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【大阪・関西万博】ティアフォー加藤氏が描く「未来の道筋」リニア中央新幹線をテーマに議論

2025/6/6(金)

万博テーマウィークスタジオでのティアフォー加藤氏(写真提供:JR東海)

万博テーマウィークスタジオでのティアフォー加藤氏
(写真提供:JR東海)

2025年5月、大阪・関西万博のテーマウィーク「未来のコミュニティとモビリティ」において、地球規模の課題解決を探るさまざまなプログラムが催された。

その1つであるトークセッション「リニア中央新幹線がもたらすインパクトの最大化~リニアで未来はどう変わるのか?~(主催:JR東海)」では、交通インフラを超えた社会変革の可能性について、各界の専門家たちによる活発な議論が展開された。

当記事では、ティアフォーの代表取締役CEOを務める加藤真平氏(以下、加藤氏)の発言に焦点を当て、モビリティ分野との接点を探っていく。
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■災害大国日本における「二重系化」の意義

議論の出発点となったのは、日本が直面する災害リスクへの対応だった。現状では1日平均で約40万人が利用する東海道新幹線が「日本の大動脈」として機能している。しかし、南海トラフ巨大地震の発生が想定される中、この単一の輸送ルートに依存するリスクが指摘された。

2034年以降に品川~名古屋間の開業が見込まれるリニア中央新幹線は、路線の86%がトンネル区間で構成されている。地中深くを走行するため、地震の揺れによる影響を受けにくい。また、超電導磁石により10cm浮上して走行するため、地震に遭遇した際の安定性も高いとされる。加藤氏は、「(東海道新幹線とリニア中央新幹線で輸送ルートを)二重系化することで、安全性が一気に向上する」と、インフラにおける冗長性の大切さを強調した。
※品川~名古屋間の割合

■移動時間の短縮で巨大都市圏の形成へ

リニア中央新幹線は最高時速500kmで、品川~名古屋間を最短40分、品川~大阪間を最短67分で結ぶ見込みだ。従来の新幹線と比べて大幅に時間を短縮できることで、大きな経済効果を生み出すことも期待されている。

加藤氏は時間短縮の革新性について、「40分、67分という時間で移動できるようになると、(リニアの車内で)ミーティングを始めたころは東京にいて、終わる頃には大阪に着いている、なんてことも実現できる」と具体的な利用シーンを描いた。単独でも強力な都市圏が結ばれることによる相乗効果は計り知れない。

また、交通部門の脱炭素化における鉄道の環境優位性についても要注目だ。国際機関や国内の省庁のデータを参照しても、自動車や航空機と比べ、鉄道のCO2排出量は極めて低い。加えて、電力供給の脱炭素化が進展すれば、さらなる環境負荷の軽減が期待できる。

品川駅高輪口に設置された大型看板

品川駅高輪口に設置された大型看板


■技術統合力に見る日本の競争優位性

議論の中で、「日本企業の技術統合力」に注目すべきとの意見も出た。リニア中央新幹線の開発・実装においては、JR東海グループのみならず、日立や三菱重工など、さまざまな企業の最先端技術を結集させ、計画を進めている。

加藤氏は日本の鉄道に関する優位性について、「鉄道インフラは『作って終わり』ではなく、その後のオペレーションも重要。日本はオペレーション込みで考えると必ず強みを発揮できる」との見解を示した。例えば「世界一正確」と言われる鉄道ダイヤがその強みを代表するものだろう。

この観点から加藤氏は、一つの方向性を提案。「圧倒的な強みがある日本のモビリティ領域に集中して投資を行えば、局所的な競争では誰も太刀打ちできない強い国になれる。一方でAI領域などでは、コモディティ化されたものをうまく活用していけばいい」と、日本独自の競争戦略の必要性を語った。

国際展開の観点では、次回の万博開催地がサウジアラビアで行われ、その後はグローバルサウスへと移行する可能性も指摘される。そんな中、日本の統合的なモビリティシステムを世界に発信するチャンスも期待したいところだ。加藤氏は「社会課題の解決と競争力のある産業をパッケージ化して海外展開できれば、真の競争力強化になる」と述べた。

■若い世代に向けたメッセージ

セッションの最後で加藤氏は会場の若い参加者に向けて、「超電導は最初何に使えるかわからない発見だったが、ここまで来た。今勉強していることも将来化ける可能性がきっとある。今日ここで話した内容も将来どんどん実現していくし、その未来を支えるのはここにいる皆さん。今日の場が、未来を支える皆さんの役に立てれば」とメッセージを送った。

1970年の大阪万博でリニアの模型が展示されてから55年、その技術がついに実現しようとしている。リニア中央新幹線は交通機関の枠を超えて、日本の社会構造、産業競争力、そして人々の生き方そのものを変革する可能性を秘めている。その実現には技術開発だけでなく、多様な人材の結集と新たなガバナンスシステムの構築が不可欠だ。

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