ニュース

Osaka Metro×WHILLで創出する新たな交通ネットワーク、都市型MaaS実現へ前進

2022/3/14(月)

天王寺駅周辺でWHILLに乗る様子(提供:Osaka Metro)

天王寺駅周辺でWHILLに乗る様子(提供:Osaka Metro)

大阪市高速電気軌道株式会社(以下、Osaka Metro)は2021年12月にWHILL株式会社(以下、WHILL社)と共同で、近距離モビリティ「WHILL」を活用したシェアリングサービスの実証実験を行なった。
Osaka Metro交通事業本部MaaS戦略推進部 サービス連携課の岩城雛氏とWHILL社日本事業本部 営業部部長の岩垣大佑氏に、今回の実証実験についての振り返りや今後の展開について話を聞いた。

天王寺駅を中心とした近距離移動をサポート

今回の実証では、2021年12月6日から12月15日まで、Osaka Metro御堂筋線・谷町線 天王寺駅で、近距離モビリティ「WHILL」を活用したシェアリングサービスの実証実験を行なった。
今回の実証地となった天王寺駅は、駅周辺に天王寺動物園や通天閣、あべのハルカスなどの施設が多数点在しており、近隣住民だけでなく買い物や観光などを目的に、常に多くの人が利用する主要駅だ。

駅構内の出入り口付近にWHILLを3台設置し、1回あたり最大3時間まで無料で貸し出した。利用時間帯は10時から16時まで。
利用の際は、専用Webサイトまたは現地の受付での予約が必要となる。予約時間に駅に設置した受付に行って機体を受け取り、その後は買い物や観光など天王寺駅周辺の移動に自由に使い、その後、受付に返却する。
またWHILLを利用した人に事後アンケートを行い、その結果から近距離モビリティの需要や利用意向などを検証した。

国内初の「鉄道+WHILL」での実証

Osaka Metroは都市型MaaSの実現を目指し、既存の地下鉄・バスをはじめとして、オンデマンドバスなどさまざまなモビリティを連携させた移動サービスの提供に取り組んでいる。
WHILL社との連携の経緯について、Osaka Metroの岩城氏は「駅からのラストワンマイルの移動手段として様々な交通モードとの連携を検討しているが、鉄道会社として安全面は最も注意を払っていることの1つ。老若男女問わず、誰もが安全に利用できるという観点から、最初のパートナーとしてWHILL社を選んだ」と話す。なお、電動車いす型の近距離モビリティのシェアリングサービスは鉄道事業者では日本初の取り組みだった。
今回の実証で使用した「WHILL Model C2」は、スタイリッシュなデザインと、5cmの段差を乗り越える走破性、回転半径76cmの小回り能力に加えて、直感的な操作性などを特長とした近距離用のモビリティ。
最高速度は前方時速4km※、後方時速2km。一般的な歩行速度とほぼ同等のスピードで進み、歩道内を歩行者と共に移動することができる。乗車時に運転免許が必要ないうえ、操作性が高く、高齢者や長距離の歩行に不安を抱える人を含めて誰もが利用できることから、すでに国内では病院内や空港内の搭乗ゲートなど各地で実証や導入が進んでいる。
※通常は最高時速6km、同実証実験では安全性の観点から時速4kmに制限。
天王寺駅構内にWHILLを設置した様子(提供:Osaka Metro)

天王寺駅構内にWHILLを設置した様子(提供:Osaka Metro)


利用者からは好反応、「高齢者が使うもの」認識に変化

実証期間中の12月6日から12月15日までの10日間で、予約可能な60枠のうち32枠の利用予約が埋まった。利用者の年齢層は20代から70代まで幅広く、男女比はやや男性が多かったものの、ほぼ同等だったという。

この結果について、WHILL社の岩垣氏は「当初は高齢者が使うことをイメージしていたが、実証では年齢を問わず、若い方にも使ってもらえた。また、今までのWHILLユーザーは男性の方が多かったが、今回は買い物目的などの女性の利用も多く、新しいモビリティとしての認知が広がっていると感じられる結果となった」と話す。

今回WHILLを利用した高齢者からは、「孫や娘と体力差なく買い物を楽しむことができた」や「通院にも利用したい」、若い年齢層からは「公園や観光地などを周遊できて楽しめた」という声があったという。

Osaka Metroの岩城氏は「年代によって使用用途は異なるものの、ラストワンマイルの移動において利便性を感じていただけたと考えている。利用前は『電動車椅子=高齢者や足の不自由な人の乗り物』というイメージを持っていた人も、実際に利用することで、色々な人の移動をサポートできる乗り物だと実感し、認識を変えていただけたのが今回の成果だと感じている」と振り返った。

WHILL実装時の鍵は省人化

利用者への事後アンケートでは「便利だった」という好意的な回答が大半を占めていた。しかし、中には「WHILL乗車時の周囲からの視線が気になった」など、ネガティブな意見も数件あったという。
Osaka Metroの岩城氏は「電動車いすは高齢者が乗るものという、先入観の解決は課題の1つだと感じた。この認識のハードルを下げ、利用者が自分に合ったモビリティを自由に選択できるようなサービスを目指していきたい」と語った。
また今回の実証ではスタッフ3名が受付に常駐して機体の貸し出しや操作説明などの対応をした。これに対しWHILL社の岩垣氏は「サービスの実装を考えた場合には、無人貸出システムの導入などオペレーションをいかに省人化できるかが鍵になる。WHILLの操作自体は難しくないので、将来的にはシェアサイクルと同じようなフローで使われる状態にしていきたい」と述べた。

都市型MaaSの実現に向けて前進

今回の実証を振り返り、Osaka Metroの岩城氏は「ラストワンマイルの移動の利用意向と、鉄道と他モビリティをつないだサービス提供への可能性が見えてきた。次は電動キックボードなども試してみたい」と手応えを口にする。
WHILL社の岩垣氏も同様に「鉄道会社との歩行領域の連携においてWHILLが役に立てることがあると感じた。これからさらに高齢化が進み、運転免許返納をする人が増えれば、鉄道移動は増えてくるはず。駅から先の移動に対してWHILLへの期待感はさらに高まってくるだろう。今後は目的地となる百貨店や病院といった他業種とも連携して、行き先とWHILLでの移動をセットで提案するなど、移動自体をデザインしていきたい」と抱負を語った。

「Osaka Metroとしては、2025年の大阪万博に向けて、複数の交通サービスと一人一人のニーズに合わせた生活サービスを都市型MaaSとして1つのアプリで提供できる世界観を目標としている。その実現に向けて、今後は商業施設との連携も進めていきたい」(Osaka Metro岩城氏)
実証期間中は貸出受付にスタッフが常駐した(提供:Osaka Metro)

実証期間中は貸出受付にスタッフが常駐した(提供:Osaka Metro)

get_the_ID : 122795
has_post_thumbnail(get_the_ID()) : 1

ログイン

ページ上部へ戻る