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デンソー、クルマ視点に立った開発を 国内での仲間づくりや世界の拠点拡充でCASE対応へ

2019/10/31(木)

有馬浩二取締役社長

デンソーは、10月21日から10月25日まで、シンガポールで開催された第26回ITS世界会議2019に出展。「モビリティ社会づくりに貢献するデンソーの技術と取り組み」をテーマに、車両を守るためのサイバーセキュリティ技術、車載ブロックチェーンとQRコードを活用した自動車のライフサイクルのトレーサビリティ管理など、モビリティ社会を支える技術を紹介した。10月24日から開催された東京モーターショーでは、「未来のモビリティ社会を創る実現力」をテーマに、「セーフティソリューション」「エネルギーソリューション」「コネクティッドソリューション」の3つの分野を中心に展示した。
ITS世界会議で披露したトレーサビリティ管理は、カーシェアリングやテレマティクス保険など、クルマの使われ方や状態が価値を左右するサービスへの利用が見込まれる車載ブロックチェーンを活用した管理システム。データ改ざんが致命的となるこれらのサービスのために、ブロックチェーンを制御するプログラム自体が変えられないように工夫をしている。担当者によると、「ノーマルゾーンのプログラムのハッシュ値をセキュアワールドに逃がし、クルマが走行するプロセスのプログラムを確認することでデータを守っている」。これをCANとつなぐことでデータが保存され、改ざんが不可になるという。ネットワークにつながった状態でも、「イーサリアムでデータを共有しながらサービスを行う」ことでデータを守っている。一般的に使われているブロックチェーンのデータに、クルマ側を守るためのブロックチェーンをさらに組むことで改ざんを防ぎ、信頼できるデータを提供することで、安心して利用できるサービスにつなげていく。

10月24日から開催された東京モーターショーのセーフティソリューションのブースでは、画像センサーとミリ波レーダーの性能をミニチュアカーとプロジェクターを用いて紹介した。画像センサーの紹介では、ミニチュアカーに搭載されたカメラからの映像をモニターに映し出し、肉眼の視界とカメラが捉えている映像の差を披露した。カメラは5ルクス程度の明るさの住宅街でも歩行者を認識。「月明り程度の暗さ」といわれる1ルクスの空間では、アクリル透明版を通して、夜の車内からの視界を再現した。ここでもカメラは、はっきりと歩行者を視認し、歩行者の服の色まで判別していた。ミリ波レーダーの紹介では、前に2台のクルマが近接し、ガードレールがある状況下で、独自のアルゴリズムから前走車を特定して追従走行を行うアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)システムが披露された。

「月明り程度の暗さ」といわれる1ルクスの空間でのデモ



「月明り程度の暗さ」でもカメラははっきりと歩行者を視認し、歩行者の服の色まで判別していた。



エネルギーソリューションのブースでは、電動化車両に必要な、モーター、インバーター、電池監視ユニットを展示。コネクティッドソリューションのコーナーでは、モックカー「DENSO URBAN MOVES」で、クルマがクラウドとつながる便利な暮らしを紹介した。

モックカー「DENSO URBAN MOVES」



デンソーでは「CASEの事例に合わせたよりクルマ視点での開発商品化に向け、新たな仲間づくりを進めてきた」(有馬浩二取締役社長)。電動化領域の強化のため、デンソーグループは2018年度からの3年間で約1,800 億円を投資。2019年4月には、電動化駆動モジュールの開発や販売を担う新会社「 株式会社 BluE Nexus」をアイシン精機と設立した。2020年5月には、安城製作所内に「電動開発センター」を立ち上げ、トヨタ自動車の広瀬工場と一体となり、電動化製品の先行開発、試作、実証、量産までを一貫で行う。

自動運転の領域では、2019年4月にトヨタグループの 4 社で新会社「J-QuAD DYNAMICS」を立ち上げ、自動運転の実現に向けた統合制御ソフトウエア開発を加速している。2020年 6月には、羽田空港跡地に自動運転技術の試作から実証まで一貫して行える体制が整う。半導体、センサー、ECU、モーター領域には2017年度からの3年間で約 5,700 億円を投資。2020年4月にはトヨタ自動車と車載半導体の研究・先行開発を行う新会社を設立する。

さらに、世界における技術開発を進めるため、現在は世界各地にある7つのテクニカルセンターに加えて、フィンランド、イスラエル、モントリオール、シアトルなど、先端R&Dを行うイノベーションラボを拡充。ソフトウエア開発においては、2025年までに、世界全体で人材を12,000人まで拡大する。インドやベトナムをはじめ、世界中の拠点を活用し、大規模ソフトウエア開発を 24 時間体制で行っていく。

デンソーでは今後も国内での仲間づくりや世界での拠点を拡充し、CASEを見据えた開発力強化を進め、「多くの人が安心して移動を楽しめる、笑顔溢れる社会をお届けする」(有馬社長)。

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