【工業デザイナー奥山清行氏インタビュー】Osaka Metroオンデマンドバスのデザインに込めた思いとは
2022/2/14(月)
Osaka Metro Groupは、昨年3月から、大阪市生野区と平野区でオンデマンドバスの実証実験を行っている。ラストワンマイルの移動を助ける交通サービスとして期待がかかる一方で、車体の斬新なデザインも注目を浴びている。
デザインを手がけたのは、同グループの最高デザイン責任者(CDO)で、フェラーリやポルシェなどのデザインを手掛けた奥山清行氏。Osaka Metroのコーポレートカラーであるライトブルーを基調としたデザインは、近未来を感じさせる独創的なものだ。
そんな世界的工業デザイナーである奥山氏に、オンデマンドバスのデザインに込められた思いや今後の構想などを聞いた。
デザインを手がけたのは、同グループの最高デザイン責任者(CDO)で、フェラーリやポルシェなどのデザインを手掛けた奥山清行氏。Osaka Metroのコーポレートカラーであるライトブルーを基調としたデザインは、近未来を感じさせる独創的なものだ。
そんな世界的工業デザイナーである奥山氏に、オンデマンドバスのデザインに込められた思いや今後の構想などを聞いた。
“近未来”と、Osaka Metroだからこその“安心感”を大事にした
――オンデマンドバスの実証実験について、今まで全国各地で取材を行ってきましたが、貴社のデザインは、今まで見たことがないような斬新なもので驚きました。どのようなコンセプトでデザインされたのでしょうか。デザインするにあたって、2つのコンセプトを大事にしました。
一つは「一目でオンデマンドバスと分かること」です。若い方、高齢者、視力が不自由な方に至るまで、誰が見ても一目で自分が呼んだオンデマンドバスだと分かるようにデザインしました。
もう一つは「“近未来”を感じさせること」です。私自身、高齢者のような交通弱者を助ける一つの手段としてオンデマンドバスというモビリティに非常に期待を寄せています。そういう思いもあって、「モビリティにおける未来の一つの在り方」というメッセージをデザインの中に込め、未来を感じさせるスタイリッシュな仕様にしました。
――Osaka Metroのコーポレートカラーである青も強調されていますね。
ええ。これは、一つ目のコンセプトにも関わってくるものですが、Osaka Metroが運営しているということも重要な要素の一つです。大阪という土地で、地下鉄をはじめさまざまなモビリティの主管業務をOsaka Metroは担ってきましたので、「Osaka Metroが運営しているので安心してご利用ください」というメッセージを、ライトブルーを基調としたデザインに込めました。
――ほかに、乗客に対して配慮した点などはありますか。
車体側面のラッピングなんですが、窓まであえてかかるようなデザインにしています。これは、乗客のプライバシーに配慮しました。ラッピングがかかっているところは、中から外がよく見え、反対に外から中の人の様子は見えにくい設計になっています。
ほかにも、車のデザインをする上でスピード重視に設計することが多いのですが、今回のオンデマンドバスではあえて安定感を得られるようなデザインにしています。
――安定感ですか。
ええ。通常、自動車をデザインする際は、例えば曲線であるとか、横の線などを重視することで速そうに見せるのですが、今回は路線バスのように縦の線を意識したデザインにすることで、安定感を感じてもらえるようにしました。また、乗る際にワクワクするような、グラデーションなどを意識した楽しいデザインになるようにも工夫しました。
今後は「KEN OKUYAMA DESIGN」として“空飛ぶクルマ”のデザインも
――今回のオンデマンドバス以外のデザイン構想について教えてください。そうですね。オンデマンドバスに関しては、今回の実証実験で多くの人に乗車してもらい、きちんと収益性がある事業だと証明することが第一です。その上で、本格的に導入していくという段階までいければ、車両台数も増やせますし、専用車両の開発などにも着手していきたいという思いはあります。
専用車両のデザインに関しては、テーマパークにあるアトラクション用の乗り物のように片側から乗り込めば、車内で移動せずにすぐに着席できるような仕様のものをイメージしています。そして、家族や知り合い同士で隣り合わせに座ることができ、列ごとにシールドを設置することで、プライバシーの確保と、コロナ禍において非常に重要な衛生面の両立を目指したモビリティにしたいです。すでに、設計図は書かせていただいているので、また折を見て発表させていただければと思います。
――デザインを拝見するのが非常に楽しみです。開発は貴社単体で行うことを想定していますか。
まだ当社単体で行うのか、それともほかの事業者様と一緒になって開発していくのかは検討段階ですね。
――いずれにしても専用車両の開発、非常に楽しみです。
ありがとうございます。ほかにも、「KEN OKUYAMA DESIGN」※として、「空飛ぶクルマ」のデザインも手掛けています。これは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場となる大阪市の夢洲(ゆめしま)へ関西国際空港や神戸空港から海上を渡って向かうほか、淀川上空を通って新大阪駅にアクセスできるエアタクシー事業を想定したものです。
※奥山氏が代表を務めるデザイン事務所
――空飛ぶクルマ、どのようなものなのでしょうか。
パイロットを含め乗車人数が4~6人ほどの乗り物で、事業としてはオンデマンドサービスになるかと思います。イメージは、ヘリコプターとドローンの中間的な位置づけですね。海上を飛行することは割と実現性が高いと考えていますが、緊急着陸の場面などを想定すると、市街地の上空を飛行するには、まだまだ時間がかかりそうです。
――大阪万博で飛行する姿が非常に楽しみです。最後に、今後手掛けてみたいモビリティのデザインや思いなどを教えてください。
さまざまな場面で「一番デザインしたいモビリティはなんですか?」と聞かれるのですが、いつもフェラーリなどではなく「車いす」とお答えしています。
車いすと聞くと、どうしてもハンディキャップがある方が使用するイメージですが、極端な話、健常者の方でも乗りたくなるようなものが理想的な車いすだと考えています。マイナスなイメージを払拭し、すべての人が利用しやすいデザインにすることが、モビリティ業界に従事する我々の責務ですし、本当の意味でのユニバーサルデザインの行き着く先ではないでしょうか。
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