道路交通法施行規則改正でアルコールチェック義務化!内容と罰則は?
2024/2/14(水)
一方、義務化に合わせて日々のチェックは実施しているものの、具体的な運用方法について「このケースはどう対応するべきか」といった疑問を抱いている企業も多いのではないでしょうか? そこで当記事では、義務化の内容をおさらいしつつ、現場から寄せられる疑問やその対応方法について解説します。
解説にあたっては、クラウド型のアルコールチェッカー「アルキラーNEX」など、主にスマートフォン、ネットワークを利用した安全運転や業務管理をサポートするソリューションサービスの開発・提供を行う、株式会社パイ・アールのセールスマーケティング部で統括部長を務める生駒氏と、同部署のチームリーダーを務める原田氏に話を伺いました。
Sponsored by デンソーテン
道路交通法施行規則の改正によるアルコールチェック義務化の内容
●アルコールチェック義務化の内容
道路交通法施行規則の改正にともなうアルコールチェックの義務化への動きは、これまで段階的に行われてきました。当初2022年10月1日から義務化される予定だった検知器の使用は、半導体不足による検知器の供給不足で一度は延期された経緯があります。その後、準備期間やパブリックコメントの募集などを経て、2023年12月1日に改めて施行されました。
それぞれの改正内容についておさらいします。
2022(令和4)年4月1日から義務化された内容
・運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること
・酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること
2023(令和5)年12月1日から義務化された内容
・運転者の酒気帯びの有無の確認を、アルコール検知器を用いて行うこと
・アルコール検知器を常時有効に保持すること
【専門家の解説】
生駒氏:目視やアルコール検知器で酒気帯びの有無を確認することは、すでに周知されていると思います。付け加えると、チェック内容を記録すること、記録を1年間保存すること、そしてアルコール検知器を常時有効にしておくことも大切なポイントです。●アルコールチェックの義務化の対象
義務化されたアルコールチェックは、「安全運転管理者」の基本業務に盛り込まれました。この安全運転管理者とは、社用車の安全運転を確保するために、運転業務の管理や従業員への指導などの業務を行う役職です。社用車を運用する企業(いわゆる白ナンバー事業者)は保有する車両の台数に応じて、安全運転管理者を選任する義務があります。その保有台数とは、「乗車定員が11人以上の自動車1台」もしくは「その他の乗用車5台以上」(50cc以上の二輪車は1台を0.5台で計算)と、道路交通法・道路交通法施行規則で定められています。
【専門家の解説】
生駒氏:保有する車両の台数は事業所ごとにカウントされます。例えば本社で社用車を10台、支店は2~3台といった場合、支店で安全運転管理者を選任する必要はなく、同様にアルコールチェックを行う義務はありません。ただし、義務が生じない支店であっても、本社と同様にアルコールチェックを実施している企業が多い印象です。原田氏:万が一、酒気帯び運転や飲酒運転が発覚したり、それらが原因で事故を起こしたりした場合、「車両台数を満たしていない事業所なので、日常的なチェックはやっていませんでした」というのは、企業のガバナンスが疑問視される可能性もありますからね。
アルコールチェックの義務化に違反した場合の罰則
●アルコールチェックを怠った場合の罰則
安全運転管理者の基本業務であるアルコールチェックを実施しなかった場合、個別の罰則は設けられていません。ただし、2022年の法改正にともない安全運転管理者の選任義務違反などに対する罰則が強化され、中でも是正措置命令違反が新設された点に留意する必要があります。ここで指す「是正措置命令」とは、安全運転管理者が業務を行うために必要な権限や機材が確保されていないと認められる場合に、公安委員会から自動車の使用者に対して出されるものです。違反した場合は50万円以下の罰金が科されます。
●飲酒運転を行った運転者に対する行政処分・罰則
私用や業務利用の区別を問わず、飲酒運転を行った者には厳しい行政処分・罰則が科されます。具体的な処分や罰則については以下の通りです。運転者だけでなく、車両や酒類の提供者、同乗者にも罰則がある点も確認しておきましょう。▼行政処分
<酒酔い運転>
基礎点数 35点、免許取り消し 欠格期間3年
<酒気帯び運転>
・呼気中アルコール濃度0.15mg/l 以上 0.25mg/l 未満
基礎点数 13点、免許停止 期間90日
・呼気中アルコール濃度0.25mg/l 以上
基礎点数 25点、免許取り消し 欠格期間2年
▼罰則
<車両等を運転した者>
・酒酔い運転をした場合
→5年以下の懲役または100万円以下の罰金
・酒気帯び運転をした場合
→3年以下の懲役または50万円以下の罰金
<車両等を提供した者>
・(運転者が)酒酔い運転をした場合
→5年以下の懲役または100万円以下の罰金
・(運転者が)酒気帯び運転をした場合
→3年以下の懲役または50万円以下の罰金
<酒類を提供した者または同乗した者>
・(運転者が)酒酔い運転をした場合
→3年以下の懲役または50万円以下の罰金
・(運転者が)酒気帯び運転をした場合
→2年以下の懲役または30万円以下の罰金
アルコールチェックの義務化で企業が取るべき対応
●安全運転管理者等の選任
前述した通り、アルコールチェックの実施は安全運転管理者の基本業務として拡充されました。安全運転管理者に就くためには、下記の資格要件を満たす必要があります。【安全運転管理者の選任基準】
・20歳以上であること(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上)
・自動車の運転の管理に関して2年以上の実務経験があるか、これと同等以上の能力を有すると公安委員会から認定されていること
・公安委員会によって、過去2年以内に安全運転管理者または副安全運転管理者を解任されていないこと
・過去2年以内に以下の違反行為をしていないこと
ひき逃げ(救護義務違反)、無免許運転、酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、妨害運転(あおり運転)、無免許運転にかかわる車両の提供・同乗、酒酔い酒気帯び運転にかかわる車両・酒類を提供する行為および同乗する行為
・過去2年以内に以下の違反行為を下命・容認していないこと
酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許・無資格運転、最高速度違反、積載制限違反、放置駐車違反、自動車使用制限命令違反、妨害運転にかかる罪
●アルコール検知器の導入
アルコールチェックに使用する検知器の選び方については、警察庁の発表によると「呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器※」であればよいとされています。そのほかに、アルコール検知器協議会の認定品を選ぶ方法もあります。【専門家の解説】
生駒氏:アルコール検知器を導入する場合、数値だけを測定する検知器や、管理システムがセットになったサービスなど、さまざまな選択肢があります。数値測定のみの検知器を導入する際のメリットには、導入コストが安価に抑えられることが挙げられます。原田氏:一方で、数値のみ測定する場合は、チェックした結果を紙に手書きするか、パソコン上のシートに手動で打ち込むか、いずれかの方法になると思います。そうなると管理の手間が増えて煩雑になりますし、結果的に習慣として定着しにくいというデメリットもあります。
生駒氏:クラウド型のシステムであれば、測定結果が自動でクラウドにアップロードされるほか、チェックもれが起こればリマインドする機能などもあります。導入コストは検知器単体に比べて高額になるのがデメリットですが、記録や保存を確実に行うことができ、管理にかかる手間も省ける点がメリットです。
●アルコールチェックの記録の作成・保管
アルコールチェックの記録は1年間の保管が義務付けられています。記録する項目は以下のような規定があることも確認しておきましょう。(1)確認者名
(2)運転者名
(3)運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号または識別できる記号・番号等
(4)確認の日時
(5)確認の方法(対面でない場合は具体的な方法など)
(6)酒気帯びの有無
(7)指示事項
(8)その他必要な事項
【専門家の解説】
生駒氏:アルコールチェックに関する上記の事項が記載されているなら、書式の体裁などは特に決められていません。実際の運用現場では、業務効率を向上させるため運転日報などと統合して運用する方法が広く取り入れられています。●運転者への安全運転教育
アルコールチェックを行う目的は、やはり飲酒運転の防止。チェック体制の整備はもちろん、安全運転教育を通じて啓発を続けることも大切です。具体的には、飲酒運転の対策マニュアルの作成・配布や研修の受講などが挙げられます。【専門家の解説】
生駒氏:飲酒運転を防ぐには、安全運転管理者やドライバーの皆様が知識を身につけることも非常に大切です。弊社でも勉強会の開催や関連資料の提供を行いサポートしています。そのような外部研修の場を利用するのも一つの有効策ですね。アルコールチェックの義務化に関するよくある質問
この章では、アルコールチェックの運用現場からよく寄せられる質問について、パイ・アールの生駒氏と原田氏による解説をまとめました。同様の疑問を抱えている人や運用の課題解決に取り組みたい人たちは、ぜひご活用ください。●Q1:アルコールチェックを行うタイミングはいつ?
生駒氏:運転業務の開始前と終了後の計2回チェックするのが基本です。必ずしもハンドルを握る直前直後でなくてよく、朝礼や終礼での点呼に合わせて実施する事例も多くあります。●Q2:アルコールチェックの基準となる数値は?
生駒氏:道路交通法で酒気帯び運転に該当するのは「呼気中アルコール濃度0.15mg/l 以上 0.25mg/l未満」です。原田氏:問題なのは0.15mg/l未満ではあるものの、アルコールが検出された場合です。弊社の知る範囲では、わずかでも検出したら「酒気を帯びている事実に変わりはない」と判断して対応する事例が多い印象ですね。飲酒をしていないにも関わらず、アルコールが検出された場合は待機時間を設けたり、うがいで洗浄したりした上で再度測定し直す、という対応がとられています。
生駒氏:うがいの際にアルコール成分が含まれているマウスウォッシュを使うのは要注意です。また、食品が影響して反応することもありますので、食後すぐは計測しない方がいいかと思います。
●Q3:アルコールチェックの際、目視での確認ポイントは?
原田氏:目視等で確認するのは、運転者の表情、呼気のにおい、声の調子などです。より具体的に挙げるなら、会話の応答がおかしい、呂律が回っていない、顔色が赤い、目が充血しているなどのポイントをチェックするのが基本になります。●Q4:直行直帰の場合、アルコールチェックはどう行う?
原田氏:直行直帰や出張が多い場合は、出先でチェックを行う機会が増えるため、検知器を1人1台割り当てるのが一般的ですね。生駒氏:遠隔地でアルコールチェックを行う際は、社用車に乗る前に電話やビデオ通話を使った直接対話による確認方法が基本となります。ただ、早朝や深夜の移動が多い職場では管理者の負担が膨大になってしまいます。その場合は、次に述べる方法もあります。
●Q5:安全運転管理者が不在の場合、アルコールチェックは誰が行う?
原田氏:基本的には副安全運転管理者もしくは「安全運転管理者の業務を補助するもの」が行うことになっています。ちなみに現在は、外部業者のコールセンターでアルコールチェックを受け付けてくれるサービスもあります。警察庁の見解でも、「運転者に対する酒気帯び確認は、業務委託であっても差し支えない※」とされています。生駒氏:ただし、このような補助的な確認の場で酒気帯びが確認された場合は、ただちに安全運転管理者が対応を指示する必要がありますから、その点は要注意です。
●Q6:リース車やレンタカーを業務利用する場合もアルコールチェックは必要?
生駒氏:リース車両を業務で使用する場合、アルコールチェックは必要です。レンタカーの場合、一時利用であればアルコールチェックは必須ではないとされていますが、一時利用と常時利用の境界線は明確ではありません。その点を踏まえて、レンタカーを利用する場合でもアルコールチェックの実施をおすすめしています。●Q7:不正への対策も考えておくべき?
原田氏:決してよくある事例ではありませんが、数値が出てしまった場合に「会社にばれたくない」という心理が働くケースは残念ながらあり得ます。手書きの記録簿を改ざんして報告したり、写真撮影で替え玉の人に検査を受けさせたり、不正の種類はさまざまです。生駒氏:例えば弊社の「アルキラーNEX」は、顔認証とワンタイムパスワードを組み合わせて本人確認を行っています。そのほかにも、わざと故障した検知器を使う事例もあるので、機器を常に有効にしておくことも大切ですね。
●Q8:アルコール検知器に使用期限はある?
生駒氏:アルコール検知器の寿命はメーカーによって定められており、一般的には1年~1年半程度でメンテナンスが必要です。アルキラーNEXの場合は1年ごとに無料でカートリッジを交換しています。ただ、複数の検知器を順次導入した場合は、それぞれの機器がいつ寿命となるのか管理するのも一苦労です。原田氏:弊社のものを含め、検知器をレンタル品として提供しているサービスの場合、メンテナンス期限が近づくとお客様に通知して、交換する仕組みにしているメーカーもあります。
アルコールチェックの運用で生まれた課題を解決するために
今回のコラムは、道路交通法施行規則の改正によるアルコールチェックの義務化にまつわる基本情報と、運用現場でよくある質問への回答をまとめました。アルコールチェックの実施を日々継続する中で、個別のケースへの適切な対応や運用の効率化など、さまざまな要検討課題が生まれた企業も多いのではないでしょうか。今回解説した内容が、それぞれの課題解決への足がかりとなれば幸いです。
▼デンソーテンの通信型ドライブレコーダー「Offseg(オフセグ)」の強み
POINT1: トラブルをふせぐ メインユニットと通信ユニットを分離して名刺サイズに小型化された本体は、運転席からの視界もしっかり確保。さらに、標準設定のカメラは、フルHDで200万画素、2カメラ一体型で約360°の撮影が可能で、高画質に広範囲を録画できます。さらに後方をしっかりカバーしたい場合は、オプション設定でリアカメラの取り付けも可能です。
POINT2: 事故をふせぐ 人的事故要因の約7割を占める、安全不確認や前方不注意など主要な12シーンをAIが自動で検出し、管理者や運転者に警告、通知することができます。さらに、信号無視や車間距離不足といった6シーンは、リアルタイムに警告することも可能です。
POINT3: ムダをふせぐ Offsegは、安全運転管理、車両管理の効率的な運用にも貢献できます。個々のドライバーの運転行動を評価する「安全運転診断」や、「運転日報・月報の自動作成」など、日々の業務をサポートする機能を多数取りそろえています。
デンソーテンの通信型ドライブレコーダーを紹介するWebサイトでは、当記事のほかにも日々の運転業務に役立つ情報の発信や、実際に通信型ドライブレコーダーを導入している企業の事例紹介なども行っています。ぜひこの機会に会員登録(無料)をしてご覧ください。
デンソーテンの通信型ドライブレコーダーについてくわしく知りたい方はこちら!
(デンソーテンの製品ページへとリンクします。なお、全ての記事を閲覧するには会員登録[無料]が必要です)