自動運転の最新動向 ~クルマの基準作りからみた世界の動き~ 国土交通省
2017/11/28(火)
自動運転をめぐる国内の動き 日本政府の自動運転に対する取り組み
このように課題をたくさん抱える中で、日本政府が取り組んでいることは2つあります。戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と、経済産業省との連携で行っている自動走行ビジネス検討会です。SIPでは、学識経験者や自動車メーカー、部品メーカー、関係省庁が集まり、自動走行システム推進委員会としてオリンピックに向けてどんなことができるのかなどを検討しています。自動走行ビジネス検討会では、自動運転を使いどんなビジネスモデルが成り立つのか考えており、現在3つの実証実験をやっていこうと考えています。1つは隊列走行です。高速道路で、先頭の車両のみドライバーを乗せて、後続の車は通信を用いた電子連結という形で隊列走行を実現しようとしています。2つ目はラストワンマイルの自動走行です。最寄りの駅から家までなどの限られたエリアで、遅い速度でも良いので人手のかからない移動手段を確保することを考えています。もう1つは、大きい郊外型のショッピングモールなどの駐車場で自動で駐車することを考えています。
自動運転に向けた技術の整備
これに関連した取り組みとして2つお話させていただきます。1つは平成28年3月にガイドラインが策定された、ドライバー異常時対応システムです。ドライバーが心臓発作などで気を失ったときに大事故にならないように、ドライバーが自分でボタンを押したり、乗客が運転手の異常を感じボタンを押すことで、クルマを自動で止めて、周りに警告するというシステムの研究開発を進めています。もう1つは自動車アセスメントです。これは20年前から国土交通省で行っていますが、クルマをぶつけたとき、中の人(人形)への衝撃を208点満点の点数で評価するというものです。ここ2、3年は自動ブレーキの評価がおこなわれており、今年からは人の飛び出しをどれぐらい検知できるのかも評価しています。システムには、人を検知しないものや、速い速度で走行していると検知できないものもありますので、そのような性能がどれくらい高いのかという試験も行っています。
このような国内の動きをまとめると、図6のようなロードマップになります。
自動運転をめぐる国際的な動き 国際的な自動運転の必要性
自動運転の国内での状況はこれまでの通りですが、同時に大切なのが国際的な基準をつくることです。例えばトヨタやホンダが自動ハンドルをつくったとしましょう。これは国内では自由に売ることができますが、ヨーロッパへ輸出しようとすると、国連の基準があるから売ることができません。これをなんとか売れるように、現在一生懸命、自動ハンドルの基準をつくろうとしています。そもそも日本車というものは、日本国内で走っているのは全体の2割にすぎません。8割が外国で走っています。日本メーカーは、国内での生産は4割ほどで、海外での現地生産が6割です。日本でつくっているものの半分は輸出いるので、日本のメーカーのブランドのついたクルマは世界中で走っているのです。
このような状況の中で、日本の中だけで基準をつくっていても仕方がないので、国際的な基準をつくっていくことが重要です。
国際的な動向の中でリーダーシップをとる日本
このような動きの中で、変なルールを決めて日本が損しないようにすることだけは念頭に入れて動いています。これは、オリンピックで行うスポーツに例えると分かりやすいかもしれません。自動運転は、いろいろなところでプロモートしたり、国が支援策を行ったり、実証実験の場所を提供することもあります。
オリンピックでいうと、選手の育成にかなり近いのではないかと思います。選手の育成に、国が補助金を出すことは自動運転への支援と同じで、ナショナルトレーニングセンターを設置するのは実証実験の場所を用意することと同じです。
では、自動運転の基準をつくることは何なのかというと、試合のルールを決めることだと思います。オリンピックで欧米に有利なルールのときに日本が勝つとすぐ変えられるなどといわれますが、そういうことにならないように、自動運転の分野で基準調和の活動は非常に大事だと思っております。
9月に軽井沢で行われたG7国土交通大臣会合でも、自動運転が大きく取り上げられました。メーカーの方を呼んだり、自動運転のデモンストレーションに世界各国の人を乗せたりしました。世界中で関心の高い事項で、誰がリードしていくのか競争になっています。
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