に貢献する小型BEVトラックとして展開している。普通免許でも運転が可能で、特にラストワンマイルの配送現場を想定した車両だ。
また、商用EV向けの取り組みとして、2021年に関西電力と設立したキューブリンクスについても言及。車両や設備の導入コンサルティング、充電設備の設置、稼働マネジメントシステムなど、電動車に関するソリューションを一括で提供するプラットフォーム「エモプラっと」を紹介した。
もう一つの展示車両が、トヨタと共同開発を進めている「日野プロフィアZ FCVプロトタイプ」だ。小木曽社長はこの車両を「商用車に求められる航続距離と積載量、短時間での燃料補給に対応できる」車両としつつ、「カーボンニュートラルに対応する車両」とも述べている。
同社のカーボンニュートラルへの取り組みについては、「CO2を出さない、働く車を止めない、お客様のトータルコストを悪化させない、これらを実現するため、BEVからFCVの開発に取り組むだけでなく、カーボンニュートラル燃料を利用した内燃機関も含めたマルチパスウェイで取り組む」と語った。
連結トラックや量子コンピュータなどを活用するNLJの物流改革
プレスブリーフィングでは、新たな幹線輸送のスキーム構築を目指して2018年に日野が中心となり立ち上げたNLJから梅村幸生社長も登壇し、同社の取り組みを紹介した。まず挙げたのが、1人のドライバーで2台以上の荷物を運ぶ「ダブル連結トラック」の活用だ。この車両の導入によって、食品・飲料・自動車部品など、さまざまな業種の荷物を組み合わせることができる。また、ダブル連結トラック以外にも、トラックに各種センサーを取り付けて積載率・稼働率を可視化する取り組みも進めており、積載効率の向上に努めている。
また、積載効率の向上に向け、システムの活用も進めている最中だ。新たに開発した量子コンピュータを使った最適化システム「NeLOSS(ネロス)」を使用することで、およそ40秒でトラックの積載率を上げる最適な組み合わせ・配車を実現できるという。
ネロスの活用について梅村社長は「(異業種の混載については)すでに1万パターン以上のノウハウがある」とし、今後も多様なデータを蓄積することでシステムの高度化を目指す考えを示した。
事業開始から現在までの4年間で「NLJは、11台のダブル連結トラックを使い、6000人以上の省人化、1350tのCO2を削減した」と梅村社長は説明。さらに「効率化した分をトラックドライバーの賃上げに還元し、トラック輸送をサステナブルな事業にしていきたい」と語った。
4社協業による新会社は来年夏に誕生か?
小木曽社長は、物流業界の課題である2024年問題や、カーボンニュートラルに向けた取り組みについても触れ、「日野が単独で取り組めることは限界がある」と言及した。NLJのような荷主企業・運送事業者との協業に加え、今年5月に基本合意を締結したトヨタ、ダイムラートラック、三菱ふそうとの4社協業や、今年10月に復帰したCJPTの枠組みを含め、「社会と融和した物流業界の全体最適」を目指す方針だ。なお、4社協業にともなう新会社設立の進捗状況について報道陣から問われた小木曽社長は、「2024年3月に最終的な契約締結と同年夏ごろの統合を見据えて、準備を進めている段階」だと明かした。