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ダイハツが次世代型「ミゼット」を提案。暮らしの幸福度を高める小さなモビリティ【JMS2025】

2025/11/19(水)

ダイハツ「ミゼットX」

ダイハツ「ミゼットX」

ダイハツ工業(以下、ダイハツ)は、ジャパンモビリティショー2025で、「わたしにダイハツメイ。」をテーマに、同社が培ってきた「小さいクルマづくり」の技術をコンセプトカーとして展示した。多彩な提案がなされるなか、特に注目を集めたのが次世代の小型モビリティ「ミゼットX」だ。1957年に登場した初代機の精神を現代に受け継ぎつつ、現代から近い将来の暮らしを見据えたアップデートが施されている。

トヨタ・佐藤社長が語る「小さいからこそできる価値」

ダイハツの展示テーマは、前述したメインテーマに加え「小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。」との副題がついている。その言葉の奥にある思いは、トヨタグループのプレスブリーフィングにおいて佐藤恒治社長の口から語られることになった。

佐藤氏は「クルマを小さくつくることは、とても難しい。そんな挑戦を続けているのがダイハツ。ダイハツのクルマづくりは、昔も今も変わりません」と発言。そして「『小さいからこそできる』トヨタにはできない大発明で、Mobility for Allを一緒に実現していきたい」と決意を示した。


「ママチャリの延長」としての次世代モビリティ

ダイハツ「ミゼットX」の別角度

ダイハツ「ミゼットX」


中でも来場者の注目を集めたのが、「ミゼットX」だ。ダイハツはこのコンセプトカーを、「街のヘリコプター」として親しまれた初代ミゼットの発明精神を受け継ぐモビリティとして展示。「自転車以上、軽自動車未満」という新たなカテゴリーで、「みんなの身近な移動」を叶える1台と位置づけた。

デザインを務めたダイハツの田辺竜司氏は、今回のミゼットXは「小さいクルマづくりに長けているダイハツにしかできないことを模索した結果」だと語る。日本の古い街道や住宅密集地、中山間地域の山道など、コンパクトなサイズ感が生きる場面は数多い。今回のミゼットXは、そんなシチュエーションで力を発揮できるだろう。

「それこそ“ママチャリの延長”と思ってもらえるぐらい、気軽に使えるユニークな乗り物を作ろうと考えました。今回の展示で私たちのコンセプトを世に問うて、その反応も見ながら今後育てていきたいモビリティです」(田辺氏)

特徴的な外観に負けず劣らず目を引くのが、内部の座席レイアウトだ。今回の展示では、「運転席+後部のチャイルドシート2席」という構成で展示。田辺氏によると「座ったときに、前席の親と後席の子どもの関係が、自転車の前と後ろの関係になるように高さを調整しました」という。狭い室内でも、運転席から振り向いたときに子どもを確認できるよう、シートの横幅を意図的に縮めるなど、親子での利用を前提とした配慮が施されている。

また、内装のドアハンドルには、ボルダリングのホールドのような意匠を採用。「車に乗るのを嫌がる子どももいます。そんな子でも楽しんで乗ってもらえるように、従来のグリップとは違ったアイデアを表現しました」とのことだ。


なお後席のレイアウトは柔軟に変更でき、親子だけでなく大人同士が乗り合うシーンも想定している。さらに、利用者のニーズに合わせてさまざまな形態に変更できる荷台バリエーションを用意し、日々の買い物や送迎、配達業務、さらには移動店舗まで含めた幅広い用途に対応できるように設計した。

今後の製品化を見据えた際の課題について、田辺氏は「衝突安全の基準をしっかりクリアすることが最低限のスタートライン」としつつ、「どの規格で、どういうレギュレーションで展開するかはこれから作り込んでいく」と語った。

軽オープンを継ぐコンセプトカーなど多彩なモビリティが一堂に

展示ブースにはミゼットX以外にも、多彩なコンセプトカーが展示された。軽のオープンカーという独自の領域で人気を博した「COPEN」は、2026年8月下旬での生産終了が決まっている。その現行モデルの精神を受け継ぎ、さらに進化させたのが今回展示した「K-OPEN」だ(読みはいずれも“コペン”)。最大の特徴は、軽自動車でありながらFR(後輪駆動)レイアウトを採用している点だ。「こんな小さいボディでFRを実現するって、とんでもないことなんです」と佐藤社長も強調した。さらに同氏は、豊田章男会長がダイハツのマスタードライバーに就任したことに触れ、新型コペンの開発陣に向けてエールを贈った。

「K-VISION」は、軽自動車の新たなスタンダードを提案する目的で提案されたストロングハイブリッドモデル。同社のロッキーにも搭載されている「e-SMART HYBRID」を、軽自動車用に小型化・軽量化して搭載する想定だ。従来のエンジン&CVTと比較して約20%以上の燃費向上を見込めるほか、災害時には約4日分の外部給電が可能となる。充電不要で電動車の魅力を享受できる、次世代の軽自動車として提案された。


「e-ATRAI(アトレー)」は、ラストワンマイル輸送を支える商用BEV。約200kmの航続距離を確保し、外部給電にも対応。両側パワースライドドアなどの装備も備え、営業車や配送車としての利用だけでなく、広い室内空間を生かした店舗利用や、車中泊にも対応できるレジャー用途も見込んでいる。今回の展示では「e-ATRAI STICKER FACTORY」と称して、外部給電でステッカー作成設備を稼働させ、ノベルティとして配布していた。

「KAYOIBAKO-K」は、トヨタ「KAYOIBAKO」の軽自動車版コンセプト。AIを搭載し、完全自動運転を実現する新世代の軽商用車として提案された。物流用途に加え、地域インフラとしての役割を担う想定だ。トヨタが提案したように、パーソナルモビリティとの連携も期待したいところだ。


モビリティサービスが多様化する昨今、ダイハツのように「小さなモビリティ」に特化した展開は、独自のポジションを築ける可能性がある。都市部でも地方部でも、小回りが利き多彩な用途を持たせることで、さまざまな社会課題へのソリューションとなりうる。大型化、高機能化が進む自動車業界において、あえて「小さく作る」ことにこだわり続ける同社のチャレンジは、モビリティサービスの現状に一石を投じる提案だと言えるだろう。

(取材・文/和田翔)

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