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パナソニックはどのような技術を武器に変化の波を捉えようとしているか  

2018/1/17(水)


街をモビリティサービスに合わせて設計する

パナソニックは早い段階からスマートシティ事業に力を入れてきた。2011年から神奈川県藤沢市の同社工場跡地で進めている「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」では、蓄電池やIoTを活用しエネルギーに配慮したまちづくりに取り組む。なかでもEVや電動アシスト自転車を含めたシェアリング、充電バッテリーのレンタルなど新しいモビリティサービスは大きな特徴となっている。こうした日本で培ったノウハウをベースに、米国コロラド州デンバー市では市当局と協力し街全体を省エネ化、効率化する計画「シティ・ナウ」も進めている。

同社は昨年、パナホームを完全子会社化。「A Better Life, A Better World」をスローガンに掲げ、住宅、車載、その他のB to Bの幅広い領域でよりよい暮らしを提案していくという方針は、津賀一宏社長の話でもよく出てくる。水山氏の言葉からも、街づくりを含めた広い視野でモビリティを捉えようという発想がうかがえる。

「まちづくりの一環として、EVコミュータのようなモビリティが生かせる可能性もある。またその一方で、街そのものを新しいモビリティに適した形に設計することで、より早く新しいモビリティサービスを役立ててもらうこともできると思う」

自動車メーカーへコア技術の供給を増やしつつ、こうした自動運転やEV、街づくりを絡めた広い分野で新規事業を生み出し、次の数年間でモビリティ事業を大きく育てていくのが同社の狙いのようだ。

日本の電機産業が培った技術力と創造力が問われる

以前より強みとしてきたインフォテイメント・車載機向けOS分野でも力を抜いてはいない。プラットフォームでは、リナックス「Automotive Grade Linux(AGL)」、アンドロイド「Open Automotive Alliance(OAA)」のそれぞれに対応して標準化を推進。また、コネクテッドカーのセキュリティ分野でも、車両側でサイバー攻撃をリアルタイムに検知・防御しつつ、クラウド側で複数車両から集めた攻撃情報を機械学習によって解析し、更新した防御システムを車両側にアップデートできる新しい防御ソリューションを昨年10月に発表している。

こうした幅広い技術をうまく生かすために今後、何が重要になってくるのか。水山氏によると、これからカギを握ってくるのは様々な分野でのパートナーシップだという。

「いろいろなサービスの可能性を想定できる中で、どれを進めていくかによってパートナーも変わってくる。例えば、過疎という課題に取り組むなら自治体との連携が大きいし、物流サービスといえば運輸のパートナーという話になる。もちろん、そこでカギを握る技術も変わってくる。我々一社でできることは限られているので、できるだけ力のあるパートナーの方々と一緒に挑戦的な目標を達成するためにオープンに連携していきたい」

パナソニックがモビリティ分野でどのような役割を果たすかは、日本の伝統的な電機産業が培ってきた技術力をどう組み合わせ、変化を遂げる業界に生かせるのか、その発想力と創造力が問われる試金石になる。その動向には注目だ。

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