トルビズオンら、e-VTOL型無人航空機による混載便輸送実験実施
2022/12/6(火)
株式会社トルビズオン(以下、トルビズオン)は、オンライン服薬指導、およびe-VTOL型無人航空機(パワードリフト機)による処方医薬品の混載便輸送実験を鳥取市で実施した。12月5日付のプレスリリースで明かしている。
同実証は、12月5日に施行された改正航空法による第三者上空飛行の解禁を見越して実施したものだ。トルビズオン、有限会社徳吉薬局(以下、徳吉薬局)、株式会社NEXT MOTION(以下、NEXT MOTION)、エアロセンス株式会社(以下、エアロセンス)とともに、鳥取市の協力を得て、12月1日に行った。また、同実証は、一般財団法人環境優良車普及機構の過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業、および鳥取県デジタルグリーン物流推進実証モデル支援により実施した。
また、今回の実証に先立って、10月19日には、マルチコプターを活用し、災害を想定した医薬品等の物資を輸送する実証を行っている。今回の実証は、行きの便で平常時における中山間地域の患者へ処方医薬品の配送を行い、帰り便にてピザの配送を全行程e-VTOLで実施するというものだ。さらに、処方医薬品の配送に併せて、オンラインで服薬指導を実施している。
具体的には、3名の患者が市内の病院で診療を受け、徳吉薬局市役所前にて処方箋の受け付けと支払いを行った。そして、自宅近くにあるトリノス神戸(旧神戸小学校)で、e-VTOLが配送した処方医薬品の受け取りと、オンラインによる薬剤師からの服薬指導を受講している。
その後、e-VTOLは、復路の通過地点にある江山学園まで、神戸地域にある手作りピザ屋「ボンズ・キルン」のピザを宅配し、全行程の配送を完了した。
なお、 トルビズオンは、今後ドローン配送の事業化に向けて、さらなる実証実験を進め、人員体制、定期便、天候課題、機体選定など具体的にサービス提供できるよう課題解決をしていくという。同時に、国家資格である一等無人航空機操縦士の資格を所持するパイロットの確保も急ぐと述べている。
▼関係者のコメント
トルビズオン 代表取締役 増本衞氏のコメント
「ドローンが第三者上空を飛行させる場合において、国が重視しているのが「空路のリスクアセスメント」です。運航者は安全確保のためのルールに従う必要があります。また同時に自治体や地域との合意やマナーをまもったルートのデザインが求められます。そのためにドローン空路を視覚化して、地域住民が安心して飛行を見守れるプラットホームが必要だと考えました。それがソラシェアです。今回、運行者が地域のニーズをしっかりと汲み取り、住民が求めるニーズに従い、「空の道」を築き上げたというのは非常に意義の深いことだと感じています。」
■徳吉薬局 代表取締役社長 徳吉淳一氏のコメント
「今回の実証実験では10kmを超える距離の配送が成功したことをまずは素直に喜びたいと思います。そして今後は医薬品配送やドローンに関連する法改正等を視野に、地域の住民の方々のご理解・ご協力を頂きながら、離発着場所や飛行ルートの確立、配送体制作り等を行い、中山間地域への定期的な運行に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。」
■NEXT MOTION 代表取締役社長 西原徹氏のコメント
「中山間地域の多くの課題はもはや社会問題です。ドローンによる物品の配送は、国内の多くの企業が課題解決に取り組んでいます。医薬品の配送こそ課題解決に直結すると感じ、徳吉薬局さんと一緒にプロジェクトを立ち上げました。既に多くの分野で活躍をしているドローンですが、物流に関しては2022年12月5日に施行される改正航空法により国家資格制度が始まったり、レベル4飛行が解禁されたりと、ドローン配送がサービス化されるのはすぐそこまで来ています。そのための実証実験であり、「空の道」でもあります。私たちは鳥取にお住いの皆様と一緒に安全な「空の道」を作り上げ、ドローンが飛び交う新しい時代を築いていきたいと思っています。」
■エアロセンス 取締役 営業/アライアンス/渉外 担当 嶋田悟氏のコメント
「今回の実証実験では、河川上空から山間部谷合を抜けるおよそ12kmを10分程度でレベル3相当の飛行による医薬品および食料品配送を実現しました。2回にわたる実証実験の成功により、子供から大人まで地域に住む人々の社会受容の形成、ならびに地域のドローン配送サービス事業化を目指す方々にとって後押しとなる事を願っています。」
■鳥取市立江山学園 副校長 浅井美和氏のコメント
「江山学園の小中一貫特別の教科等「江山かがやき科」では、「地域の課題をみつけ、未来のふるさとを豊かにするためにできることは何だろうか」ということを、生徒達は探究しています。8年生の中に、ドローンを活用して何かできないかと考えた生徒達がいました。
自分たちで考えたことが今回のプロジェクトで、実現するのを目の前で見ることができ、大変感激したことと思います。子ども達の夢、地域の夢を、叶えることができるドローンの配送プロジェクトに、今回、私も参加することができ、どきどきわくわく、楽しい時を過ごすことができました。」
■鳥取県通商物流課 課長 清水明史氏のコメント
「県では、地域の暮らしや産業の発展に向けて、物流分野におけるデジタル化や自動化に関する県内企業の取組を支援しています。このたび、これら取り組みの一環として、ドローンを活用した複数人への処方箋薬の配送とオンライン服薬指導の実証実験が成功したことは、ドローン配送の実用化に向けた大きな一歩であり、今後のさらなるステップアップを期待しています。」
■鳥取市経済観光部 部長 大野正美氏のコメント
「今回の実証ルートのように、障害物の少ない河川上空で、医薬品配送などのドローン物流の社会実装を促進することで、地域課題の解決や地域活性化を図ることが期待されます。本市中山間地域では河川沿いに集落が点在している地域が多く見られることから、河川上をドローン航路として、物流のスマート化・デジタル化を進めていくことは地域住民の安全・安心な暮らしの確保に効果的と考えています。搬送する貨物量が小ロットとなりがちな過疎地域等においては、既存物流からドローン物流に転換し、グリーン電力をエネルギー源にすることで、輸送に伴うCO2排出量の大幅削減が期待されます。2050年ゼロカーボンシティを実現する観点でも、過疎地域等におけるドローン物流の取組に期待しています。」
2022年10月19日に実施した1回目の実証実験の様子