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特集ティアフォー第1回 世界のユニコーンたちと描く「自動運転の未来」

2023/10/27(金)

世界経済フォーラム・サマーダボス会議で自動運転の未来を語った加藤真平CEO(写真左)

世界経済フォーラム・サマーダボス会議で自動運転の未来を語った加藤真平CEO(写真左)

株式会社ティアフォー(以下、ティアフォー)は、自動運転の開発を先導している。世界初のオープンソース自動運転ソフトウェアAutowareを使った「だれもがレベル4自動運転の認可をとれる、自動運転の民主化」に向かって進む。ティアフォー創設者・CEOで、Autoware開発者でもある加藤真平氏が考える自動運転の未来とは? 自動運転とティアフォーの現在、未来を加藤CEOが明らかにした。

自動運転の世界水準をつくる

加藤氏は2023年6月、中国・天津市で「世界経済フォーラム」の「サマーダボス会議(Annual Meeting of the New Champions)」に出席していた。世界を動かす経済人、研究者、政治家が集まる官民協力のフォーラム。その場で、ティアフォーが描く「2030年の自動運転」の姿を各界の第一人者と共有するためだ。

加藤氏はフォーラムを「ステークホルダーがイノベーションのために合意形成する場」と評する。そして、フォーラムの根底には独特の思想がある。「科学は0から1を作る、正解がある世界。技術は1を10にする、正解が半分だけある世界、10を100にするイノベーションの世界には正解がない」と加藤氏が説明するものだ。

「科学」には、真理追究の先に行き着く正解がある。しかし、民間企業が狙う「技術」と「イノベーション」に正解はない。コンピューターサイエンス・自動運転の研究者でもある加藤氏は「クルマに自動運転を付けるべきかどうかは科学では答えられない質問。今、『付けるべき』となっているのはステークホルダーの大部分が付けるべきだと言っているから」と説明する。

「正解がないイノベーション」は、ともすれば見当違いの方向に進みかねない。合意形成をすることでイノベーションの方向性が定まる。その意味で、世界のステークホルダーが集まることが重要で、ティアフォーがその場にいる意義は大きい。

世界のステークホルダーと協力関係が広がる

世界のステークホルダーと協力関係が広がる



ティアフォーは2023年8月、世界経済フォーラム内のユニコーン・コミュニティに参画した。コミュニティは、評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ企業による招待制のつながりだが、ティアフォーはオープンソース戦略による社会的なインパクトを高く評価された。「2030年の自動運転」に向け、ティアフォーは世界のユニコーン企業とも協力する。

ティアフォーが描く2030年の自動運転の具体的な姿を見ていこう。

クルマを動かすチップ1枚のスパコン

2030年の自動運転にはスパコンが不可欠と講演した

2030年の自動運転にはスパコンが不可欠と講演した


世界経済フォーラムの場で加藤氏が行った講演の題は「Supercomputer on Wheels」(クルマの中のスーパーコンピューター)。スーパーコンピューター(スパコン)が2030年の自動運転車に搭載されるという予想図を披露した。

そしてティアフォーは、車載スパコンの開発に着手している。現在の車載コンピューターに比べて1000倍の処理能力を持つコンピューターをチップ1枚に収めたものが、2030年のスパコンだ。

レベル4自動運転が一般化した将来には、車載AIは膨大な情報を処理し、コンマ数秒の間に走る・止まる・曲がるの動作を判断する。そのために処理速度が現状の100倍から1000倍に上るスパコンが求められるとティアフォーはみている。そして無理なくクルマに搭載できる大きさでないといけない。

「自動運転の機能はすでに科学や技術の領分でいろいろと作られている。でもコンピューターの問題でクルマに載せられない」(加藤氏)のが現状。ティアフォーは車載スパコン開発でイノベーションを図る。

「最先端」はいつもスパコンから生まれてきた

処理速度1000倍のスパコンをチップ1枚の大きさにし、クルマに搭載するという発想は、現実離れしているようにも思える。しかし、加藤氏は「コンピューター技術のほとんど全てがスパコンから生まれている」とコンピューターの歴史を振り返る。



現代の生活に欠かせないインターネット、AIの性能を飛躍的に向上させた画像処理装置(GPU)、機器を効率よく動かす省電力技術…。これらはコスト度外視のスパコンのために作られ、利便性を認められて量産化され、製造コストが下がって世の中に普及した。車載コンピューターでも、自動運転車に対象を広げても、同じ流れをたどると加藤氏はみる。

スパコン搭載の自動運転車は初め、高価格帯のクルマに限定される。だが、そこから自動運転機能は普及する。やがて成熟した自動運転機能は、普及価格帯のクルマにも実装される。コンピューターの歴史に沿った、新技術普及の過程だ。

「今は、このスパコンを考えずに、いきなり普及レベルのコストで自動運転を実装しようという世の中の方向性が強い。そのためにいろんな可能性を不意にしていると思う」(加藤氏)。とっぴな考えとも映る車載スパコン、高価格のクルマからの実装が、結局は自動運転車の性能向上やコスト削減を進め、普及を早めるとみる。

ティアフォーは、「最先端の自動運転車」を生むため、チップ1枚のスパコン開発を進めている。

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