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大阪商工会議所 MaaS研究会始動 関西の企業を中心に約200名が参加

2019/2/7(木)

大阪商工会議所は2月6日、MaaS研究会のキックオフセミナーを開催した。関西の企業を中心に、交通、自動車、金融、商社、IT、通信、エネルギーなどのさまざまな業種から約200名が参加した。
同研究会は2025年に大阪で開催される万博に向けた交通課題等に向け、企業や行政が情報交換をする場を設けるのが狙い。同所の第4次産業革命推進委員会の村尾和俊委員長は「MaaSは鉄道、バス、自動車、IT系など多くの企業が検討を進めている。垣根を越えてデータをオープンに扱うためには幅広い連携が必要だと考えている。2025年の万博での実装の可能性についても探っていきたい」と研究会をきっかけとした産学官での連携に期待を込めた。

大阪商工会議所 第4次産業革命推進委員会の村尾和俊委員長



研究会では、日本総合研究所のシニアマネジャー井上岳一氏とMaaS Tech Japan日高洋祐代表取締役がそれぞれ講演を行った。

日本総合研究所のシニアマネジャー井上岳一氏



井上氏はインターネットにより、音楽や動画のコンテンツを配信することでサブスクリプションモデルが誕生し、アマゾンやネットフリックスなどの巨大プラットフォーマーが出現したことを例に挙げ、「交通業界にも同様の流れがあり、自動車会社からプラットフォーマーへの主導権がシフトする」とMaaSが注目されている背景について説明。また、他の都市に比べて公共交通の利用が浸透している大阪でのMaaSの可能性については、「サブスクリプションモデルを導入し、移動の敷居を下げると外出する機会が増えるので、経済効果が期待できる」と述べた。MaaS実現に向けては、「税金で公共交通を支えてきたヨーロッパとは異なり、自助努力の経営をしてきた交通事業者同士が手を取り合うことは難しい」と、企業間連携の難しさを指摘した。

MaaS Tech Japan日高洋祐代表取締役



日高氏はMaaSのビジネスモデルとして、MaaSアプリ「Whim」で知られるフィンランドのマースグローバル社を紹介。今後は、「移動サービスを定額で提供するサービスに広告や不動産、損害保険等と組み合わせて価格を下げるビジネスモデルが展開される」と話した。「Whim」では自家用車の代替手段を提供して自家用車利用を減らすことが目的となっているが、日本においては、都市ごとに目的が異なると説明。「渋滞を解消したい、新しい収益源をつくりたいなど、目的はさまざま」。MaaSのビジネスモデルを構築していくには、「地域ごとに達成したいKPIを明確にしていくことや、他の収入源と組み合わせることが必要」だと述べた。

最後に、米ベンチャー企業Wayfarerのニックギブソン氏より「大量輸送都市型交通システム「Wayfarer」について紹介があった。「Wayfarer」は幅1メートル、長さ3メートル、高さ1.9メートルの小型EV。自動運転で目的地までのノンストップ輸送の実現を目指す。Wayfarerアドバイザー&合同会社SARR松田一敬代表執行社員によると、「専用のインフラが必要。鉄道と同じ輸送量であっても、車体が小さいので、工事期間や設備や運用コストを大幅に削減できる」。万博会場である夢洲会場への交通手段として、大阪市へ提案中だという。

Wayfarerのニックギブソン氏



今後は、「万博で想定される課題」という議題を中心に、2月から3月にかけて研究会を3回実施し、4月以降も継続する予定。参加企業は「顔の見える範囲」(常務理事・事務局長 児玉達樹氏)である30~50社を上限とする。児玉氏は、「システムが各社ばらばらに提供されるのではなく、都市、地域、国から提供されるのが望ましい。ざっくばらんな議論の場を設けることで新たな企業連携を生みたい。万博での実装を想定し、各社が相乗りできる共通インフラとしてのMaaS構築について議論していきたい」と会場に呼びかけた。

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