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医療現場でキャンピングカーが活躍! 小田原市・丹羽病院の新型コロナ対応策

2020/12/9(水)

医療機関にキャンピングカーやトレーラーなどを貸し出す「バンシェルター」プロジェクトの写真

医療機関にキャンピングカーやトレーラーなどを貸し出す「バンシェルター」プロジェクト
(画像出典:PR TIMES)

新型コロナウイルス感染症拡大により医療体制が逼迫(ひっぱく)している状況を受けて、「バンシェルター」の医療現場への利用が注目を集めている。

バンシェルターはCarstayとCarLife Japanが運営する「バンシェルター実行委員会」によるプロジェクトで、Carstayによるカーシェアリングサービス「バンシェア」を主なプラットフォームとして、災害や緊急事態時に遊休資産となっているレジャー用のキャンピングカーを医療や災害現場へ派遣するサービス。CarLife Japanが医療機関のニーズを聞き取り、用途や設置場所に合ったキャンピングカーを提案し、導入の支援を行う。

コロナ禍においては、院内感染を避けるため、新型コロナウイルスの感染が疑われる患者と一般診療患者の動線を分離することが求められるが、小規模な病院でそれを実現することは難しい。しかし、バンシェルターを活用すれば、そうした病院でも来院患者との動線を分けて受け入れることが可能となる。

丹羽病院の南康平院長

丹羽病院の南康平院長



バンシェルターでは当初、クラウドファンディングや協賛企業からの支援によって無償でモビリティが貸し出されていたが、一部の医療機関では需要が続き、月払いで利用を続けている状況だ。今回は、そのなかの1つである神奈川県小田原市・丹羽病院の南康平院長(医療法人社団帰陽会理事長)に話を聞いた。

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混乱によって医療崩壊寸前の状況に

——丹羽病院の小田原市内での位置付けと、これまでの状況について教えてください。

小田原市の基幹病院は、400床以上の病床数をもつ小田原市立病院ですが、それ以外の急性期病院としては、200床未満のところが当院を含めて7つあります(一部は療養病床あり)。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、病床数は逼迫している状況です。この原因の1つにあるのが、2015年より進められてきた「地域医療構想」の取り組みです。これは、2025年の将来推計人口をもとに必要となる病床数を予測したうえで、効率的な医療提供体制を実現しようというもので、「高度急性期」、「急性期」、「回復期」、「慢性期」の4つの医療機能ごとに病床の必要量が推計され、構想区域ごとに現状とのギャップを埋めるための話し合いが行われています。これにより、200床程度の規模の病院は、この5年間で病床の半分を急性期から慢性期へと転換し、徐々に急性期の施設を減らしてきました。

ただし、その構想のなかでは災害や感染症の拡大が想定されていませんでした。公立・私立問わずどの病院も、急性期として発熱患者を受け入れ、新型コロナウイルスの感染管理をして蔓延(まんえん)を防ぐ余裕がなくなっていたわけです。

——神奈川県内の病院には、横浜港に停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」からの患者を受け入れたところもあると思います。

神奈川県では、松田町にある神奈川県立足柄上病院がはじめに新型コロナウイルスの重点医療機関に指定され、ダイヤモンド・プリンセスからの患者を受け入れました。ただ、松田町は小さな町ですから大騒ぎになってしまい、この様子を見ていた小田原市内の各病院は、混乱を恐れて発熱患者の受け入れを断るようになりました。

それに伴い、本来は心筋梗塞や脳梗塞といった生命に関わる重症・重篤患者を取り扱う三次救急の指定を受けた病院の救命救急センターに発熱患者が殺到し、本来の救急医療ができなくなってしまったのです。さらに、そこで院内クラスターが発生し、職員から入院患者まで感染が広がり、診療・外来・入院の受け入れが一時ストップしました。また、退院した患者が別の療養型病院や高齢者施設へ移ることで、新たなクラスターが発生する……といったように、医療崩壊寸前の状況にまで至っていたと思います。

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