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「my! 東京MaaS」始動! 東京メトロが作る大都市モデルの移動体験

2020/8/13(木)

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写真:東京メトロ提供

東京地下鉄株式会社(以下、東京メトロ)は、鉄道・シェアサイクル・タクシー・コミュニティバス・航空などの多様なモビリティやサービスと連携した「my! 東京MaaS」の取り組みを開始している。

大都市型MaaSであるこの取り組みは、「パーソナライズド」「リアルタイム」「更なる稠密性(ちゅうみつせい)・連続性の追求」の3点をキーワードに、東京の交通利便性をさらに高める考えだ。

今後、東京メトロアプリをリニューアルし、マルチモーダルな経路検索機能を実装する。将来的には、エレベータールート検索や健康応援などの付加価値機能をつけ、他社の交通アプリやサービスとの差別化を目指す。

ICT戦略部課長補佐の石川敦氏にサービスの現状と今後について話を聞いた。
※ネットワークが張り巡らされている様子。

東京メトロ ICT戦略部課長補佐 石川 敦 氏

東京メトロ ICT戦略部課長補佐 石川 敦 氏
写真:東京メトロ提供


■多様なニーズに応える「my! 東京MaaS」

東京メトロの利用客は、1日755万人に上り、利用目的も通勤、買い物、通院、観光など多岐にわたる。そうした多様なニーズに応えるため「my! 東京MaaS」のプロジェクトは始まった。

地下鉄だけでは、さまざまな交通ニーズに応えることが難しいため、他の鉄道会社、タクシー、コミュニティバスなどのモビリティ関連企業はもちろん、多様なサービスを提供するため異業種であるソフトウェア会社や携帯会社などとも連携した。連携先は現在13社局。石川氏は「今後、プロジェクトが進むにつれ、連携する会社は増えていく」と話す。

「my! 東京MaaS」のキーワードは3つある。「パーソナライズド」「リアルタイム」「更なる稠密性・連続性の追求」だ。

石川氏は「パーソナライズドは、一人ひとりのニーズにこたえたサービスを提供すること。リアルタイムは、引き続き運行情報や列車の走行位置をリアルタイムでしっかり活用すること。そして、更なる稠密性・連続性の追求は、多様なパートナーとネットワークをつなぎ、東京の隅々まできめ細かな移動を可能にすること。この3軸を念頭に据え、取り組みを進めている」と話す。
「my! 東京MaaS」コンセプト

「my! 東京MaaS」コンセプト
資料:東京メトロ提供



■東京メトロアプリをリニューアル、マルチモーダル経路検索が可能に!

「my! 東京MaaS」の最初の取り組みとして、これまで運行情報の配信などが中心だった東京メトロアプリをリニューアルする。ナビタイムジャパンの経路探索エンジンをベースに、東京メトロ独自のカスタマイズを行う。地下鉄だけでなく、バス、シェアサイクル、タクシーなども含めた経路検索が可能になる予定だ。

都営地下鉄、都電荒川線、都営バス、コミュニティバスからシェアサイクル、タクシー乗車に関わるアプリ会社に至るまで多様なモビリティ関連企業と連携することで、さまざまな経路の提案ができるようになる。

今回の連携の背景について石川氏は、「東京にはすでにモビリティサービスを行う企業が数多く存在するため、自社で新たなサービスを立ち上げるより、スピード感やコスト面で優れ、また相乗効果が得られると判断した」と語る。

■都市の生活が豊かになるサービス構想

「my! 東京MaaS」では、現時点で4つの取り組みを13社局の連携パートナーとともに計画している。

(1)デジタルでバリアフリー推進
1つ目は「エレベータールート検索」を導入し、移動のしやすさを追求する取り組みだ。都営地下鉄を運営する東京都交通局に加え、「JapanTaxi」アプリを提供するMobility Technologiesと「S.RIDE」を提供するみんなのタクシー、全日本空輸(ANA)と連携することで、乗客のニーズに合わせた最適なルートを提案する。

例えば、お年寄りや大きな荷物を持って移動している乗客がエレベーターを使用したいが、最寄り駅にエレベーターがない場合。その際、この検索機能を使用すれば一つ前のエレベーターがある駅で降りて、一駅分はタクシーを利用するといったルート検索の提案が可能になる。「エレベータールート検索」は、2021年下期に導入する予定。

他にも、ITベンチャー企業のプログレス・テクノロジーズと共同で最終検証を進めている視覚障がい者向け駅構内ナビゲーションシステムの「shikAI(シカイ)」と連携して、デジタル面からのバリアフリー化も目指している。

※Mobility Technologies(旧:JapanTaxi):タクシーアプリ「JapanTaxi」とDeNAの「MOV」との事業統合により、2020年4月から新社名で事業を開始した。今年9月には両者を統合した新アプリ「GO(ゴー)」をリリースする予定。

エレベータールート検索のイメージ図

東京メトロ提供資料から抜粋



(2)ひと駅歩いて健康に
2つ目は、「ひと駅歩く検索」による健康促進だ。目的地最寄り駅の手前で降り、一駅分歩くことで、健康に気を遣う層などの利用を促進したい考え。歩いた距離に応じてポイント還元を行うサービス「dヘルスケア」を提供するNTTドコモ、「あるく保険」を提供する東京海上日動あんしん生命保険とも連携を検討中だ。

ほかに、ドコモ・バイクシェアと「ひと駅サイクル検索」の導入も共同で研究しており、シェアサイクルによる一駅手前からの移動ルートの検索も視野に入れる。

石川氏は「非常にユニークな検索機能になると自負している。一駅歩くことで、健康促進だけでなく今まで知らなかったお店にも出会えるメリットがある。東京の新たな魅力を再発見してもらえれば、見つけたお店に家族とともに週末に訪れたり、同僚と仕事帰りに寄ったりするなど、新たな移動の創出につながるのでは」と期待を込めて話す。「ひと駅歩く検索」は2020年度下期に導入する予定。

「ひと駅〇〇検索」イメージ図

東京メトロ提供資料から抜粋



(3)ビジネスの効率化にも
3つ目は、「ビジネス加速」。日本マイクロソフトとMaaS Tech Japanと連携することで、Outlookスケジューラーと連動させ、主にビジネスパーソン向けに運行情報をリアルタイムで知らせる機能も盛り込む計画。また、富士ゼロックスと共同で提供するメトロ駅構内の個室ワークスペース「CocoDesk」とも連動しており、次の訪問先まで少し時間があればそこで仕事も可能だ。

スケジューラーと連動したサービスイメージ図

東京メトロ提供資料から抜粋



CocoDesk新宿三丁目駅
写真:東京メトロ提供



(4)「わたし好みの東京」を楽しむ
4つ目は、観光向けのMaaSを発展させ「東京を楽しむ」こと。沿線地域や地元産業と連携して、MaaS機能を活用した特設サイトを開設する。東京都交通局や「HELLO CYCLING」を提供するOpenStreet、台東区循環バス「めぐりん」と経路検索で連携することで回遊性を高める。「エリアごとで使えるデジタルクーポンなどを発行して、東京の隅々まで楽しんでもらいたい」と石川氏。

第一弾は、革靴の生産出荷額が日本一の台東区・奥浅草エリア(浅草~三ノ輪)で2020年度下期のサービス開始を予定している。石川氏は「長距離の観光客ではなく、都市生活者のちょっとしたお出かけなどにフォーカスしたサービスにしていきたい」と構想を語った。

「東京を楽しむ」ことを目指したサービスイメージ図

東京メトロ提供資料から抜粋



■コロナ禍でも付加価値の高い移動を

新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況下で、石川氏は「my! 東京MaaSの重要性がさらに増している」と話す。

「密を避けて、安全・安心な移動が今後のモビリティ業界で間違いなくキーワードになる。その一方で、できるだけ早く移動したいというニーズもあると思う。このMaaSの取り組みを通じて、一人ひとりにとって、もっと安心で、もっと移動しやすい東京の実現を目指したい」と石川氏は力を込める。

また、コロナ禍の影響でテレワーク業務が増え、通勤定期の廃止を検討している企業もある。そのため、通勤客が主なユーザーである東京メトロの乗客数は減ることが予想されるが、その点に関して石川氏は「長期的な人口減少も含め想定すると、確かに移動自体は減ると思う。しかし、『my! 東京MaaS』が軌道に乗れば移動にさまざまな付加価値が生まれ、減少する移動総量の下支えになるのでは」と期待を寄せた。

(記事/太田 祐一)

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