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「日本MaaS、今そこにある脅威」日本総研

2019/7/9(火)

(寄稿:株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 都市・生活イノベーショングループ シニアマネジャー 船田 学)

国内のMaaSをめぐる動向は群雄割拠の状態で、1週間単位で新たな動きがある。国内プレイヤーは他社の動きを、互いに注視している状況が続いている。しかし、国内プレイヤー同士で牽制しあっている状態ではなくなりつつある。GAFA勢のうち特にGoogleの脅威が迫っているのである。
米検索エンジン大手のGoogleは5月14日、アメリカでトラベルプランニングツールである「Google Travel」をリリースした。フライト、ホテルを含むパッケージ検索が可能になる。これまで個別に提供してきた「Google ホテル検索」、航空券比較・予約サイトの「Google フライト」を「Google Travel」に統合した。これによりStart to Endで移動のすべてをシームレスにサポートする。

国内のMaaS覇権争いについては、現段階では小田急MaaSや、東急電鉄とJR東日本が連携したIzukoが1歩リードしつつある。また他社のプラットフォームに乗るのではなく、検索機能を強みとする企業へ外注して、自社のMaaSアプリの開発を進めている鉄道会社も多い。さらに、今後はモネ・コンソーシアムが社会実装へ展開していくことも想定される。今後数年をかけていくつかのグループに淘汰され、さらにSuica、Pasmo等の連携のように、中期的にはグループ間のオープンな連携体制が整っていくのではないかと考えられる。

上記のような国内MaaSの整備には数年がかかると予想されるが、ここにGoogleが参入してくると、そのような悠長なことを言っている場合ではなくなる。国内プレイヤーが調整をしている間に、一気に飲み込まれてしまう可能性が高い。Googleは検索エンジンや地図において、すでに日本のユーザーに広く浸透している。国内プレイヤーが新しいアプリをユーザーにインストールさせる場合に比べて、はるかに有利な状況にある。

またフライト、ホテルとMaaSを組み合わせることで、MaaSが直面しているマネタイズの課題もクリアしてしまう。つまりMaaSだけでは黒字化は困難であるが、フライトやホテルとパッケージ化することができれば、黒字化は容易に達成できる。GAFA勢が国内でOTAの資格を得ると、かなり短いタイミングで、このような地殻変動が起きる可能性がある。

日本の交通事業者は、短期的にはチケット販売を陰に陽に拒否することが考えられるが、長期的にはユーザーが囲い込まれてしまえば、ユーザー視点の観点から連携せざるを得なくなる。

MaaSのプラットフォームを外資に奪われるのか、それとも国内プレイヤーが踏みとどまるのか、予断を許さない状況になる可能性があるが、Googleなどに対抗可能な国内プレイヤーは限られる。これらのプレイヤーを中心に、早期に国内プレイヤーの連携を検討すべきではないか。

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