日本総研、まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム設立
2018/8/31(金)
株式会社日本総合研究所は、住宅地をはじめとした限定地域内において、自動運転技術を活用して高齢者などの近隣移動をサポートするサービス(以下、「まちなか自動移動サービス」)の事業構想を策定することを目的に、「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム(以下「本コンソーシアム」)」を2018年8月29日に設立した。
本コンソーシアムでは、まちなか自動移動サービスの実現に期待する自治会、自治体を含む産官学民が連携して、まちなか自動移動サービスの社会実装に必要な車両のほか、システムの仕様や事業仮説について検討している。
■背景
高齢化は、地方だけでなく、都市郊外でも急速に進行している。例えば、1970年代に集中的に開発された郊外ニュータウンは、現在、全国に2,000箇所以上存在し、約700万人が暮らしているが、入居当時の子育て世代が高齢化する一方、子の世代は都心に流出する傾向が続いている。
郊外ニュータウンの多くは丘陵地に造成されたために坂道が多く、高齢者には徒歩による移動が負担となっている。他に使い勝手の良い交通手段もなく、住宅地内の店舗や公共施設等への近隣移動も自家用車に頼りがちなため、免許を返納したら外出できなくなるとの不安を抱えている状況だ。
そこで、近隣への移動をサポートする手段として、日本総研が構想しているのが、まちなか自動移動サービスだ。運転手の人件費がかからない自動運転ならば、利用者数が限られる場合であっても、低料金での移動サービスの提供がビジネスとして成立しやすく、高齢者等の近隣移動をサポートする手段として、多くの地域への導入が可能となると考えられるからだ。
日本総研は、まちなか自動移動サービスによって近隣移動を充実させることで、郊外ニュータウンが住宅地としての機能を回復し、コミュニティが活力を取り戻すと考える。さらに、既存の公共交通へのアクセス性も向上することから、遠くへの外出も気軽に行える、人々の往来が盛んな街づくりに貢献するものと想定している。
■本コンソーシアムの活動内容
まちなか自動移動サービスが目指すのは、きめ細かな移動手段を提供することで、既存の公共交通と共に、利便性の高い新しい交通ネットワークを実現することだ。
そこで、本コンソーシアムでは、高齢化の進む郊外ニュータウンとしての課題認識から、近隣移動サービスの導入を検討している神戸市北区筑紫が丘自治会、市内に50以上存在する郊外ニュータウンの課題を解決したい神戸市および地元交通事業者と連携して、まちなか自動移動サービスの事業を構想している。自治会と共にワークショップや実証実験を行いながら、まちなか自動移動サービスの社会実装に必要な車両のほか、システムの仕様や事業仮説を検討する。
まちなか自動移動サービスは、現時点では、以下のようなサービスになることを想定している。
【サービス内容】
・運行範囲: 住宅地内の予め決められたルート(片道2km程度以内の短距離)を走行。
地域内の店舗や公共施設、病院、バス停等への移動をサポートし、いわゆる
ラスト&ファーストマイルの移動サービスとして機能
・運行速度: 時速30km以下
・乗客: 乗合制
・乗降方法: オンデマンド型(呼び出し制)。利用者は、予め決められた乗降ポイントの
中から乗車と降車の場所をスマホアプリ等を通じて指定し、迎車を依頼
【安全対策】
・車内外の状況や車両の状況等を管制センターで遠隔監視
・見通しの悪い交差点では道路側にセンサー等を設置して安全を確認
【その他】
・市販車両に自動運転システムを後付けで組み込むことにより、導入・維持費用を低減
・移動サービスの運営を通じて取得されるデータを活用し、店舗への販促支援や情報配信等、
移動に関連した付加価値を提供
■本コンソーシアムのメンバー
一般会員:
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、株式会社NTTデータ、沖電気工業株式会社、
関西電力株式会社、株式会社電通 など
オブザーバー:
一般財団法人日本自動車研究所
協力会員:
神戸市、神戸市北区筑紫が丘自治会、みなと観光バス株式会社 など
2018年8月29日~2019年3月31日
■本コンソーシアム後の活動計画
日本総研は、本コンソーシアムの成果を踏まえ、賛同する企業と共に、2020年度に事業体を設立し、まちなか自動移動サービスを各地の自治会など地域に導入するための支援を開始することを目指す。
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