日本総研ら、EV電池の残存価値診断等サービスについて協定締結
2022/10/25(火)
株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)は、EV電池の残存価値の診断とブロックチェーンによる継続的な情報管理を行うサービスについて、長瀬産業株式会社(以下、長瀬産業)ら6社間で協定を締結した。3月31日付のプレスリリースで明かしている。
EVに搭載される大型の電池は、脱炭素とグリーン成長戦略の主役の一つとして期待されている。EVの電池は、過酷な条件下でも安定して高い出力を確保する必要があることから、高性能な電池が使われている。そのため、EVでの役目を終えた後も、再エネの調整電源をはじめとした多くの用途への転用が可能だ。さらに、EV電池は、再エネの調整電源などでの役目を終えた後も、資源枯渇などの問題を解決する再生資源としての活用が期待されている。今や、EV電池はEVで利用する部品としてだけでなく、循環利用のバリューチェーン全体で活用される製品として期待されるようになっていると言える。
しかし、EV電池は、循環市場がまだ成立していないため、転用や再生資源としての価値が認められないまま、ほとんどが廃棄・焼却されてしまっているのが現状だ。その原因の一つとして、中古EV電池の品質を的確に診断・評価し、安全に運用管理する仕組みが普及していないことが挙げられる。もう一つの原因として、自動車、電力、資源等の業界縦割りになってしまうことで、業界横断での循環利用の仕組みを作ることは難しいという実状もある。
欧州では、バッテリー指令として電池の業界横断での再資源化、最大効率利用が推進されており、米国や中国がこれに続くことで世界の標準となっていく可能性が高まっている。日本は、電池分野において技術開発で先行したにもかかわらず、持続可能なサプライチェーン構築で世界に取り残される可能性もある。こうした事態を打開するためには、脱炭素社会実現のための中核となる製品であるEV電池の循環利用の価値を最大化する仕組みを築く必要がある。
今回の協定は、日本総研、長瀬産業、カウラ株式会社、横河ソリューションサービス株式会社、日置電機株式会社、三井住友ファイナンス&リース株式会社の6社で締結した。目的は、BACEコンソーシアム※の活動を踏まえ、EV電池の残存価値の診断とブロックチェーンによる継続的な情報管理を行うサービスについて、中国国内での事業立ち上げに向けた検討を行うことだ。
※ 日本の先進診断技術開発および循環市場のエコシステムを形成する企業による事業検討のコンソ―シアム(プレスリリースより)
6社は、検討の第一段階として、中国広東省の電池リユース事業者と連携し、電池価値の情報管理を行って診断証明を提供するサービスの事業化を目指し、実証を開始した。同実証は、BACEプラットフォームを活用することで、電池調達時に短時間評価を行って調達する電池品質向上を行う。さらに、リユース電池製造工場の診断評価プロセスの時間を短縮して操業を効率化し、電池価値の情報管理を行って診断証明を提供する。現在、中国の最先端の再生工場では、調達した電池をモジュール、セルに分解し、それぞれ数時間から十数時間かけて残存価値の診断試験を行って、高品質なリユース電池を製造している。同サービスでは、BACEプラットフォームを活用することで診断時間を数十分の一に短縮させ、毎年倍近く急増しているリユース電池の工場生産量の一層の拡大に貢献する。
また、従来は、EV電池の残存価値を簡易に評価する方法がなかったため、走行距離などの情報のみによる調達が行われていた。同サービスを活用することにより、調達時の高品質な選別が可能になる。
さらに、モジュールおよびセルについては、それぞれブロックチェーンを用いた電池IDの管理を行い、診断証明を実施する。これにより、新たな電池パッケージに組み上げて他用途で利用する際にも、電池の価値の一貫した管理が可能になる。このため、電池サブスクサービスであるBaaS(Battery as a Service)の電池管理を行うこともできるようになる。
現在、電池評価の市場では、診断計測機器を販売する方法が一般的だ。しかし、この場合、電池のデータは診断計測機器を購入して利用したそれぞれの事業者の元に留まるのみで、データの流通がされず、得られた価値も流通させることができない。同サービスでは、中古EV電池の価値の診断評価情報を第三者が管理することで、電池価値を一括管理することができる情報プラットフォームを整備し、電池の循環市場を創出する。
日本の電池循環は、業界ごと、企業ごとの縦割りになっているが、今後は欧州のように業界横断での標準化の仕組みが必要となる。この課題を解決する一つの手法として、価値情報の管理の外部化を担うサービス事業の立ち上げを目指す。
なお、日本総研は、今後も継続的な実証を行うことで、中国で流通する各種EV電池の特性を分析・学習しながら、対応可能な電池の種類の拡大と診断精度の向上を図る。また、運用時の安全性評価や長寿命化についての技術の導入も進める予定だ。さらに、提携先である中国広東省のリユース事業者とは条件等の調整を進めサービス試行を行い、同協定当事者間で事業体制の検討を行った上で、中国国内における事業開始を目指すと述べている。
(出典:日本総研 Webサイトより)