メトロウェザー、JR東日本スタートアップと業務提携 ヤマトHDも出資
2022/4/12(火)
JR東日本スタートアップ株式会社(以下、JR東日本スタートアップ)は、メトロウェザー株式会社(以下、メトロウェザー)と、鉄道現場の生産性向上にむけて、資本業務提携することを合意した。4月11日付のプレスリリースで明かしている。
メトロウェザーは、長年の研究で培ったリモートセンシング技術と信号処理技術を基に、高性能な小型風況観測センサー「ドップラー・ライダー」の開発を行っている京都大学発のスタートアップ企業だ。ドップラー・ライダーは、空気中の微粒子などに赤外線レーザーを3次元スキャンしながら照射する。これにより、対象物からの散乱光を検出し、ドップラー効果※を用いて、風向きや風速をリアルタイムに計測することができる。※波の発生源が移動あるいは観測者が移動することで観測される周波数が変化する現象
空間的・時間的に高解像度な風況データを観測できるドップラー・ライダーは、今後普及が見込まれるドローン管制に風況データの提供を実現する技術として期待されている。また、メトロウェザーは、国内の多くの企業と実証実験の実績を誇り、2021年からは米国のNASAとの共同実証実験プロジェクトも開始している。JR東日本グループでは、グループ経営ビジョン「変革 2027」においてJRE-BIM※・ICT技術の導入による鉄道現場の生産性向上を目指している。従来のドップラー・ライダーは、大型・固定式が主流であり風況観測等に用途が限られていた。今回の資本業務提携では、ドップラー・ライダーの小型・可搬化と物体検知等の新たなユースケースへの応用を図る。これにより、幅広い分野への参入可能性が見込める。
※JRE-BIM:JR東日本におけるBIM/CIMの取り組みの総称
JR東日本スタートアップは、「JR東日本スタートアッププログラム2021」の実証実験を1月に実施した。同実証実験では、毎夜の工事終了後に人力で行っている線路内支障物の確認作業の自動化・省力化の可能性についての検証を行っている。この中で、メトロウェザーのドップラー・ライダーは、休止中の鉄道線路において、数百m先にある数十cmの物体を検知することが確認でき、クリアすべき課題等の知見を得ている。なお、JR東日本スタートアップによると、今後は自動運転等への導入や線路周辺の広範囲の風況計測の可能性もあるという。そして、空だけでなく鉄道(陸)でのドップラー・ライダーの利用をメトロウェザーと共に目指す。
また、ヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマトHD)は、「KURONEKO Innovation Fund」(運営者 グローバル・ブレイン株式会社)を通じて、メトロウェザーに出資を実行した。4月11日付のプレスリリースで明かしている。
ヤマトHDは、今回の出資理由として、メトロウェザーの世界的に高い技術や競合優位性、強力な市場ポジショニングを挙げている。「KURONEKO Innovation Fund」のポートフォリオにメトロウェザーを組み入れることで、気象観測や風況データ活用の知見を深める。そして、ドローンを活用した「新たな輸送モード」の構築など、新たな価値提供に役立てることを想定していると述べている。