タクシー業界はMaaSでどう変わる?
2018/6/8(金)
つばめタクシーグループは2018年の2月から3月にかけて、公立大学法人公立はこだて未来大学、NTTドコモ、未来シェアと共同で、SAVS(Smart Access Vehicle Service)を活用した「相乗りタクシー」の実証実験を行った。未来シェアのSAVSは、ルートを固定せず需要に応じて乗合い車両を走行させるシステム。スマートデバイスとクラウドプラットフォームをベースとしたアプリケーションが通信し、AIがリアルタイムに車両の最適な走行ルートを決定する。この技術により、需要に即した乗合い車両の配車決定を完全自動で行うことができる。このように、タクシー事業者での配車アプリを使ったオンデマンド配車の実証実験や需要予測の取り組みも増えている。
神奈川県タクシー協会では2018年4月からDeNAとAIを活用した次世代タクシー配車アプリ「タクベル」のサービスを開始した。乗務員専用端末とセットで、タクシーの配車をスムーズに行えるサービスで、今夏には神奈川県全域でのサービスを展開する。乗客は、アプリで予想到着時間を事前に確認し、指定の場所へタクシーの配車依頼を行うことができる。周辺を走行中のタクシーがリアルタイムに可視化されて表示されるため、空車走行中のタクシーを簡単に確認することができる。神奈川県内182事業者のうち82事業者の導入が決定している。近年、横行している白タクライドシェア対策として、タクシーサービスの高度化を進めるために導入検討された同サービスだが、アプリでの配車はMaaSの世界にもつながっていく。
5月には、ソニーがグリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ、東都自動車、日の丸自動車のタクシー会社7社と、「みんなのタクシー株式会社」を設立。ソニーは新会社に対してタクシーの需要予測などに向けたAI技術などを提供し、タクシー会社7社は、会社の枠を越えて配車サービスなどを活用するという。神奈川県タクシー協会の事例にも見られるように、今後は会社の枠にとらわれずに、配車サービスなどでタクシー事業者同士が協力し合う事例も増えてくるだろう。
「UBERアプリ」、マイカー有料運送など新しい取り組み続々と
関西では、今夏より、注目の取組みが始まる。淡路島で米国の配車大手ウーバー・テクノロジーズの配車アプリを活用したタクシー配車の実証実験が開始される。実証実験は兵庫県淡路県民局が主体となり、淡路島のタクシー会社、全12社に参画を促す。タクシー事業者には「UBERアプリ」を搭載したタブレットが導入され、利用者はスマートフォンの「UBERアプリ」を使って配車可能なタクシーを選択して利用する。実験は、2019年3月31日まで行われる。
また、兵庫県の養父市では5月26日から国家戦略特区による道路運送法の特例を活用した新たな自家用有償旅客運送事業「やぶくる」が開始された。地域住民がドライバーとなり、自家用車で有料運送を行う。全但タクシー、あいあいタクシー、丸八観光タクシーのタクシー会社の他、観光協会や地域住民、行政らが立ち上げたNPO法人マイカー運送ネットワークが運営する。
スマートフォン上のアプリですべての移動サービスを提供するというMaaSの一つの定義の中では、移動したいというユーザーのニーズにオンデマンドで応えることは必須となる。アプリを使ったオンデマンド配車や乗り合いサービス、他の交通事業者との連携など、新しいサービスがタクシー業界をよりMaaSの世界に近づける。