神戸市 自動運転・AIを駆使して 地域に根付く移動サービスを
2018/1/10(水)
実証実験での説明内容、試乗会の内容
今回の実証実験の目的は、高齢化の進む地域社会においてラストマイルの移動手段の確保という前述の課題に対して、自動運転技術が住民のニーズを満たせるのか検証することであると言える。また、神戸市長・久元喜造氏によると「実験実施場所である神戸市北区筑紫が丘の自治会をはじめとした地域住民も参加した産・学・官・民が連携した取り組み」であることが述べられている。当実験が住民主体となって行われることは先にも述べたが、この点は他の実証実験と比しても非常に特徴的な点である。さらに会見において言及された当実証実験の3つの特徴をまとめると、他に類を見ない「民」の積極的な関わりが見えてくる。まず1点は、走行ルートがニュータウンの中、つまり住宅地内であるという点である。他の実験では観光地や過疎地などであることを考えると、より多くの住民に利用してもらうことで、地域住民のニーズに応えることができるかを検証しようとする意図も見えてくる。次に、運行期間が2カ月と長期にわたる点も特徴的である。これは最初の3週間(11月7日~28日)は路線バス型の定ルート走行型移動を行い、最後の3週間(12月4日~24日)はオンデマンド型の呼出走行型移動を行うという、大きく分けて2つの期間を設けていることも理由ではあるが、自動運転の実証実験にここまで長期間費やす例はあまり見られない。
最後に、実証実験車両が地域住民の生活に沿って利用されるという点も極めて珍しい。当実験は筑紫が丘の住民であれば、原則誰でも利用することができ、住民の日々の買い物や郵便局などエリア内の公共施設への移動といった日常的な用途で利用することも可能である。以上の特徴を見るに、「民」のニーズが色濃く反映されていることがわかる。
試乗会の様子
発表会当日は会見登壇者や報道関係者向けに乗車体験会が行われた。体験会は1周約10分のコースであり、自動運転区間はその内約2分(約350m)となっていた。実証実験における運行ルートより大きく短縮されていたものの、自動運転区間においては最高速度20km/hで走行し、右左折も自動で行われた(ドライバーによる安全確認の必要あり)点は実際の定ルート運行と同じ条件であった。群馬大学の次世代モビリティ社会実装研究センター・副センター長である小木津武樹氏によると、「レベル4(一般車混在下での無人走行)を目指したシステムであり、今回の定ルート全ての区間で自動走行が可能となっている。ただし、運用上ではレベル2(運転手の監視下での有人走行)で実施している」とのこと。同氏は「多くの右左折や狭路を含む道路で安定走行を実現」した点を大きな成果として触れた一方で、最も特徴的な点は「住民の『ここに移動したい』というニーズを起点としてシステムを開発した点」であるとも述べた。さらに、国内初の取り組みとして「教育プログラムによる運転者教育の実施」を挙げ、開発者などが運転する場合が多い従来の方法とは異なり、「現地で実証実験の運転者を募り教育する試み」についても説明された。これらの点からも地域を意識した取り組みを行っていることが窺える。
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