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貸切バス行程表を自動化、さらに安全 行程表クラウド【ナビタイム】

2023/6/29(木)

写真左から 帝産観光バス 代表取締役社長 飯尾一重氏 ナビタイムジャパン 酒井美帆氏

写真左から、帝産観光バス 代表取締役社長 飯尾一重氏
ナビタイムジャパン 酒井美帆氏

人出が新型コロナ前のレベルに戻りつつある。学校や企業、団体旅行で用いられる貸切バスの事業者は需要の急回復を受けて繁忙感が強い。

大手の帝産観光バス株式会社(以下、帝産観光バス、本社:東京都品川区)は、株式会社ナビタイムジャパン(以下、ナビタイムジャパン)の「行程表クラウド」を導入。バス旅行の経路、料金を決める「行程表」作りを自動化し、作業効率を大きく向上させ、導入後もひんぱんにナビタイムジャパンと意見を交換して機能改善を続けている。

帝産観光バス 代表取締役社長 飯尾一重氏は行程表クラウド導入の理由を「効率化、コンプライアンス対応、そして何よりもバスに求められる安全性の向上だった」と明かす。飯尾氏と、ナビタイムジャパンで行程表クラウドの企画・営業を担当する酒井美帆氏に、利用者・提供者の立場から新サービスについて語ってもらった。

大型バス通れる経路、時間・安全リスクも自動表示

行程表クラウドは貸切バスの行程を自動で作成する。「(1)スポット検索」「(2)スポット選択」「(3)ルート検索」で貸切バスの通行ルートを作成でき、運賃計算も行う。
バスのルート検索、運賃計算を自動で行う(ナビタイムジャパン提供)

バスのルート検索、運賃計算を自動で行う(ナビタイムジャパン提供)



バスの大きさや大型車規制をふまえてルート検索できる点が大きな特徴。ナビタイムジャパンによる「トラックカーナビ」「バスカーナビ」といった大型車専用のナビアプリの技術を生かしている。日本初の徒歩、公共交通、自転車と組み合わせたルートも検索できる。地図上で選択した道路を360度パノラマ写真で見て確認できる点も行程表を作る担当者に好評だ。
※2022年7月26日時点、ナビタイムジャパン調べ

同じ出発地・目的地でルート検索した画面の比較<br>行程表クラウドでの検索画面(右)は車高制限区間を避けてルートが表示される(ナビタイムジャパン提供)

同じ出発地・目的地でルート検索した画面の比較
行程表クラウドでの検索画面(右)は車高制限区間を避けてルートが表示される(ナビタイムジャパン提供)



走行ルートは、ナビタイムジャパンが持つ利用者の走行ログに基づいて、渋滞情報、各道路の通行にかかる時間を予測し最適な経路、所要時間が算出されるため、到着時間の正確性が高い。

また、帝産観光バスとナビタイムジャパンは行程表クラウドとナビの連携を年内めどに行う予定。行程表作成から貸切バスのドライバーが運転時に参照するナビまでワンストップで提供でき、飯尾氏は「ドライバーの負担軽減、求人の応募増にもつながる」と期待する。

「交通事故AI予測マップ」も用意されている。過去に大型車事故が起こった場所や、見通しの良くない道路について注意を喚起する。

入力作業1万時間を省略

行程表は顧客との打ち合わせ、見積もりを経て作る。帝産観光バスはこれまで行程表作りの担当者が目的地・ルートを検索した上でデータを入力して行程表、バスドライバーに対する運転の指示書を作成し、顧客から修正が入ると入力作業を繰り返していた。

検索・入力には1回10分ほどかかり、全社で1日当たり200件ほどを入力していた。行程表クラウド導入で、年間1万1650時間分の入力作業、2500万円分のコストを省略できたという。顧客との行程表の共有・修正も簡単にできる。また、インボイス制度に対応した請求書の発行も可能だ。

行程表クラウド本採用の理由「安全と効率、柔軟で的確な開発」

ナビタイムジャパンは22年7月に行程表クラウドの提供を開始。帝産観光バスをはじめ、100社を超える貸切バス事業者がトライアル採用し、ナビタイムジャパンは事業者からの要望を機能改善に役立ててきた。

帝産観光バスは1946年に設立し、23年4月現在、6事業所でバス282台を保有する大手。一般名詞として通用する「観光バス」「バスガイド」を使い始めたのも同社といわれる。衝突防止補助システムを早期から全車に導入するなど安全、技術面でも先進的。そんな同社の飯尾氏に、行程表クラウドの採用について聞いた。

帝産観光バス本社の車庫

帝産観光バス本社の車庫



「従業員が一番」現場の声から進める改革

――帝産観光バスは貸切バスの老舗であり大手です。その他にも自社の特徴をご紹介いただけますか?
飯尾氏:「従業員を一番に考えている会社」だと思っています。役職関係なしに話しやすいということを大事にしていて、現場から「これがしたい」という要望や、意見も冗談も言える。みんなの声をきちっと直接聞くようにしています。

例えば本社の車庫前から電話をいただけたら車庫を見学できて、お子様をドライバーが運転席に乗せて写真を撮ることもできます。これは小さなお子様連れの親子さんが車庫をよく興味深そうに覗かれているので、ドライバーから「見学できないか?」と提案があった。それで「面白いな、やろう!」と1階にポスターを出したり、シールを貼ったりして始まったんですね。また、「ガイドプロジェクト」というチームがあり、広報誌の発行や、バスガイドさんの制服をガイドさんたちの投票で決めていて、今年は初めてスカートに加えてパンツの制服を入れます。

酒井氏:社内の風通しの良さは現場のご担当者とお会いしてお話を伺う中ですごく感じますね。



――社風がよく伝わるお話をありがとうございます。それでは、行程表クラウドを導入した背景を教えてください。

飯尾氏:そもそものきっかけは、2016年に貸切バスの「新運賃制度」が始まって経路と料金を正確に把握する必要ができたからです。手作業で検索するのは大変で、大手の旅行会社の系列企業と経路検索のシステムを6年ぐらい作っていました。ところが、コロナになってその会社がなくなってしまった。

そこにナビタイムジャパンからお話がありました。当社はルート・料金検索だけでなくて、将来はナビ機能ともつなげたい希望があって、それに加えて行程表クラウドだけが安全な運行の実現に向けた技術やノウハウを持っていたのが大きいですね。

安全、業界のために自社知見を惜しまず提供

――安全の機能が決め手になったということですね。

飯尾氏:行程表を作るだけなら他にもあるけれど、安全は、ない。安全とナビを入れることが業界のためになり、ひいては世の中のためになる。そのためにはうちのノウハウをいくらでも共有しますよということです。

そして、外から見て本当にすごいなと感心しているのが、ナビタイムジャパンさんが柔軟なこと。ふつう事業の方針が出たら、うちの意見くらいで変わらない。でも方向性をお互いに理解しあっていて、注文に対して的確な提案もしてくれて素早く修正してくれる。社風だと思います。

酒井氏:実際に使っていただく方がどう感じるかを一番大事にしています。帝産観光バスさんには、現場のご担当者に直接お話を伺う機会を設けていただき、異例の速さで開発を進めることができました。そして弊社の基本方針として「世界中の人が安心して移動できる」があり、そこが安心・安全に合致しているのかなと思います。

「ナビタイムジャパンの迅速、的確な開発に感心しています」。

「ナビタイムジャパンの迅速、的確な開発に感心しています」。



――行程表クラウドを導入して、効果はいかがでしょうか?

飯尾氏:これからどんどん効果が出てくると思っています。今、はっきり分かっているのが、行程表作りの手入力を省けるということ。今まではバスが通れるのかどうかから地図を検索して時間と料金を検索して手入力して、1回で5分から10分かかる。修正が入ったらまた最初から打ち直す。この作業の省略が、まず大きい。

もう一つが安全です。事故リスクが高い場所が分かって、交代が必要かどうかもシステムで分かる。行程表とナビ機能が連携することで、ドライバーの応募増にも期待したい。将来の自動運転にもつながっていくと思います。これからもうちのドライバーの意見が行程表クラウドに実装されていって「安全、コンプライアンス、効率」の3つがさらに良くなると期待しています。

帝産観光バス、貸切バス業界のため、行程表クラウドをさらに改善していく

帝産観光バス、貸切バス業界のため、行程表クラウドをさらに改善していく

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