トヨタが早期実装を目指すブロックチェーン構想とは?
2020/3/31(火)
さらに、運転履歴や整備履歴、事故の有無などの情報がブロックチェーンにより信頼性を担保されると、中古車のマーケットにも変化が起きる。現状、中古車市場ではディーラー等による査定で一定の品質を保証する形態となっているが、これに運転履歴の情報を加えることで、より信頼度の高い情報を顧客に提供することができる。つまり、ブロックチェーンの活用によって、顧客が安全に、安心してクルマの購入・利用を行うことができるのだ。
■クルマの価値がシフトする時代にこそ期待感
トヨタは会見で、「小さなトランザクション(取引)において、ブロックチェーンの優位性が出てくる」という展望を示した。現在、世界的にキャッシュレス化が進み、それに並行して起こっているのが「マイクロペイメント(少額決済)化」だという。自動車業界について見てみると、従来のクルマの購入に見られるような、頭金を払い月々ローンを支払うという形態から、モビリティサービスやカーリース、カーシェアなどにおいて、月額固定の料金プランや、アプリ上での少額の「都度払い」も多く見られるようになった。
つまり、一度の取引に掛かる金額の規模が少額化し、頻度が増加する傾向になっている。このような流れはむしろ取引の手間、すなわち「トランザクション・コスト」を肥大化させる。取引の規模が少額化し、頻度が増加することでそれに掛かる人件費、決済に掛かる手数料などが増大してしまうからだ。
クルマ製造のサプライチェーンについて前述したように、こうした業務プロセスの簡素化やコストの削減は、ブロックチェーンに期待されているテーマの一つだ。ブロックチェーンをビジネス実装して課題解決を図るのは、クルマの価値・使われ方が多様化する大変革期において必然的な流れと言えるのかもしれない。
■ MaaS・決済アプリとの連携も視野に
トヨタは知見蓄積を目的とし、「既存のコンソーシアムに積極的に参加をしていく」と会見で語っている。その一方で、今後パートナー拡大を図る中でコンソーシアムの設立へと発展する可能性については、「今は決まっていない」と述べるに留まった。また、今のところ新会社を設立するなどの予定もないという。また、特にクルマ分野でのデファクトを取る意図があるのかについても、「実際にデファクトとして使えそうなこともどんどんオープンにしていきたい」としている。会見では既存のコンソーシアムへの積極的な参加姿勢を掲げていたが、まずはトヨタのエコシステムを活用して実証実験を行い、有効性の検証とパートナー拡大を進めていく姿勢だ 。
今後の実証については、「2020年度中に今までの検証に加え、さらに実サービスに近い環境(お客様を交えた形)での検証も行う予定」だとしている。特に顧客にとってのメリットが見えるサービスなどの実証を行うとしているが、具体的な内容は未定。今後、アイデアソンやハッカソンの開催も検討しているとのことだ。
また、具体的な取り組みについては、福岡でJR九州や西鉄らと展開するMaaSアプリ「My route」や、昨年開始した「Toyota Wallet」との連携も視野に入れていると明かした。内容について明言は避けたものの、これらのサービスでブロックチェーンをどのように活用するのか、ある程度具体的なプランが固まっていることを示唆した。時期については、「それほど時間を掛けることなく」と早期の実現を掲げ、今年度中に発表を目指す考えを明らかにした。