京大発ベンチャー、NASAのプロジェクトをサポートする協働契約締結
2021/9/6(月)
メトロウェザー株式会社(以下、メトロウェザー)は、NASAのSBIR(Small Business Innovation Research)プロジェクトをサポートするための協働契約を締結した。契約はTruWeather Solutions, Inc. (以下、TruWeather)と共に締結している。メトロウェザーが、8月30日付のプレスリリースで明かした。
メトロウェザーは、京都大学発のベンチャー企業であり、2015年に設立した。2016年から3年間、米国海軍研究所の基礎研究予算を獲得し、空母搭載用のドップラー・ライダーの基礎開発を行なってきた。ドップラー・ライダーとは、風速・風向を観測することができる大気計測装置だ。大気中にレーザー光を発射し、大気中のエーロゾル(塵、微粒子)からの反射光を受信することで観測する。
同社のドップラー・ライダーでは、この基礎開発をベースに完成させたハードウェアに、高精細信号処理技術を組み合わせている。高精細信号処理技術は、同社CEO・古本淳一氏が大気計測や計測工学の研究で培ってきた技術だ。これにより、これまでにない小型・高性能化を安価に実現した。
TruWeatherは、UAS(無人航空機)やUTM(無人航空機の運航管理システム)を対象に、気象ソリューションを提供している。ドローンオペレーターやエアタクシーの運航に対し、サブスクリプションベースのAPIにより実用的な気象情報を提供。さらに、ドローンの稼働率の向上やスケジュールの最適化、最適なフライトプランを実現するTruFlite V360を開発し、運用している。このTruFlite V360は、TruWeatherの都市域におけるCFDシミュレーション技術やデータ解析技術がベースだ。
今回のプロジェクトでは目的が2つある。1つ目は、都市環境におけるUrban Wind Experiment (UWEX)を構築するための設計の完成。2つ目は、Phase2契約を獲得することだ。現在はPhase1に取り組んでおり、来年度のPhase2では実際の都市においてUWEXを行うことを計画している。
メトロウェザーは同プロジェクトにおいて、対象となる都市部のライダー観測を行うための最適なセンシングアルゴリズムとデータ収集戦略を提供する。さらに、メトロウェザーのコンパクトで高性能なドップラー・ライダーを使用した複数のライダデータフュージョンのためのモデル開発などを行う。
TruWeatherは、風測定データを同社運用の都市風況シミュレーションシステム(TWS’s urban wind model)に統合する。風測定データは、複数のドップラー・ライダーから得たリアルタイムのデータだ。さらに、UASやAAM(advanced air mobility)の気象ニーズに対して効率的に最適な予測を行うシステムの設計を行う。
なお、両社は同プロジェクトでの協力を通じて、エアモビリティサービスに必要不可欠な次世代気象サービスの一層の展開に取り組むと述べている。
■メトロウェザー CEO 古本 淳一氏のコメント
「小型かつ高性能なドップラー・ライダーを安価に実現できたことで、ドローンポート(バーティポート)やドローン航路上に多数のドップラー・ライダーを展開することが現実のものとなり、ドローンの離発着や飛行に影響を与える局所的な突風やウインドシアをリアルタイムに可視化することが可能になります。また、ドローンポートに限らず地方空港などへの展開も見込まれます。その結果、ドローンの安全運航が確保される世界が実現し、空の安全・安心に貢献できるものと考えています。今回、TruWeatherというパートナーを得て、NASAのプロジェクトに関われることでこうした世界の実現に一層近づくことができると思いますし、大変誇りに思います。」
■TruWeather CEO Don Berchoff氏のコメント
「TruWeatherは、都市部における危険な風の状態を特定することに焦点を当てたNASAとの研究において、メトロウェザーと協力できることを光栄に思います。都市部の風環境に対するメトロウェザーの科学的知見とライダー・テクノロジーは、安全で信頼性の高い先進的エアモビリティの運用に影響を与え得る風災害の検出機能を実証する上で重要な要素となります。」