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大阪商工会議所、第3回MaaS研究会〈最終回〉大阪らしい”おもろい”発想を移動の付加価値に 

2019/3/29(金)

大阪商工会議所は3月27日に同所で第3回MaaS研究会を開催した。研究会では第2回目の振り返りの後、国土交通省 総合政策局の城福健陽公共交通政策部長(以下、城福氏)、経済産業省 製造産業局自動車課の増田陽洋課長補佐(以下、増田氏)、幹事企業である近畿日本鉄道株式会社 総合企画本部の小林純計画部長(以下、小林氏)が登壇した。最後に7つのグループに分かれて「大阪らしいMaaSとは」についてのアイデア出しと討論が行われた。

国土交通省 総合政策局の城福健陽公共交通政策部長



最初に登壇した城福氏は、MaaSなど、新しいモビリティサービスが必要とされている背景について、「都市部は道路混雑の問題で時間的にも経済的にもロスが生じている。地方部では少子高齢化で、バス会社の6割が赤字という状況。地方鉄道でも7割が赤字。国の補助金で支援しながら運行している」と現状を説明。これらの課題に対して、交通分野の課題解決につながる新しいモビリティサービスが必要だとした。新しいモビリティサービスとして、フィンランドのマースグローバル社のアプリ「Whim」を例に挙げ、「パッケージで一つのプライシングで提供するのは新しい概念。利用者に利便性思考、インセンティブが高まることに期待している」と話した。

日本でのMaaS浸透については、「日本は鉄道やバス会社が民間経営であり、交通サービスの他に、小売、宿泊、観光が一体となって展開されていることで、高付加価値なMaaSができる可能性がある」と述べた。一方で、都市部と地方部で抱える交通課題が異なることを指摘し、これらを解決するための地域横断的な取り組みの一つとして、交通事業者間でのデータ連携を挙げた。協調領域と競争領域の線引きがあいまいなデータ連携については、国によるルールの整備が急務であるとした。また、MaaS実現に向けては運賃体系の統一についても必須だとし、タクシーの事前確定運賃の導入、サブスクリプション、ダイナミックプライシングなどを検討していく必要があるとした。

来年度、国土交通省では新モビリティサービス推進事業として、日本版MaaSに必要なデータ連携やルールづくりといった共通基盤の構築を実現するため、オープンデータを活用した実証実験などを行いながら今後の方向性を検討していくという。

経済産業省 製造産業局自動車課の増田陽洋課長補佐



次に登壇した増田氏は、日本で新しいモビリティサービスが広がらない背景として、事業者間の垣根を挙げ、「交通事業者同士が協力をして自治体が主導権を握れば、例えばバスがタクシーのように乗り合いをしながらオンデマンドで走るなど、できることはたくさんある」と述べた。他にも、データのデジタル化の遅れや異業種との連携不足を指摘した。今後は、「データのオープン化、APIの標準化、小売、観光、医療、物流などの異業種とどう連携していくかなど、国交省と経産省と連携して取り組んでいく」と話した。来年度については、国交省と共同でスマートモビリティチャレンジ推進協議会でパイロット地域を選定し、ベストプラクティスや横断的課題の整理を行っていく。

近畿日本鉄道株式会社 総合企画本部の小林純計画部長



最後に登壇した小林氏は「近鉄沿線におけるMaaSの可能性」と題して、近鉄が行っている取組を紹介した。シームレス案内構想では、NTTやゼンリンとの共同研究でカメラ機能を使った画像認証やAR技術を使ったルート案内、チャットボットによる案内、位置情報機能を使った情報配信や降車案内などの技術を紹介した。今後については、実証実験でサービスの受容性を確認しながら実用化に向けて展開していくとした。


「大阪らしいMaaSとは」と題されたディスカッションでは、大阪のソウルフードであるたこ焼きを駅で購入するとたこポイントが付与される「たこやきMaaS」、「座っている人と立っている人がいるのなんでやねん、混んでいる時と空いている時があるのなんでやねん」と考えてしまうという損得勘定が強い関西人の気質に合わせ、ラッシュ時以外の利用にポイントを付与する「なんでやねんポイント」、どこを走っているのかがわかりにくい地下鉄に「有機ELで車窓風景をつける」、つり革のボタンを押すと多言語案内が流れる「ワールドおせっかいボタン」、電車やタクシー、バスに水の都・大阪ならではの移動手段である船を組み合わせた「水運を生かしたMaaS」など、移動が”おもろくなる”ようなユニークなアイディアが飛び出した。

各班のプレゼンテーションに対して、城福氏は「移動自体が目的化するような付加価値をつけていくのは大切。地域にある定期券や乗り放題チケットなど既存のネットワークや歴史文化の資源をつなぎあわせることで効果が発揮できると思っている」とコメントした。

研究会は今回で最終回。6月からは新しい研究会を立ち上げ、参加企業による実証実験の実現を目指す。

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