APAC地域の輸送/物流業界従事者を対象にした調査結果をHEREが発表
2023/5/30(火)
HERE Technologies(以下、HERE)は5月29日、日本を含むアジア太平洋(APAC)地域の輸送/物流(T&L)業界従事者を対象にした、初の調査結果「APAC On The Move」を発表した。
同調査の目的は、サプライチェーン、車両および物流管理を左右する最新の技術トレンドと導入の現状について、調査対象者となった輸送/物流企業幹部から得たインサイトを提供することだ。2023年APAC On The Moveの重要な調査結果の1つは、コロナ禍が始まってから3年が経過した現在でも、日本の物流企業にとって、エンドツーエンドのアセット追跡と荷物の可視化が依然として難しい。調査に参加した日本の物流企業は、リアルタイムかつエンドツーエンドでのサプライチェーンの可視化を実現するうえで、技術導入の難しさが最大の障壁となっていると回答している。
世界の多くの国でドライバー不足は深刻な問題だが、日本ではこれを既存ドライバーの勤務時間を延長することで補ってきた。しかし、日本の物流業界は、2024年4月1日よりトラックドライバーの時間外労働の上限を年間960時間に制限するという規制強化「2024年問題」に対処する必要がある。
また、日本で調査に参加した企業の4分の1以上(日本: 26%、APAC平均: 52% 以下同様)が、適切なパートナーやサプライヤーを見つけることが技術の実装における最大の障壁だと回答している。そのほか、コスト(21%、APAC:44%)、社内の専門知識や人材の不足(16%、APAC:29%)が日本の物流企業の大きな懸念となっているという。
さらに、調査に回答した物流企業は、コストと時間と多大な労力を要するような大幅なシステム変更なしで簡単に導入できるターンキーソリューションを望んでいるという。HEREの調査によれば、既存のインフラにソフトウエアを統合する難しさ(21%、APAC:52%)、ソリューションを運用管理できる熟練した人材の不足(19%、APAC:35%)、ソリューションを実装する時間の不足(17%、APAC:39%)が、物流アセット追跡と荷物/貨物モニタリングソリューションの導入を妨げる主な障壁となっているとのことだ。
また、同社は、コロナ禍において、世界的なサプライチェーンにおける技術導入の難しさと手作業の脆弱性が露呈されたと指摘している。回答した日本の物流企業の過半数(70%、APAC: 51%)は、アセット追跡/荷物モニタリングソフトウエアを利用し、手作業での入力なしでアセット、荷物、貨物をリアルタイムで追跡している。しかし、一方で、今回の調査では、ソフトウエアの統合から熟練人材確保の壁にいたるまで、日本企業が今日直面している現実的な課題が浮かび上がっているとも分析している。
くわえて、同社は、自動化に関して、日本の回答者は自社が業界や競合他社と同列か、あるいは先行した立ち位置にあると確信しているという見解を示した。現在、日本の回答者にとっての位置情報の主な3つの用途は、カスタマーサービスの向上(21%)、到着予定時刻(ETA)の予測とトラック&トレース機能の使用(19%)、アセットの追跡(16%)だった。
ほかにも、回答者の3分の2近く(60%、APAC: 40%)が、荷物/貨物モニタリングソリューションの構築または購入の動機として顧客満足度の向上を挙げている。同じ理由は、物流企業が将来の技術に投資する主な理由としても挙げている(60%、APAC: 39%)。さらに、日本の回答者の56%(APAC: 39%)が、物流アセット追跡、荷物/貨物モニタリングソリューションを購入する動機として持続可能性への取り組みを挙げた。
また、物流企業は、IoTによるリアルタイムモニタリングとデータ収集を利用し、十分に根拠のある意思決定を行うことができる。今回の調査でも、日本の多くの物流企業がすでに何らかのIoT技術を導入していることが裏付けられた。日本の物流企業の間でIoTの用途として最も一般的なのは、倉庫管理(22%)、アセット追跡(19%)、在庫管理(18%)だと判明している。
くわえて、将来に目を向けると、日本の物流企業の半数以上がブロックチェーン(58%、APAC: 27%)、ドローン(56%、APAC: 33%)、電気自動車(55%、APAC: 23%)、自動運転車(51%、APAC: 27%)への投資を計画しているとのことだ。これらの技術は物流業界で、顧客満足度を高めるだけでなく、重要なリアルタイム情報へのアクセスを改善することで、意思決定を助ける(56%、APAC: 38%)、技術力を高める(50%、APAC: 39%)と認識されている。こういった理由から、これらの技術は、日本での労働力不足をさらに緩和すると期待されている。
▼関係者のコメント
■ジオテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 CEO 杉原博茂氏のコメント
日本の物流業界において、本調査にもあるよう「2024年問題」は、日本の物流網の維持にも影響を与える事態が想定されます。ジオテクノロジーズは、ミッション「地球を喜びで満たそう」の下、私たちがこれまで蓄積してきたビッグデータと最先端の技術を駆使して地球上で起こるさまざまな事象を予測できるようにすることで、さまざまな課題解決を目指しています。HERE Technologiesとのパートナーシップを通じ、物流業界の労働力不足など、直面する課題解決に貢献し、グローバルで鍛え上げられた、革新的な技術をご紹介し、物流DXの実現で、社会と業界の皆様により一層、貢献できると確信します。
■三菱商事株式会社 産業DX部門インダストリーDX部長 田代浩司氏のコメント
弊社出資先であるHERE社調査において、実に多くの企業が、「技術パートナーとのアライアンスが日本の物流産業におけるイノベーションの鍵であること」を表明しております。弊社の産業DX戦略においても、私たちは“物流DX”をテーマに、HERE Technologies社とともにそのグローバルな知見やテクノロジーを活用し、物流産業改革に資するソリューション・サービス開発を進めております。私たちはHERE Technologies社とのパートナーシップを梃に、物流・モビリティ産業の変革に貢献し、社会課題の解決に資する持続可能なエコシステムの構築を目指して参ります。
■Frost & Sullivan社 モビリティ担当グローバルクライアントリーダー Vivek Vaidya氏のコメント APAC地域のサプライチェーン/物流企業は、アセット追跡と荷物のモニタリングにおいて、進歩の段階にばらつきがあります。IoT、AI、ドローンに投資し、リアルタイムの可視化を目指す企業がある一方、多くの企業はまだ手作業で同じ目的を達成しています。現在、手作業に頼っている企業は、おそらく一足飛びで現代のソリューションを導入することになるでしょう。アセットや貨物をリアルタイムで可視化することへの意識は、コロナ禍以後に急速に高まり、今後も続くことが予想されます。このことは今後10年間のこの分野において、HERE Technologiesのようなソリューションプロバイダーに大きな成長の可能性があることを示しています。
■HERE Japan株式会社 代表取締役社長 枝隆志氏のコメント 日本の物流業界は現在、急速な成長を遂げるとともに、ビジネスや消費者の需要に応えるために重大な構造的な変化を経験しています。物流業界は差し迫った「2024年問題」に対処すると同時に、業務の最適化、効率化、持続可能性の目標達成に向け、位置情報を利用したデジタルトランスフォーメーションに乗り出す必要があります。これにより最終的な収益を増やすだけでなく、この重要な業界に人材を誘致し、定着させることも可能となるでしょう。