復興庁、東北と関西を結び「移動」について考える「おでかけソン」を開催
2018/11/30(金)
復興庁は11月17~18日にかけて、大阪市中央区のThe DECK(ザ・デッキ)にて地域づくりハンズオン支援事業である「東北と関西を結び、『移動』について考える『おでかけソン』」を開催した。当イベントは平成29年度に実施した「共創力で進む東北プロジェクト」のノウハウから、オープンイノベーションによる共創イベントを通じて支援を行うもの。今回は、特定⾮営利活動法⼈ 移動⽀援Rera(宮城県⽯巻市)を支援対象とし、「安⼼して⽣き抜く地域をつくるための公共の再構築プロジェクト」としてイベントが行われた。学生から社会人までさまざまな立場・年齢層である44名が参加した。
1日目は村島 弘子・NPO法人 移動支援Rera 代表(以下、村島氏)、布田 剛氏・NPO法人 地星社 代表(以下、布田氏)、吉田 樹・福島大学 准教授(以下、吉田氏)の3名が登壇した。東日本大震災で15万人を運んだNPO法人・Rera「移動は生きること」
最初に登壇した村島氏が代表を務めるNPO法人 移動支援Rera は、2011年より宮城県石巻地区を中心に、移動が困難な住民を病院などへ送り届ける送迎ボランティアを行っている。村島氏は、震災時に避難所に行くと「移動に困っている人はいない」と担当者から言われたというエピソードについて話し、被災地で「移動に困っている人が見えていないことを実感した」と語った。「世の中には移動困難な人がいる、というところまではみんな目を向けることができる。それだけではなく、移動困難は『みんなに関係すること』『自分にも関係すること』である」ことに気づくことが大切で「移動することが生きることそのものに作用している」と強調した。復興活動支援を行う地星社、ボランティア送迎を持続的な活動に
続いて、2013年3月に宮城県岩沼市で設立され、東日本大震災発災後のさまざまな復興活動への支援を行うNPO法人 地星社の布田氏より、石巻市の現状について説明があった。石巻市では人口が震災前に比べて2万人減少しており、要支援と認定された高齢者は、震災前の倍以上に増えている。2014年のRera活動報告資料によると、利用者は一人暮らしや二人暮らしの後期高齢者で、70代が30%、80代が36%。3km以内の送迎が3割を占めるという。Reraの活動はボランティア送迎であることから、「寄付や助成金での運営では今後は持続できない」と持続的な活動が危ぶまれている状況について危惧した。吉田 樹・福島大学 准教授、移動の隙間で発生する困りごとには「のりしろ」を広げて
福島大学で地域交通政策や観光政策、都市・地域計画の研究に携わっている吉田氏は、人口減少によって高校や病院の統廃合が進んでいる東北の現状や、移動の担い手不足の問題について言及。「行政、交通事業者、NPO、地域住民のそれぞれが、得意分野や暗黙の守備範囲を持っている。移動で困る多くのケースは、その隙間で発生している」と述べ、「のりしろ」を広げて、隙間をどう埋めていくかが課題だとした。課題解決に導いたという事例として、定額タクシーである「みなタク」※を例に挙げた。家と病院の往復だけでは病院にある売店でしか買い物できないという問題を、移動とお出かけを結びつけ、寄り道をセットで提供することで、移動の隙間で発生している問題を解決したという。※福島県南相馬市で平成30年3月から実施されている、車を運転しない市民や、バスなどの交通機関が利用しにくい地域の生活をサポートするための地域別定額タクシーサービス。