自動運転の最新動向 ~クルマの基準作りからみた世界の動き~ 国土交通省
2017/11/28(火)
自動運転はなぜ必要なのか
では、なぜ自動運転は必要なのでしょうか。一番大きな理由は、交通事故の原因の96%が運転者によるものだからです。交通ルールを守って前の環境をちゃんと見て走っていれば事故の大半が防げると考えています。運転者のミスがなくなるような技術があれば、劇的に交通事故を削減でき、高齢者の移動支援につながるのではないかと思います。また、加減速をうまく行い、スムーズな運転が行われれば、渋滞を減らすことにもつながります。日本という立場からすれば、このような新しい技術に対して世界に先駆けたトップランナーの技術を持っているので、きっちりと世界に広めていくことで国際競争力の強化にもつながる側面があります。
自動運転のレベル分け
そもそも自動運転とは何なのでしょうか。よく間違えられるのが、自動運転=人の乗っていない無人運転だという考え方です。しかし、もう少し前段階の自動運転として、SAE※はレベル1~4の定義を提案しています。レベル1は、自動で止まることや、前のクルマに付いて走ること、車線からはみ出さないことなどの技術が1つでもあれば該当します。これを組み合わせたものがレベル2です。例えば、車線を維持しながら前のクルマに付いていったり、遅い車がいれば追い越したり、高速道路の分合流を行うことも該当します。
さらに信頼性を上げていくと、これまで運転者が責任を持って運転していたものを、自動運転が代わりに行える状態になります。運転者が監視したり運転操作に介入しなくてもシステムが責任を負い、システムに運転を求められた場合だけ運転するのがレベル3です。
完全にハンドルやブレーキ、アクセルがないクルマになり、運転手は寝てても何をしてても良いというのがレベル4となります。アメリカの運輸省ではレベル5まで定義していますが、少し細かくしているだけで内容はあまり変わりません。
※SAE:Society of Automotive Engineers
国際自動車技術会と約される、モビリティ専門家を会員とするアメリカの非営利団体。自動車についての標準規格の開発を進めている。
自動運転の現状
実際に道を走っているクルマはどうなっているのかというと、車線を維持したり自動でブレーキをかけたりするなどの機能が1つだけ付いている状態です。この技術はすでに実用化されています。ちょうど今出始めているのがレベル2です。セレナのプロパイロットやベンツのEクラスなどが該当しますが、基本的には高速道路でのみ使用可能です。歩行者がいない、信号がない、交通標識が何もない非常に単純化された道なので、自動運転がやりやすいのですが、2020年頃までに追い越しや分合流もできるクルマを出すことをメーカーは考えています。もう1つの自動運転の方向性が、限定した空間でも良いので無人移動走行サービスを提供するというものです。こういった構想は主にIT企業から出てきます。過疎地で人がいない地域で、少しでもいいから移動サービスを提供できないかという構想ですが、まだ自動走行できるクルマはありません。EasyMile※などがありますが、私有地などを走っているにすぎません。2020年のオリンピックのときにそのようなクルマを走らせられるように制度をつくっていくことを考えています。
10年以上先になると、完全自動運転のクルマが走れるようになるということが考えられます。しかし、まだたくさんの課題があります。例えば、クルマが事故を起こしたら誰が責任を取るのか、あるいは事故時にどういう補償ができるのかということです。また、クルマとしてどのような安全性能が必要なのか、これから議論していかなければいけません。
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