ソニー・ホンダモビリティがAIを活用した「AFEELA」最新プロトタイプを発表【CES2024】
2024/1/24(水)
ソニー・ホンダモビリティはラスベガスで開催されたCES2024において「AFEELA」の最新プロトタイプを公開した。SONYのプレスカンファレンスでは、無人車両をPlayStationのコントローラーを使ってステージに登場させるという演出で会場を沸かせた。展示ブースではAIを活用したADASや対話型パーソナルエージェントなどを披露し、2025年のプレオーダーに向けて車両開発がいよいよ最終段階に入ったことを感じさせた。
SONYの強みを活かした機能を採用
ソニー・ホンダモビリティ株式会社(以下、SHM)はラスベガスで開催のCES 2024において、フラッグシップ・モデル「AFEELA」の最新プロトタイプ「AFEELA Prototype 2024」を1月9日から13日までの一般展示会前日1月8日(現地時間)に行われたSONYのプレスカンファレンスで公開した。2020年のCESで初披露された「VISION-S」から、ブランド名を「AFEELA」に変えた後も開発は着実に進んでおり、2026年の米国市場での販売に向けていよいよ来年にはプレオーダーを開始する。
ソニーグループ株式会社CEOの吉田憲一郎氏は、今回のプレスカンファレンスで初披露された高精細XRヘッドマウントディスプレイとあわせて「AFEELA」を「モビリティ空間の拡張で創造性をより高める次世代ハードウェア」と位置付けている。ゲストとして本田技研工業株式会社代表執行役社長の三部敏宏氏も登壇し、両社が協力して未来のモビリティ開発に力を入れていくことを強調した。
プレステのコントローラーでステージに登場
SONYとHONDAを代表する2人に紹介される形で登壇したSHM社長兼COOの川西泉氏は、ポケットからPS5のワイヤレス・コントローラー「Dual Sence」を取り出し、開発中の機能の一つである「Software-Defined Vehlcle」を使って無人の「AFEELA」をステージに登場させるというインパクトのある演出で会場を沸かせ、「AFEELA」が自動運転車とはひと味違うコンセプトによって開発されていることを印象付けた。川西氏は発表で、AIを活用したADASの開発とエンターテインメント空間の創造という2つのトピックスを取り上げた。
前者はAFEELAに搭載されたSONYの各種センシングデバイスによる画像認識をAIで精度を高め、自動運転の実現にもつなげるとしている。
後者は、Epic Games社と協力し、同社が持つリアルなレーシングシミュレーション開発技術を用いたADASシミュレーターの開発などを行う。使用する環境データは「AFEELA」から収集され、ARを組み合わせた没入感ある体験などを提供する。また、株式会社ポリフォニー・デジタルとも協業しており、同社の代表作であるカーレーシングゲーム「グランツーリスモ7」でAFFELAの運転が体験できるようになる。
さらに、Microsoft Azure OpenAI Service を活用した対話型パーソナルエージェントを開発している。登壇したMicrosoftコーポレートバイスプレジデントのジェシカ・ホーク氏は「生成AIとクラウドの組み合わせによって、パーソナライズされた顧客体験を提供できるようになるが、その際プライパシーや安全性にも当然ながら配慮している」と述べる。
また川西氏は「人の感覚や感情を開発に組み込んでいくことで、モビリティ開発の新しいあり方を探求する」とし、SHMがテーマに掲げる「Redefining the relationship between people and mobility(人とモビリティの関係の再定義)」に期待して欲しいと述べた。
コクピット体験とセンシング機能を展示
SHMのブースはSONYの隣にあり、プロトタイプとARを使ったシミュレーターの体験コーナーを展示していた。乗車体験は予約がすぐいっぱいになるほど人気で、コクピットの様子を紹介するプレゼンテーションにも毎回多くの参加者が集まっていた。また、SONYのブースでは「AFEELA」に搭載されている、SONYのCMOSイメージセンサーやカメラ、LiDARなどがスケルトンを使って紹介されていた。「AFEELA」ではこれらを使って車両周りを360度モニタリングでき、同様にコクピット内の様子もリアルタイムにセンシングできる。ドライバーの姿勢やカラダの動きを3Dで検知したりできるが、プライパシーに関わるデータも少なくない上に処理速度も必要になることから、エッジで高速処理が可能なQualcomm社のSnapdragon Ride SoCが採用されている。
他にも特定条件下でのレベル3による自動運転や自動駐車機能などが取り入れられているが、それらは他のモビリティでも見かけるため、正直なところ独自性はあまり感じられないところもある。
だが、クルマに近づくだけでドアが開くといった面白い機能もあり、むしろそうしたアイデアを取り入れていくためのプロトタイプだといえる。SHMもモビリティ開発環境のオープン化を推進しており、「AFEELA」をきっかけに新たなモビリティエンジニアが増えていくことに期待したい。
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(ITジャーナリスト/野々下裕子)