コウノトリの郷で住民がつくる地域の足 豊岡市の「持続可能」な公共交通サービスとは?
2019/1/31(木)
少子高齢化などを背景とした公共交通の廃止・縮小によって、中山間地域をはじめとした地方には、日々の買い物や通院にさえ移動不便を抱える住民が多く生活している。当記事では、地域が抱える移動課題の解決に向け取り組む、兵庫県豊岡市の事例を紹介する。地域の課題を解決する、地域に合った取り組みを探る。「みんなで作る地域に合った移動の仕組み」sponsored by トヨタ・モビリティ基金。
兵庫県北東部に位置する豊岡市。国指定天然記念物であるコウノトリ野生復帰の取り組みや、日本有数の温泉地である城崎温泉で知られ、年間400万人以上の観光客が訪れている。一方、地域住民の生活に目を向けると、路線バスの撤退などを背景に多くの交通空白地域を抱えている。既存交通網の限界を迎えていた豊岡市は、公共交通サービスを確保するため、地域の実態に沿った「持続可能」なモデル構築に取り組んでいる。豊岡市 都市整備部 都市整備課 交通政策係 主幹・瀬崎 晃久 氏と同所属・山内 夢斗哉 氏に詳細を伺った。縮小する路線バス 豊岡市の選択は?
から約10年前、豊岡市でバス路線の休止が相次ぎ、従来の交通体系では市民の足の確保が困難になった。交通弱者への移動支援を早期に構築することは、喫緊の課題となっていた。このような課題を前にして、豊岡市は地域の需要や特性に応じた移動サービスづくりに取り組むことを選択した。市街地循環バス「コバス」と、市街地と地域拠点を結ぶ路線バス(全但バス)を中心とし、市営バス「イナカー」と住民が中心となって運営する「チクタク」が地域の移動を支える、新たな交通体系を構築した。「イナカー」は、市の委託を受けた民間事業者が運行する、いわゆる白ナンバー車両による移動サービスだ。廃止された路線の沿線住民の移動支援を主な目的としている。地域が主体となって運営する「チクタク」は、さらに市街地から離れた交通空白地域での移動を目的としたサービスだ。「チクタク」は利用者ニーズに応じた細かい行先設定が可能で、運転手をはじめ、運行管理者や事務員も地域で確保する。ダイヤや停留所も地域で決定し、ラストマイルの移動課題を解決する身近な移動手段となっている。また、路線の設定は地域の学校の校区を基準にしている。スクールバスの運行も見据えてのことだが、高齢者だけでなく子どもたちの移動の足を守るという意識を地域全体で共有することが重要になる。
住民にとって「イナカー」と「チクタク」は廃止されたバス路線の穴を埋める、なくてはならない存在だ。また、「イナカー」と「チクタク」のスキームは連動しており、「イナカー」の需要基準を満たさなければ、「イナカー」よりさらに小規模な「チクタク」への移行を検討する。いわば、「チクタク」は「地域の最後の公共交通サービス」という位置づけになる。