凸版印刷、「ジモノミッケ!」開発 生産情報と需要情報をマッチング
2022/7/13(水)
凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)は、専用アプリを活用し、生産情報と需要情報をマッチングするプラットフォーム「ジモノミッケ!」を開発した。7月11日付のプレスリリースで明かしている。
少子高齢化に伴い、消費市場全体の規模が縮小し、生産者は売上の拡大が見込めていない。しかし、宿泊施設や介護施設、飲食店など地域の顧客(以下、実需者)は、コモディティとしての農産物を欠品しないように確実に仕入れる。その上、競合との差別化につながり、自社の利益率の向上に寄与する付加価値の高い農産物の仕入れに力を入れ始めている。生産者の顔とこだわりが見える地元産の農産物は、その代表格といえる。しかし、地方都市における食品流通は、大都市への優先的な供給や一般消費者向け流通サービスの台頭により、地元への流通・供給量が年々減少している。また、地方での農産物流通では、電話やFAXなどアナログな手段を介して取引されているため、実際の供給と需要を定量的に把握することが困難だ。そのため、実需者は、地元産の新鮮な農産物を手に入れづらく、都市部を経由し入荷される過剰コストのかかった農産物を購入せざるを得ない状況だ。
一方、生産者にとっては、こだわりをもって生産した農産物もコモディティ品と一緒に扱われてしまい、都市部への流通コストがかかることを前提にした価格で取引されてしまう。そのため、高収益化へのシフトがしにくいという現状がある。
同社は、同プラットフォームのユーザビリティと事業性を検証する実証実験を、福島県会津若松市(以下、会津若松市)とその近隣地域で7月11日~9月30日に実施する。この実証実験には、農産物生産者30社と、宿泊施設、介護施設、飲食店、食品加工業者、小売店など30社が参加する予定だ。
会津若松市は、デジタル技術の導入を進める自治体を国が支援する「デジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプTYPE3)」の配分先として採択されている。凸版印刷は、地域内流通DXの実装を通じて、生産者・実需者・地域が一体となった地産地消型の「食・農業」の実現を推進する。
さらに、この実証実験は、一般社団法人AiCT(アイクト)コンソーシアム「食・農業ワーキンググループ」の活動の一環として行われる。同社は、「地域内流通DXとフードロス削減による農業再活性化プロジェクト」の責任事業者を務めている。
「ジモノミッケ!」の特長は、「直感的に操作できるインターフェース」と「トレーサビリティによる品質管理が可能な物流体制」だ。インターフェースは、生産者が「供給(サプライ)情報」、実需者が「需要(デマンド)情報」を、PCやスマートフォンから少ないアクションで登録ができるようになっている。また、「入札」(デマンド情報への生産者からのリアクション)や「落札」(サプライ情報への実需者からのリアクション)などマッチングの状況も、リアルタイムで確認可能だ。
また、マッチング後は、指定日時に専任の配達員が生産者の軒下で農産物を集荷し、AIルーティング機能により算出された最適なルートを通って実需者に納品する。無線通信タグを貼付したコンテナによるトレーサビリティ・温度管理ができる仕組みを導入し、安全な物流体制を構築する。さらに、「ジモノミッケ!」では、「最適な取引相手を自動マッチング」する機能や「都市OSとデジタル地域通貨との連携」機能も開発中だ。
なお、同社は、「ジモノミッケ!」を活用した会津若松市、および近隣地域での実証実験を通じ、2023年度の事業化を目指す。また、都市OSの導入地域を中心に「ジモノミッケ!」の水平展開を図り、2030年度までに卸売市場など50拠点への導入と、「食農需給マッチングプラットフォーム」関連事業で10億円の売上を目指すと述べている。