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パナソニックが自律配送ロボットの実証開始 住宅街で日本初

2020/12/23(水)

住宅街を自動走行で走る配送ロボット

住宅街を自動走行で走る配送ロボット

パナソニックは11月末から神奈川県藤沢市で小型低速ロボットを用いた住宅街向け配送サービスの実証実験を開始した。実証の実施場所は神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)、実際の生活者がいる住宅街での公道実証は日本で初めての事例だ。12月24日までフェーズ1の公道走行検証を行い、来年2月からフェーズ2としてロボットによる配送サービスの検証を行う予定だ。

日本初、住宅街でのロボット配送実証

今回のフェーズ1では、自動走行ロボットの公道走行時の技術検証と課題の抽出を行っている。実験では、管制センターと自動走行ロボットを公衆インターネット網で接続し、管制センターのオペレーターがロボット周囲の状況を常時監視している。

今回運行している配送ロボットは、全長115cm、幅65cm、高さ115cmで車両重量120kg。実証実験時の最高速度は時速4km、4cm程度の段差は乗り越えることができる。1回の充電で約3時間運行が可能。また最大30kgまで積載でき、車体側面の扉を開閉して荷物を取り出せる。台数はフェーズ1時点では配送ロボット1台だが、将来的には複数台へと増やす予定だ。

車両には遠隔用カメラを前後左右に4つ、2D LiDARを4つと3D LiDAR、GPSなども搭載。公道走行が可能な小型低速モビリティということで、車両は原動機付自転車に分類されており、車体後部にナンバープレートを掲げている。また、配送ロボットの自動走行システムはパナソニックが大阪府門真市の自社構内で社員向けに試験運用している自動運転ライドシェアサービスでの技術を採用した。

実際の配送ロボット車両。公道走行用に配送ロボットの車体後部にはナンバープレートが付いている。

遠隔監視・操作・対話で非接触サービスを提供

遠隔管制センターはFujisawa SST内の湘南T-SITE内に設置。遠隔操作担当者が常駐し、ロボットに搭載したカメラの映像やGPSによる位置情報、センサーで検知した情報などを複数のモニターで確認しながら遠隔監視・見守りを行う。ロボットは障害物を回避しながら自律走行するが、横断歩道時や自動回避が困難な場合はセンターからの遠隔操作に切り換えて走行する。

配送先で利用者が荷物の取り出し方が分からない場合などは、センターからロボットを通して会話し、利用者をサポートできる。また、実際の住宅街を走行するため、住民に親しみやすさを感じてもらえるように、車体の前面部分は前照灯と電光掲示によって「笑顔」など3種類の表情を表現できるようにしたという。

遠隔管制センターで遠隔監視・見守りを行う様子

遠隔管制センターで遠隔監視・見守りを行う様子



コミュニティの課題に最適なモビリティ・ソリューションを提供

今回の自律配送ロボット事業を手掛けるパナソニック株式会社モビリティソリューションズは2019年1月に社長直轄の組織として設立。注力領域の一つに自動化をキーワードとした「エリアモビリティ」を設定しており、その具体的な取り組みの一つが、大阪府門真市の同社構内で2019年10月から実施している従業員用の自動運転ライドシェアバスの運行だ。この社内向けサービスを通して経験と知見、データの蓄積により、ノウハウを積んできた。

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モビリティソリューションズ担当参与の村瀬恭通氏はFujisawa SSTでの実証の目的について、「社内の狭いエリアでの課題の次に挑戦したいのは街や住宅街。暮らしや活動する人に視点を置き、そのコミュニティごとの課題に向き合って最適なモビリティ・ソリューションを提供し、それをアップデートしていくことがわれわれのミッション」だと語った。

住民のリアルな反応でサービスをアップデートする

「今回の実証では、ただロボットを走らせる実験ではなく、人の生活やコミュニティを豊かにすることにポイントを置き、街に暮らす方々と共に作っていく『共生』の考え方で取り組んでいる。多様な人々と共生できるロボットは、過去100年にわたり家電を通じて生活の現場に向き合ってきたパナソニックの資産が活かせる分野」と話す村瀬氏。

11月末からのFujisawa SSTでの実験では、すでに散歩中の高齢者がロボットに話しかけたり、また地域の子供から「表情が怖い」と言われたり、子供に取り囲まれてロボットが身動きできなくなるなど、想定外の出来事が多数あったという。

村瀨氏は、「門真は自社構内の社員向けで、藤沢に来るまでは子供や高齢者の反応は分からなかった。小型低速ロボットの住宅街での配送サービスの公道実証実験は日本で初めての取り組みなので、生活の場にロボットを導入して、住民の方の素直な意見やリアルな反応をいただくことで、サービスをさらにアップデートできると思っている。人を起点に生活圏(Last 10 mile)の移動のあり方を見つめ直し、その街に最適なモビリティを、そこに住む方々と一緒に考えていきたい」と語り、今後の取り組みに意欲を見せた。

パナソニック株式会社モビリティソリューションズ担当参与 村瀬恭通氏

パナソニック株式会社モビリティソリューションズ担当参与 村瀬恭通氏



2021年度中にロボット配送の有償サービス開始を目指す

フェーズ1での走行技術検証の結果を踏まえ、2021年2~3月頃にはフェーズ2としてロボットによる配送サービスの実証を行う予定となっている。フェーズ2ではFujisawa SST内の商業施設から専用アプリを使って注文・購入し、その商品を自宅前までロボットが配送するサービスの検証を行う。複数の店舗で複数商品を購入して回ることなども検討中だという。

そして、電子キーを使った非対面での荷物・商品の受け渡しや管制センターとの対話による非接触コミュニケーションの受容性の検証も行う。パナソニックでは実証実験フェーズ1、2の結果を踏まえ、2021年度中の有償サービス開始を目指している。

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