フードトラック事業で沿線価値向上 食で街のにぎわい生む【Osaka Metro インタビュー】
2023/2/7(火)
大阪市高速電気軌道株式会社(以下、Osaka Metro)は、2023年春にフードトラック事業を、大阪の淀屋橋と本町を中心にオフィス街で始める。この事業は、飲食事業者と土地所有者をOsaka Metroが仲介してフードトラックの出店をサポートするものだ。都市型MaaS構想を掲げる同社が提供するMaaSアプリ「e METRO」も活用する。
また、出店サポートだけでなく、直営のフードトラックも展開し大阪のにぎわい創出に貢献する。
今回、出店者と出店場所のマッチングに奔走するOsaka Metro事業開発部 事業開発課の照屋大樹氏(以下、照屋氏)に、フードトラック事業の取り組みについて聞いた。
また、出店サポートだけでなく、直営のフードトラックも展開し大阪のにぎわい創出に貢献する。
今回、出店者と出店場所のマッチングに奔走するOsaka Metro事業開発部 事業開発課の照屋大樹氏(以下、照屋氏)に、フードトラック事業の取り組みについて聞いた。
■目指すは「三方よし」の沿線価値向上
――はじめに、Osaka Metroがフードトラック事業を始める目的や背景を教えてください。大阪市交通局から民営化してOsaka Metroとなり、間もなく5年が経ちます。沿線のにぎわいをどのように創出していくのかというミッションは強く意識している点です。お住まいの、または働いている皆様にとっての沿線価値の向上を図り、大きな目標として大阪の地域経済の活性化につなげたい思いもあります。
様々な事業が考えられる中で、フードトラックに着目した理由は、有楽町の国際フォーラム、丸の内、大手町などフードトラックの出店が盛んな東京と比較すると、台数・認知度から見ても、大阪で盛り上げて拡大していく余地が大きいと感じたためです。
沿線に密着した会社として、フードトラックの認知度を高め、コロナ禍で苦しい飲食店様、いろいろな料理を楽しみたい利用者様、土地所有者様の「三方よし」に貢献したいと事業を構想しました。
■日替わり、できたて多彩な食を提供
――それでは、フードトラック事業の出店・誘致の概要について教えていただけますか?フードトラックをお持ちの飲食店様・出店事業者様と空きスペースをお持ちの土地所有者様をつなぐプラットフォームビジネスが事業の柱です。
具体的には、月極駐車場やビル端の空きスペースといった、トラックが出店可能な土地の所有者様に我々が出店許可の交渉をします。そして、プラットフォームで出店事業者様を募集し、両者のマッチングを行います。当社が販促や情報発信、運営管理もお手伝いします。
また、すでに車両をお持ちの方だけでなく、これから参入をお考えのお客さまに対して、当社とのリース契約で車両をご用意するプランも準備しております。
――出店者は料理の提供と接客に専念できるということでしょうか?
はい。料理の提供とお客さま対応をお願いするイメージです。ただし、場所によって出店できる日時、できない日時がありますので、事前に希望を申請いただく必要があります。
――オフィス街に出店することで事業者、土地所有者、利用者にどんなメリットがありますか?
我々は今、ランチタイム需要を念頭に置いて出店場所の交渉を進めているところです。現地を調べていると、夜のみ営業しているお店の軒先を借りているお弁当事業者や、コンビニで昼食を購入してオフィスで食べる方が多数いらっしゃいます。
持ち帰りの昼食需要は大きく、できたての温かいメニューを提供できるのは、車内で調理ができるフードトラックの利点でしょう。
また、利用者様にとっては同じ場所で日替わりの“食”を楽しめます。出店者様にとっては店舗を構えるよりも投資額が抑えられるため、新しい業態へのチャレンジや新しいお客さまとの接点作りができるというメリットがあります。
――提供するメニューや出店について、どんなメニューを考えているか教えてください。
まずはランチの需要を満たすメニューを中心に取り揃えたいと考えています。
特に若い女性は、先ほどのお弁当事業者と比較して値段が少し高くても、フードトラックで “映える”料理を楽しんでいます。大阪でフードトラックの認知度を高める上では、普段から利用している若い方に“刺さる”メニューが出てくるといいかなと思っています。
また、提供時間が短いというのもキーワードで、お客さまをお待たせしない料理は有力な候補になるでしょう。他にも、健康的かつボリュームのある料理を提供される出店者様と組めたら、Osaka Metroの色を出せるかなと思います。複数の観点から進めていきたいですね。
――日替わりで複数の店舗が出店するのでしょうか?
いろいろな料理を楽しめるという観点からも、平日5日間でしたら1カ所で5事業者様が毎日交替というのが目指す姿かなと思っています。同じ店舗様や同じメニューばかりにならないよう調整する予定です。
――この春から本格的に事業が始まりますが、出店者や土地所有者からどんな反響がありますか?
フードトラックは出店者様にとって投資や準備の負担が少ない一方、出店場所の確保を不安に思う方が非常に多いと聞いています。そこにOsaka Metroがまとまった土地を確保するのでありがたいとの声をいただいています。
土地所有者様は、収益が大きいということではないのですが、街のにぎわいを作るということで、ぜひ協力したいという反応が多いですね。
■2025年度に120カ所の出店目指す
――2023年度は、淀屋橋、本町を中心に20カ所で出店する計画ですが、その後の展望も教えてください。スタートから当面は利便性向上をテーマにしていきます。現在地近くの店舗検索の機能は当初から設ける予定で、さらに23年度内には予約販売・決済、お気に入り店舗の管理、レビュー投稿といった機能のリリースを予定しております。
詳細は検討中ですが、予約販売や決済など、お客さまごとの情報が必要になる機能は「e METRO」アプリに登録している方向けにご提供する形になると思います。
一方で、店舗検索は気軽にランチのお店を探す方にもご利用いただけるよう、アプリのダウンロードや会員登録が不要な形を考えています。Osaka Metroのホームページや「e METRO」アプリの中にフードトラックの検索ページがあり、そこから探す想定ですね。
出店場所に関しては、25年度までに大阪市内120カ所くらいまで広げたいと考えています。
ビジネス街以外でも人通りが多い難波や梅田、大学のキャンパス、単発のイベント会場など食の需要がある場所は積極的に検討したいですね。また、平日・土日を問わず、ニーズを把握しながら柔軟に対応したいと思います。
■直営店で培うノウハウも共有
――Osaka Metroの直営フードトラックも23年度に開始予定です。なぜプラットフォーム事業と同時に直営もするのですか?どのような場所が出店に適しているのか、店舗運営の注意点など、出店者様に共有する上でも手触り感のあるノウハウを蓄積したいというのが大きな理由です。
全体の5%ほどの台数で直営トラックを出して、健康を打ち出したメニューや、大阪の食材にこだわったメニューなど、当社の特色を出せるようお客さまの声を聞きながら運営していきたいと考えています。
また、一人一人のお客さまの顔を見ながらどうすれば喜んでいただけるかを考えたり、ニーズを探ったりするノウハウは、多数のお客さまに均一なサービスを提供する交通事業では蓄積が難しい面があります。当社としては、これから接客を伴う事業をフードトラックに限らず始めていきますので、そのためのノウハウを幅広く活かしていきます。
――接客を伴う事業とはどのようなものを考えていますか?
アパホテル&リゾート<大阪梅田駅タワー>の最上階にレストランOrchid time(オーキッド タイム) by Osaka Metroを、御堂筋線中津駅の近くにスイーツファクトリーカフェMetro Couleur(メトロ クルール)を、それぞれオープンします。Osaka Metroとして初の直営飲食店です。
――最後に、このサービスの利用を検討している出店者や土地所有者にお伝えしたいことはございますか?
フードトラックのプラットフォーム事業を単に始めるだけでなく、売り上げに困っている、新しい挑戦をしたい飲食店様のサポートや沿線の皆様の利便性向上を考えています。最初期の出店ともなりますので、フードトラックに少しでも興味があれば、ぜひお問い合わせください。