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市光工業 安全、そしてその先の安心を支えるクルマの技術

2017/10/26(木)



カメラモニタリングシステムの全体像


自動運転時代のクルマのコミュニケーションのあり方を問う─ コミュニケーションライティング

─コミュニケーションライティングとはどういったものなのですか?

車両が次にどういった行動をとろうとしているのか自動的に周囲のドライバーや歩行者に光やサインで伝えるシステムです。特に自動運転になったときに、今までアイコンタクトやジェスチャーで行っていたコミュニケーションができなくなる可能性があります。レベル4 の自動運転では、ドライバー(乗員)が乗っていても前方を見ていません。本を読んだりスマートフォンを触ったり、あるいは眠っているかもしれません。この場合、例えば横断歩道で歩行者が渡ろうとしているとき、ドライバーと歩行者のコミュニケーションがとれないと、歩行者は渡るのをためらい、自動運転車も判断に苦しむでしょう。これを、光によるコミュニケーションで解決しようとしています。

自動運転は、安全のためには絶対必要なものだと思います。ただ、自動運転になったときにスムーズな交通ができるかというとそうではありません。特に市街地で自動運転車が行き交うときに、何のために停車して、次にどう行動するかがわかれば安心できます。そういったコミュニケーションを実現するために開発を始めました。光以外にも、音や振動など五感に訴えるものでも可能ですが、その中でも光は遠くからでも見え、音のように他と混ざって識別できないということがないため、光を利用しています。

 

─確かに、通信を使った自動車どうしのコミュニケーションや、HMI による自動車とドライバーのコミュニケーションなどスマートな方法の開発が盛んですが、例えば自動運転車とそうでないクルマのコミュニケーションなどはあまり考えられていないと感じます。

人とくるまのテクノロジー展でコンセプトを出しましたが、現在は基本的な商品の形がどうあるべきかという部分に焦点を当てています。本当に実用性、需要があるのかどうか自動車メーカーなどと議論しながら進めています。光らせ方など技術的な部分の作り込みも可能ですが、コンセプトとして展示した形しかないとは思っていません。

コミュニケーションライティングの現段階でのコンセプトが展示された。車体を360 度囲むようにライトが灯り、色や光り方などでクルマの行動の意思表示をする。



 

─実際に展示した反響はいかがでしたか?

安心して自動運転のクルマが環境の中に溶け込むためのアプローチとして良いという意見もありましたが、逆にいろいろな課題も見えてきました。光でコミュニケーションするという基本的なところは良いですが、その方法をうまくしなければ伝わらないという意見を多くいただきました。

コミュニケーションライティングは、意思を伝えるという点で言語と似ています。例えば「今あなたのために止まっている」という意思を伝える光り方など、共通の認識があれば分かりやすいものになります。例えば、赤色に光るのは後ろ側であり、白く照らすのが前方であるというのは共通です。また、左右がオレンジ色に点滅していれば曲がるという共通認識があります。色、光らせ方、光る場所などをうまく組み合わせて「光語」というものを構想しようとしています。

しかし、これはわれわれ市光工業だけでできるものではありません。自動車メーカーや政府関係とも議論をしなければいけません。ランプメーカー同士は競合ですが、光を使って安全な社会をつくっていこうとしたときに協業する可能性もあります。最終的には、安全はもちろん、安心であることを提供することが必要不可欠です。

 

─現在議論されている自動運転でも、通信や3D マップなど協調領域と競争領域の切り分けがされています。コミュニケーションライティングもそのような方向性になりそうですね。

自動運転はオリンピックに向けて時間を無駄にできない状況にあります。安全に運行するために、高精細な地図、センサー類などを使いながらステアリング操作やアクセル操作を行い、歩行者、対向車などを巻き込まず、縁石にも乗り上げずに安全に走行することことに焦点が当てられていますが、それは第一条件です。その次に来るのは「安心」して共存できるかどうかです。そこに注目しながら、早め早めに着手していきたいと思います。

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