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自動運転の最新動向 ~クルマの基準作りからみた世界の動き~ 国土交通省

2017/11/28(火)

国土交通省自動車局 技術政策課国際業務室長 久保田 秀暢 氏

2016年11月25日、グランフロント大阪にてLIGAREビジネスセミナーを開催しました。今回は「自動運転の今を知る」というテーマで、久保田秀暢氏(国土交通省自動車局 技術政策課国際業務室長)自動運転は国内外でどこまで進んでいるのか、どんな技術が必要なのか、自動運転時代にはどんなモビリティサービスが必要なのかなどについてご講演いただいた内容をご紹介します。

[LIGARE vol.30 (2016.11.30発行) より記事を再構成]

クルマの安全対策とは?

クルマの安全対策は、交通事故を防ぐためにとても重要なことです。そこで、最初に交通事故とは何なのか考えましょう。WHO(世界保健機構)では、交通事故防止を大事なテーマとしており「道路交通傷害は、重大であるにも関わらず、なおざりにされてきた公衆衛生の問題であり、効果的かつ持続可能な防止策に向けて共同の努力が必要とされる」としています。このような事故を防ぐためには何が必要かというと、総合的な交通安全法規、それからしっかりと規制が行われていることが必要です。

WHOは、2020年には世界で190万人の方が交通事故で亡くなると報告しており、2010年から2020年までの10年間、合計で500万人の死者を減らすという目標を立てています。その5本の柱の中に「交通ルールをつくり、運転免許制度や交通規制を行う」ことや「安全なクルマをつくる」ということが挙げられています。このようなことを通じて交通安全をちゃんとやっていきましょうということが国際的にもいわれています。

 

日本の交通事故の現状

日本では、いまだに年間4000人もの方が交通事故で亡くなられています。一時期のピークに比べればこの20年ぐらいで約半数に減っていますが、政府の目標としてはこれから5年間で2500人にまで減らそうと考えています。これは非常に難しい目標だと思っています。

 

図1:交通事故の現状
死者数、負傷差数、事故件数のいずれも年々少なくなってきているが、減少率は徐々に小さくなっている。政府は平成32年までに負傷者数50万人以下、死者数2500人以下を目標としている。


図1を見てもらえば分かると思いますが、ここ6~7年でだんだんとグラフが横ばいになってきています。高齢者の数が増えているとか、高齢者の事故がなかなか減らないなどいろいろな要因があります。

数だけで見ると、高齢者の事故が多いですが、質を見ると別のことが見えてきます。年齢構成別に死亡原因を見ると、高齢者の第1位はがんです。一方、20歳以下で圧倒的に多い死因は不慮の事故です。その中の約2/3が交通事故です。病気で亡くなることがあまりない若い命を救うという意味では、交通事故対策は非常に重要です。

 

政府が考える安全対策

交通事故対策のために政府が考えているのが「人・道・クルマ」ということです。「人」とは、交通ルールを守ることです。交通信号機を付けたり規制を行ったり、速度違反などの取り締まりをやることが「人」の対策で、基本的に警察が行っているものです。

「道」とは、道路を整備することです。案内標識を付けたりガードレールを付けたりすることも安全対策の1つです。また、高速道路の整備も重要です。高速道路では死者数、交通事故数も圧倒的に減ります。このような対策を、国土交通省の道路局が行っています。

最後が「クルマ」です。これが私が担当している分野になります。クルマの安全基準を決めること、車検を行うこと、自動車の整備を行うことが「クルマ」の対策になります。3つに分けるとバラバラのように見えますが、これらを連携して行わなければなりません。例えば、交通信号機つけるのと案内標識つけるのは連携しなければうまくはいきません。今回は、中でも「クルマ」の安全対策に注目したいと思います。

 

クルマの安全対策

クルマの安全対策には、大きく分けて2つあります。

 

図2:事故が起きても怪我をしない、安全なクルマづくりによる安全対策


1つは、事故が起きても怪我しない、安全なクルマにしましょうということです。具体的には、バンパーやボンネットを柔らかくしたりするなどのことで「衝突安全対策」と呼ばれています。衝突してもなんとか安全を確保しようという考え方です。

 

図3:そもそも事故を起こさないクルマづくりによる安全対策


もう1つが、そもそも事故を起こさないクルマづくりをしようという対策です。基本的なこととしては、ヘッドライトやウインカー、ブレーキをつけるなどです。ヘッドライトを例に挙げると、自分が見やすくなるためだけではなく、人から自分がどこにいるか診てもらうために点けているのです。

なので、夜道で自分が見えているからヘッドライトを点けないというのは、とても危ない行為です。特にお年寄りの方は視力が落ちているため、クルマが来ているかどうかわからないことがよくあります。そういった点で、ヘッドライトは事故を起こさないための安全装置の1つなのです。こういった安全装置の中に最近出てきたのが、先進安全技術です。自動ブレーキや横滑り防止装置などと呼ばれるものです。

このように、事故を起こしても怪我をしない技術と、事故を起こさない技術を組み合わせたものが自動運転と考えてよいでしょう。

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