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特集【アフター万博】Osaka Metroが振り返るe Mover・舞洲P&Rシャトルバス運行の舞台裏

2025/10/31(金)

万博のシンボル「大屋根リング」とe Mover

万博のシンボル「大屋根リング」とe Mover

2025年大阪・関西万博は10月13日に閉幕を迎え、「アフター万博」の行方に注目が集まっている。Osaka Metroは会場内外周バス「e Mover」や舞洲万博P&R駐車場シャトルバス(以下、舞洲P&Rシャトルバス)の運行を通じて、万博会場へのアクセス向上と来場者の快適な移動環境実現に寄与した。

本記事では、交通事業本部 万博輸送管理センター 自動車輸送部長 本多賢丈氏とバス運行管理担当課長菅原鉄幸氏に、万博の振り返りや運用で得られたノウハウ、今後の展望について話を伺う。

■EV・自動運転など先進技術で利便性と実証実験を両立

Osaka Metroは、来場者のアクセスと会場内移動を支える交通施策として、会場内外周バス「e Mover」と舞洲P&Rシャトルバスの2軸を並行して運用した。どちらもEVや自動運転といった新技術を導入した次世代の交通システムで、利便性向上と実証実験を兼ねている。


e Moverは全車両が小型のEVバスで、西ゲート北ターミナルからリング西ターミナルまで、会場内の外周に沿ったルートを運行。万博のシンボル「大屋根リング」の真下を通過する景色は圧巻で、SNSでも反響を呼んだ。

また、自動運転バスも運行しており、運転士が乗車した自動運転レベル4相当にて走行した。車内では、自動運転技術の紹介動画や制御システム画面、運転士の手元を映像で提供。万博の全体方針に沿い、チケット購入には完全キャッシュレス決済を導入した。1日乗り放題券を購入した際にもらえるリストバンドは、Osaka Metroの9路線カラーという隠れ要素もある。

停留所では、デジタルサイネージを用いて、走行中のバスの位置情報や運行情報を発信しており、係員が画面を活用し、来場者に案内する場面も見られた。


一方、舞洲万博P&R駐車場と会場を結ぶシャトルバスは、全車両で大型のEVバスを採用。自動運転バスも運行され、舞洲AB駐車場及び一部公道区間において、自動運転レベル4認可を取得した。自動運転レベル2区間があるため運転士は乗車しているものの、将来の無人運行を見据えて遠隔監視センターを設置。車内外の映像や車両位置情報といった遠隔監視の実証実験も実施された。


その他にも、夢洲駅改札内に設置した大型LEDビジョンが2025年度デジタルサイネージアワード優秀賞を受賞し、話題となった。歴代車両やOsaka Metroの軌跡を紹介する「Osaka Metroの世界」と夢洲駅デザインコンセプト「移世界劇場」の世界観を表現する「夢洲駅デザインの世界」の2作品を放映。Osaka Metro各部門のPRや広告の放映と合わせて、万博の玄関口を盛り上げた。

いずれも多くの来場者に利用され、大盛況のうちに幕を閉じた。来場者は移動の利便性向上を実感するとともに、EVや自動運転、デジタル案内といった先進技術を身近に感じる機会となった。万博のテーマである「未来社会の実験場」を体現する取り組みとして幅広い注目を集め、その経験や成果は、これからの交通・モビリティの在り方を考える上で貴重な示唆を与えている。

■現場が語る「万博の舞台裏」

Osaka Metroの本多氏(左)と菅原氏(右)

Osaka Metroの本多氏(左)と菅原氏(右)


――e Moverや舞洲P&Rシャトルバス運行について、当初の狙いは。
本多氏:地下鉄やバスの運行を充実させることで、万博来場者の円滑な輸送に貢献したいと考え、主体的に取り組んできました。当然、万博だけで終わるのではなく、これを契機にEVバスや自動運転の導入など、未来に向けて交通輸送を充実・発展させていくこととしています。

菅原氏:e Moverは自動運転などの技術的実証も狙いの一つです。舞洲P&Rシャトルバスは、日本初の大型車での公道における自動運転レベル4認可を受けており、運行で得られた知見を自動運転の社会実装に役立てたいと考えています。また、万博という場でお客様に未来の技術を体験してもらい、社会的受容性を高める目的もありました。

インタビューに応じる本多氏

インタビューに応じる本多氏


――実際に運営しての感触はいかがでしたか。
菅原氏:当初、e Moverは会場内移動の利便性向上を主な効果と見込んでいました。ところが、会期が進むにつれ、大屋根リング下を走行する車窓からの迫力や海辺の景色をご好評いただき、徐々に移動手段から一つのアトラクションに変化していきました。走行中のe Moverと大屋根リングをセットで撮影している方を見かけた時はすごく嬉しい気持ちになり、万博の一部に我々が入り込めていると感じました。

SNS上では、1日乗り放題のリストバンドがOsaka Metroの路線カラーだと気づく方も結構いて、それも嬉しい反応でした。

――万博を作り上げていく上で、どのような苦労がありましたか。
菅原氏:舞洲P&Rシャトルバス運行では、天候や他イベントの影響で、想定外の時間帯に混雑が発生することもありました。運行にあたっては、バス事業者だけではなく、停留所係員や万博協会など多くの関係者と連携が必要な中、お客様をお待たせしないよう、時々刻々と変化する状況に短時間で対応しなければなりませんでした。

――万博でどのようなノウハウが得られましたか。
本多氏:万博のような、大規模かつ184日間にもわたる長期イベントでバスを運行するのは初めてでしたが、駐車場とイベント会場を結ぶバスの運用や過密なダイヤ運行といったノウハウを蓄積できました。このノウハウを活用することで、各種行事やイベントの際に効果的なバスの運用を実現したいと考えています。例えば、花火大会では周辺道路が混雑することから、会場と駐車場を結ぶシャトルバスの運行などを検討したいです。

菅原氏:今回の万博では、完全キャッシュレスが導入されました。通常、鉄道やバスは現金でご乗車いただけるため、交通系ICをはじめ、クレジット決済やQR決済、電子マネーと幅広く決済手段を用意しました。会期が始まると、お客様から現金を使いたいといった声はなく、皆様キャッシュレスに前向きだった印象です。一番利用が多かったのは交通系ICでしたが、クレジット決済も駅の改札利用と比べてe Moverではご利用が多く、今後のニーズや利便性の潜在力を感じました。

■2035年に向けた展望と都市型MaaS構想「e METRO」

Osaka Metroが目指す2035年度の姿(出典:Osaka Metro Webサイトより)

Osaka Metroが目指す2035年度の姿(出典:Osaka Metro Webサイトより)


――万博での経験を踏まえたこれからの事業展開は。
本多氏:路線バスは2035年度までに全てEV化を目標としています。航続距離や充電設備など課題はありますが、万博で得た知見を活かして導入を推進します。また、自動運転は今後、慢性的なバス運転士不足の課題解決につながるものと考えています。

菅原氏:現在、当社が進めている都市型MaaS構想「e METRO」の一つに、オンデマンドバスの社会実装があります。他にもOsaka Metroが2035年に描く未来像には、カーボンニュートラルの促進や万博のレガシーを活かした夢洲開発、さらに空飛ぶクルマも新しい移動の選択肢として描かれています。

これらサービスの中心としてつなぐのが、e METROアプリだと考えます。交通のほか、生活サービスを融合したワンストップサービスを目指します。

――Osaka Metroが描く未来の交通とは。
本多氏:鉄道やバス、オンデマンドバス、タクシー、シェアサイクルなどのモビリティを組み合わせ、目的地までスムーズに移動できるよう、移動サービスの充実を図ります。さらに、生活と交通をマッチングさせて、大阪市内外からお客様を運び、街の活性化につなげていきます。これらを通じて、都市型MaaS構想「e METRO」の実現を目指す方針です。

――最後にメッセージをお願いします。
本多氏:万博を契機に新たな交通・モビリティにチャレンジしています。まずOsaka Metroの取り組みをご理解いただき、未来に向けて皆様と一緒に進めていければと思います。

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