運転データを事故防止に 人とクルマをつなげるドライブレコーダー
2021/8/1(日)
【特集:ドライブレコーダーの進化に迫る】
株式会社デンソーテン(以下、デンソーテン)は営業車両などの社用車を主なターゲットに、通信型ドライブレコーダー「G500Lite」のサービス展開を行っている。クラウドサーバーと連携して、車載器で録画した映像をAIが自動で抽出する機能などが特徴だ。
さらに、同製品は取得したデータをドライバーの管理・教育などへと活用するなど、安全運転管理に特化したシステム提供も行う。今やドライブレコーダーは、単に運転映像を録画する車載器から、運転データを活用したサービスパッケージへと変貌を遂げた。
実際に導入している企業の事例から、ドライブレコーダーの進化に迫る。
さらに、同製品は取得したデータをドライバーの管理・教育などへと活用するなど、安全運転管理に特化したシステム提供も行う。今やドライブレコーダーは、単に運転映像を録画する車載器から、運転データを活用したサービスパッケージへと変貌を遂げた。
実際に導入している企業の事例から、ドライブレコーダーの進化に迫る。
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2020年6月、道路交通法改正により「妨害運転罪」いわゆる「あおり運転」への罰則が設けられた。そして、あおり運転に対する社会の注目度がここ数年で高まったのに合わせ、ドライブレコーダーの導入も進んだ。
ソニー損保が毎年行う「全国カーライフ実態調査」の2020年版※では、自家用車にドライブレコーダーをすでに設置している人は全体の31.9%、これから設置したいと考えている人は55.3%にも及ぶ。2016年の調査では、設置していると答えた人は10.4%に留まっており、4年間で約3倍に増加したことになる。
※ソニー損保「2020年 全国カーライフ実態調査」:2020年10月23日〜10月26日の4日間、自家用車を所有し、月に1回以上車を運転する18歳〜59歳の男女に対し行ったインターネットリサーチ(有効回答:1,000名)
2020年 https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2020/12/20201214_01.html
2020年 https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2020/12/20201214_01.html
また、自家用車のみならず、「会社の看板」を掲げて走る社用車においても、ドライブレコーダーの設置は重要事項だ。交通事故を引き起こした場合、即座に社会的な信頼を失うリスクがあり、それを踏まえたドライバー教育や運用管理が求められる。
地盤・測量のスペシャリストである株式会社トラバース(以下、トラバース)は、社内で起きた交通事故をきっかけに「G500Lite」を導入し、現在は全国の営業所などで活用している。日々の業務と並行して安全運転への意識を高めることは簡単ではないが、確かな効果を実感しているという。
■交通事故を繰り返さないために
――それでは、トラバースの事業内容をご紹介ください。トラバース:弊社は、測量調査・地盤調査や、地盤補強をはじめとした改良工事などが主な事業です。本社は千葉県にあり、そのほか本州・九州の各地に営業所があります。
――具体的にどのようなシーンでドライブレコーダーを使っているのでしょうか?
トラバース:はい。北海道・沖縄を除いた全国の営業所で、現場へ向かう際の社用車に導入しました。利用している社員たちは運転が主な業務ではないので、運転時間は長くても1日あたり往復4時間ほどです。近い現場であれば1時間に満たない場合もあります。
――導入のきっかけについて教えてください。
トラバース:実は、「G500Lite」を導入する以前に、社内で立て続けに大きな交通事故が起こったんです。再発を防ぐため、ドライブレコーダーの導入を検討し始めました。
――事故が起きる以前、交通安全に関する取り組みなどは社内でしていたのでしょうか?
トラバース:事業が土木関係ということもあり、社内で年2回「安全衛生大会」を開催しています。その中で安全運転について話し合ったり、交通事故の事例を検証したりする取り組みを行ってきました。各営業所では月1回安全に関するミーティングも行っています。
しかし、日々行う調査・工事などの業務と両立することを考えると、ある程度本社側で社員の運転状況を管理できる仕組みの方が良いのではと考えました。
弊社は主に調査課・営業課・工事課という部署で社用車を運転しています。2017年にまずは調査課から約200台分を導入して、効果を確かめました。
■AIが自動抽出した「ヒヤリハット」を社内で共有
――今では400台以上の社用車に「G500Lite」を導入しているそうですね。どんな点が優れていたのでしょうか?トラバース:「G500Lite」はドライブレコーダーから取得した映像データがサーバーにアップされ、一元管理ができます。また、走行中に何らかの異常が起きた際のメール通知なども自動で届くので、管理しやすい点が良いですね。
(資料提供:デンソーテン)
「G500Lite」の導入後は、ドライブレコーダーから取得した約半年分の映像から、AIが自動で抽出した「ヒヤリハット」のシーンや、手動でピックアップした危険運転の映像などを社内で共有しています。先ほど挙げた「安全衛生大会」やミーティングなどでも活用しています。
――「G500Lite」の導入後、どのような効果を実感していますか?
トラバース:大きな交通事故が無くなったのが一番です。映像を共有する場面が定期的にあるため、社員の緊張感も保てているのだと思います。また、コスト面で言うと、事故を起こした後に保険料が上がりましたが、現在は毎年下がっています。それも効果の一つと言えるのではないでしょうか。
――そのほか、日常の利用や管理などにおいて改善した点はあるでしょうか?
トラバース:SDカードから映像データを読み込まなくても良くなった点※が大きいです。それまではドライブレコーダーの録画映像を抽出するには、現場で仕事をした後に営業所へ戻って、SDカードのデータを読み込む必要があって、業務上の負担になっていました。一括で管理して、状況に即した対応ができるのは、現場にとっても管理側にとっても負担の軽減になります。
加えて、管理側からすると、WEB版になって動作が速くなった点がありがたいです。さらに管理画面がシンプルになり非常に使いやすくなったのも、業務時間の短縮につながっていると思います。
※クラウドサーバーに映像を送信するほか、「G500Lite」本体に挿入されたSDカードから映像を読み込むことは現在も可能。
■安全運転への意識向上をさらに加速させる
――今後、「G500Lite」をどのように活用していきたいとお考えですか?トラバース:すでに実装済みのものですが、ドライバーの安全運転評価をランキング化する機能を活用したいと考えています。実は以前、利用してみようと試したのですが、細かい評価設定をせずに使ったので、あまり点数に差が出なかったんです。
4月からは「ながら運転」や、一時停止などの道交法を違反した際に、検知ができるようになったと聞きました。これを生かせばもっと細かい評価ができるようになると思うので、活用していきたいです。
例えば、安全運転をしている社員の人事評価に反映するようにできれば、全員が真剣に取り組んでくれるのでは、と思います。今後、弊社にとって最適な方法を考えていこうと思います。
(資料提供:デンソーテン)
――「G500Lite」の導入を通じて、社内の安全運転への意識は高まったでしょうか?
トラバース:以前より高まっていると思います。ただ、それでも軽微な事故やヒヤリハットは無くなりません。交通ルールを守れとか、スピードを出すなという指示を出すのは簡単なのですが、実際に交通違反をしていなくても事故は起こり得ます。そういったことを含めて、どうルールに定め、評価を行うのかが今後の課題ですね。
【結び(取材後記)】
コネクテッド技術が進化するのに合わせて、今後もドライブレコーダーのデータを活用したさまざまなサービスが生まれるだろう。一方で、「事故の無い社会」に向けては、まだまだ課題が山積みだ。トラバースの事例に見られるような日々クルマを運転する現場での安全運転意識の向上が、その未来の実現につながる一歩となることを願うばかりだ。