三菱電機の考える自動運転 準天頂衛星によるセンチメートル級の自車位置測定が可能に
2017/12/26(火)
自律型・インフラ型の自動運転
三菱電機の自動運転技術を搭載した開発車両「xAUTO」。この車両を使った自動運転は、自律型とインフラ型(協調型)を組み合わせたものを考えているという。例えば、天候が良く白線がしっかりと確認できるような良い環境であれば、レベル2の自動運転は自律運転が可能である。しかし、夜間、雪、霧などの周囲の環境が認識できないような場面では、自律型のみで自動運転を行なうことが難しい。そういった場合に、高精度の地図や衛星測位などインフラを利用することで、自動運転をすることができる。また、今後レベル3以上の自動運転を行う際には、自律型とインフラ型が相互に監視することにより、安全を確保することを目指すという。三菱電機の自動運転を支える最大の特徴が準天頂衛星を使った高精度な位置把握だ。センチメートル級の自車位置測定が可能となり、自動運転に多大な貢献をもたらす。2016年から実環境下で300時間を超える実証実験を行っており、今後はSIPの大規模実証実験に参加し、高精度地図を用いた実証を行っていくという。
準天頂衛星を利用した位置測定技術
三菱電機は、準天頂衛星「みちびき」の製造を担当している。これにより、高精度の自車位置測定が可能になる。準天頂衛星による測位と、GPSなどのシステムとは何が違うのか。
GPSはGlobal Position Systemの略で、アメリカが運用しているGPS用の衛星を利用して現在地を測位するシステムだ。仕組みとしては、3つのGPS衛星からの現在地まで距離を測るというもの。3点からの距離が同じになる点は1点しかないという非常にシンプルな計測方法だ。しかし、衛星からの信号を受信する受信機に搭載されている時計はあまり正確でないため、衛星が距離を計測した時間と受信機の時間の誤差により、ずれが生じてしまう。これを補正するために、4つ目の衛星と正確な時間を合わせる必要がある。このため、GPSでの測位には最低4機の衛星が必要となる。
しかし、これでもズレが生じてしまうことはある。日本は、もともと山がちな地形であることに加え、高層ビルなどが乱立しているため、衛星からの信号到着に時間がかかってしまう。このズレを少なくするために登場するのが準天頂衛星だ。これは、日本の真上を通るような軌道に衛星を置き、測位信号を送信することができる。しかし、1機が日本の真上に位置できる時間は7~9時間程度であるため、常に日本の真上に衛星を置くためには最低でも3機の運用が必要となる(常に真上にいないことから「準」天頂衛星と名付けられた)。
しかし、上空の電離層を通過するときに電波信号が減速してしまうことなど、さまざまな要素によりズレは生じてしまう。これを補正するため、国内の測量の観測点である電子基準点を元に、衛星からの信号のズレを修正し、準天頂衛星を経由し受信側の端末に送信することができる。これがCLAS信号(Centimeter Level Augmentation Service)だ。この信号を受信するには専用の受信機が必要になる。
三菱電機は、この受信機や高精度地図を内蔵した高精度ロケーターを開発し、CLAS信号を用いた自動運転の実証実験を9月から高速道路で開始している。
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