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意外と知らない、居眠り運転の防ぎ方【睡眠専門医・坪田先生インタビュー】

2021/10/19(火)

【特集:ドライブレコーダーの進化に迫る】

デンソーテンの「G500Lite」は、主に企業・団体の社有車向けに開発された通信型ドライブレコーダーだ。取得した走行データを用いて、安全運転管理に特化したシステム提供を行っている。その中で注力する技術の一つが、映像・画像の解析だ。膨大なデータから交通事故やヒヤリハットの映像をAIが収集し、管理者やドライバーへの注意喚起などに活用できる。

また、企業が交通事故の防止に取り組む際、注意したいのが「居眠り運転」への対策だ。長時間労働や職場のストレスなどが居眠りリスクを高めてしまう要因とされるが、これらはどの企業にとっても他人事ではないだろう。

なぜ居眠り運転は起きてしまうのか?そして、その対策は?
睡眠専門医の坪田聡氏(雨晴クリニック副院長)に話を伺った。

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■睡眠不足時の運転は酒酔い並み!?

――企業が事故防止に取り組む上で、重大事故につながるリスクが高い居眠り運転への対策は極めて重要です。そこで本日は、睡眠専門医である坪田先生に「運転と睡眠」の関係について伺いたいと思います。早速ですが、なぜ居眠り運転は起きるのでしょうか?
坪田氏:居眠り運転が起きる原因は、やはり睡眠不足がベースにあります。睡眠不足に陥っている人は、長時間の運転やシフト制の勤務で睡眠時間が不規則になって体内時計が狂い、睡眠の質が落ちている傾向にあります。

ほかに時間帯も関係していて、人間は通常午前2時から午前4時と、午後2時から4時にかけて眠気のピークに達します。その時間帯に居眠り運転が発生しやすいんです。

――自動車の運転は一般的に「認知・判断・操作」の手順を踏んで行います。最近では「予測」を加えて「認知・判断・予測・操作」という場合も増えました。睡眠不足の状態で運転するのは、これらの脳の働きに悪影響が出そうですね。
坪田氏:予測とは、いろいろな情報を統合して経験を引き出しながら行うものですから、やはり眠気があると能力が落ちます。その状態では危険なシーンで反射的にハンドルを切る操作は可能かもしれませんが、脳の高度な仕事である予測や判断は難しくなるでしょう。

多少の睡眠不足ならたいしたことはないと思われがちですが、ある研究では通常8時間寝ている人が6時間睡眠で活動すると、酒酔い状態と同程度に判断力が落ちるというデータがあります。つまり、2時間削るだけでも大変危険なんですよ。

オンラインで取材に答える坪田氏

オンラインで取材に答える坪田氏


■まずは限界まで寝てみる!?

――先ほど「睡眠の質」というお話がありましたね。最近よく聞くようになった言葉のように思いますが、「質の良い睡眠」とはどういうものでしょうか?
坪田氏:質の良い睡眠には、「寝つきが良いこと」と「夜中にあまり起きないこと」が重要です。目覚ましに頼らず起きたい時間に起きて、疲労感なく熟睡したと感じられる状態ですね。先ほど説明した通り、午後2時から4時ごろに眠たくなるのは自然なことですが、それ以外の日中の時間帯を眠たくならずに過ごしていれば、質の良い睡眠がとれていると言えます。

――具体的に何時間くらい眠るのが良いのでしょうか?
坪田氏:それは人それぞれです。例えば、日中に仮眠できるなら夜の睡眠時間が少しくらい短くても問題ない場合もあります。また、20代の人で8時間くらい、60代になると6時間くらいが適切という研究データがあり、年齢によっても変わります。つまり、「その人にとって必要十分な睡眠時間を取れば良い」というのが答えなんですよ。

――人によって最適な睡眠時間が異なるんですね。
坪田氏:そうですね。しかし、それぞれだと言われても「自分はどうなんだ」と思いますよね。日本で10万人規模の追跡調査を10年間行うと、7時間前後の睡眠をとっている人の死亡率が最も低いという結果が出ました。それよりも長くても短くても死亡率が高まります。これは日本だけでなくアメリカやヨーロッパでもほぼ同じ傾向で、つまり一般的には7時間くらいが最適な睡眠時間だと考えられています。その上で年齢や個人差も考慮して、厚生労働省はおよそ6時間から8時間の睡眠をとるのが妥当だとしていますね。

――自分に合った睡眠時間を知る方法はあるのでしょうか?
坪田氏:体感的にわかるものではなく、正確に知るには病院で電極を装着するなどして調べる必要があります。簡易的な方法なら自宅で調べることもできますよ。休日に部屋を真っ暗にしてから、もう眠れないという時間まで睡眠をとるんです。そして、平日の睡眠時間との差を計算してみます。2時間以上の差があると、睡眠不足の可能性が高いです。つまり3時間多く寝ているようだと、平日の睡眠は1時間足りないということです。平日は短い睡眠時間で、土日は昼まで寝る人もいますが、そういう人たちの多くは睡眠不足だと考えられます。

■睡眠の質を高める3つの方法



――では、気になる「睡眠の質」の高め方を教えてください。
坪田氏:大きく分けて、方法は3つあります。1つ目は生活習慣の改善。生活習慣といってもいろいろですが、まず光をコントロールすることですね。日中は強い光を浴び、夜はなるべく暗い場所で過ごすのが基本です。おすすめしないのは、寝る前にスマホ画面を見ること。スマホ画面から出るブルーライトが目に入ると、脳が「今は昼だ」と認識してしまうので、睡眠の質が悪くなってしまいます。

また、生活習慣を整えるには、体内時計の調節も重要です。人間の体内時計は、個人差はありますが24時間より長く設定されています。普段は朝に強い光を浴びてズレを調整しているんです。そして、日中ちゃんと光を浴びると夜に深い睡眠がとれることが分かっています。昼と夜で、浴びる光の量にメリハリを付けることが重要です。

――寝る前にスマホを触ってしまうのは、習慣になっている人も多いでしょうね。
坪田氏:本当は寝る1時間前には触らないでほしいですが、遅くとも30分くらい前にはやめた方がいいです。テレビやパソコンも同様ですね。ただ、「やめましょう」と言うだけでは効果がないので、その30分間に違う習慣を身に付けましょう。例えばストレッチをする、マンガを読む、音楽を聴くなどが挙げられます。スマホは寝る前の代わりに、朝起きてからすると良いでしょう。

――2つ目のポイントはなんでしょうか?
坪田氏:2つ目は寝室の環境をきちんと整えることです。今の暑い時期(取材時期:8月下旬)で言うと、部屋の温度は26℃から28℃、冬なら20℃くらい、湿度は50%から60%に保つのが良いと言われています。梅雨から真夏にかけては湿度が80%くらいになりますから、エアコンで湿度を下げる必要がありますね。逆に、冬だと湿度は30%くらいになりますから加湿器などが必要です。

また、日中とは反対に、なるべく暗くした方がよく眠れます。真っ暗にすると不安に感じる人は、豆電球を一つくらいならつけても大丈夫ですが、天井照明よりもフットライトのように直接目に光が入らないものが良いですね。

――最後の3つ目のポイントについて教えてください。
坪田氏:3つ目は、ストレスへの対策ですね。個人差はありますが、仕事や人間関係などで生じたストレスは睡眠にも影響します。ストレスを感じたらその日のうちに対処した方が良いので、自分がリラックスできる趣味、ストレッチやヨガのような運動、入浴などをするのがよいでしょう。

そのほかにおすすめしているのが、「スリー・グッド・シングス(three good things)」という心理学の研究から生まれた方法です。寝る前にその日あった良いことを3つ挙げ、ノートなどに書く習慣で、続けると前向きな気持ちになっていき、ストレス耐性が高まると言われています。

■眠気を感じる前後にできること



――睡眠の質を高めるためにできることはたくさんあるんですね。とはいえ、日中に眠たくなってしまう時間帯もあるわけですよね。眠気を感じる前、あるいは感じた時にできることはあるでしょうか?
坪田氏:おすすめなのは仮眠すること、つまり昼寝です。昼食後にカフェインをとって20分間くらい仮眠するのがいいでしょう。生理的に眠たくなる午後2時から4時の眠気を昼休みに先取りしておくということです。午後にしっかり活動できれば、夜も眠りやすくなる効果もあります。

――眠気を感じてしまった時はどうすればよいでしょうか?
坪田氏:例えば、人と話すことです。話を聞き、考え、返す。この繰り返しで脳を使い、目が覚めるんです。ほかには軽い運動などです。体を伸ばすだけでも、筋肉が引き伸ばされることで脳に刺激がありますから有効です。ガムを噛む行為もリズミカルな筋肉の運動で脳が活性化します。

そのほかには、冷たい刺激を受けることですね、顔を洗ったり冷たい風に吹かれたりすると目が覚めます。車の運転中であれば、窓を開けて外気を浴びるとか、エアコンの温度を下げるなどの方法がありますね。

■ドライブレコーダーが貢献できることは?

――現在、「G500Lite」は居眠り運転を防ぐために、インカメラによる顔認識で、瞳孔の開きや顔のうつむき加減などを見て、居眠り運転を検知する取り組みが進んでいます。坪田先生が今後ドライブレコーダーに期待していることをぜひ教えてください。
坪田氏:ドライブレコーダーの顔認識は、どんどん精度が上がっている印象です。顔の動きなど、検出できる項目も増えていますよね。実現したらいいなと思うのは、実際に運転しているドライバーに「危ないですよ」と通知する機能です。

――現在もまぶたを一定時間以上閉じるとアラート(通知)を出す機能はありますが、その精度をさらに上げるということですよね。
坪田氏:AIやビッグデータなどを使って事前に予測して、目を長時間閉じてしまう前に、リアルタイムで通知してあげられると良いですね。そういう居眠り運転の予防にはすごく将来性があると思います。

もちろん、これはドライブレコーダーだけではなく、そのほかのセンサーで補助する方法もあり得ると思います。シートセンサーを座席に埋め込むとか、いろいろな方法が考えられますよね。ドライブレコーダーとほかの装置を組み合わせることで、居眠り運転を防止する機能はさらに進化するのではないでしょうか。

■眠くなる前、事故を起こす前に

――睡眠不足の解消や居眠りの防止に関して、先生は今後どのような方向で進めば良いと考えていますか?
坪田氏:病気になる前の状態を表わす「未病」という言葉があります。長期的な睡眠不足は病気につながりやすいですから、未病の状態だと言えます。ですから、病院で治療を受ける患者さんだけでなく、睡眠不足や睡眠障害を抱えていながら病院に行けない人、さらに現在健康な人にも、睡眠の質を上げる方法を生活習慣に取り入れてほしいと考えています。

――今回紹介してもらった方法を、ぜひ多くの人に実践してほしいですね。
坪田氏:はい、睡眠は起きている時間を充実させて、健康に、そして安全に過ごすために重要なものだと多くの人に知ってもらいたいですね。

この記事のまとめ

【取材後記】
社内で事故防止に取り組む際、難しい課題となり得るのが居眠り運転への対策だろう。坪田氏が指摘するように睡眠不足は生活習慣や仕事の負荷、さらには職場の人間関係なども関係するため、安全運転教育だけで完全に防げるとは限らないからだ。この記事で紹介した睡眠の質を高める方法や眠くなった時の対処方法を参考にしつつ、職場で睡眠不足を防ぐ仕組みづくりを検討してもらえたら幸いだ。

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