「自分たちごとを育む移動の拠点、鳥羽駅 実践アイディアコンペ」第一次審査会レポート【寄稿:AMANE】
2025/6/27(金)
三重県・鳥羽駅周辺のモビリティと都市計画のアイディアを募る「鳥羽駅 実践アイディアコンペ」が開催され、5月31日、一次審査の通過者と地域の人々によるワークショップが鳥羽市内で行われた。周辺に海と山が広がる鳥羽駅の特徴を生かした移動と建築を考え、鳥羽の未来を拓こうとの試みで、7月5日(土)には、最終審査会が行われる。LIGARE運営元の関連会社で、モビリティ・まちづくり関連のコンサルティングと事業開発を行うAMANEの佐藤和貴子はコンペの審査員を務める。地方の移動と都市計画を再設計するコンペについて寄稿を受けた。
若者、市民が移動とまちを「自分たちごと」と捉える
コンペは、テーマを「自分たちごとを育む移動拠点、鳥羽駅」とし、35歳以下を対象に、鳥羽駅とその周辺を「鳥羽市民や来訪者が自分たちの場所」だと感じられる提案を募集した。コンペ詳細
「実践アイディアコンペ」という名前は、通常の建築設計コンペとは異なり、多様なアイディアをもとに「鳥羽市民が駅のあり方について主体的に考える機会を創出する」という目的に由来する。全国で少子高齢化が進む一方で、地方を訪れる観光客や長期滞在者、移住する人が増えている。こうした状況のなか、地方都市の駅の在り方について広く議論を喚起することも、狙いとしている。
コンペ開催の背景には2024年度に始まった鳥羽駅前の再開発構想がある。鳥羽市が主体となって推進するこの構想は、駅からフェリーターミナルのあいだの駐車場が目立つエリアを対象としており、2033年度の一部開業を目指している。関係者による検討部会が設置され、議論が重ねられているなかで、「より未来を見据えた多様な案を届けていこう」というのが、このコンペの主旨のひとつだ。
大胆なアイディアを披露、参加者感心の力作ばかり
5月31日には、第一次審査ワークショップが鳥羽市役所にて行われた。これは全国から集まった78案のうち一次審査を経て選ばれた6案について市民、審査員、そして提案者チームが意見を交わすワークショップだ。市役所は鳥羽駅から歩いて15分ほど。休日の庁舎の廊下を抜け、会場の大会議室に到着すると、すでに多くの人が集まり、がやがやとして活気のある様子だった。事務局の学生たちも多く、受付に、会場準備に走り回っている。
大会議室の壁には、コンペに寄せられた78案全てが貼りだされ、見る人は自由にコメントを付箋に残していける。一次審査時にも見入ってしまったが、力作ぞろいで見始めるとなかなか次に進めない。
会場は2エリアに分かれており、向かって左側には審査を通過した6案が展示され、もう片方には参加者が座って話し合う6つのテーブルが用意されている。各テーブルは、色別に分かれており、受付でもらった名札の色に従って着席。6案の提案チームも1組ずつ各卓に着き、筆者の「ピンク」のテーブルでは、大胆な水上交通を提案したチームと一緒だった。
日程の前半はテーブルごとのワークショップに当てられた。自己紹介から始まり、「あなたにとっての鳥羽駅とは?」というお題に対して、駅周辺の散歩を長年の日課とする市民、今日初めて鳥羽を訪れた人といった多様な参加者が、それぞれの視点から「鳥羽駅」について意見を交わした。
提案チームのモビリティ・建築プレゼン 特製の模型も登場
後半は6つの提案について各チームのプレゼンテーションが行われた。出品作の詳細については下記リンクを要参照。提案者がプレゼンを行った6作品
大判のプレゼンボードに加えて、この日のために用意したという模型も並んだ。平面図よりもアイディアが伝わりやすい模型に対して参加者からのコメントは絶えることがなかった。提案者チームはこのワークショップで得たフィードバックを案に反映させ、7月5日(土)の最終審査会に臨む。
鳥羽は、その昔、大阪や鳥羽周辺の桑名・熱田江戸の間を伊勢湾の海運を利用して江戸まで移動する交易船が立ち寄る港町として栄えた。一説には「泊浦(とまりうら)」、「泊り場(とまりば)」がなまったものが鳥羽の地名の由来だという。※https://tobamarche.jp/history.html
かつて海を行きかう人や物が多く集った「泊まり場」である鳥羽。「移動すること」について、訪れる人・住む人の双方の視点から再考し、発信していく場として、こんなにふさわしい場所はないのかもしれない。
次回、最終審査会は7月5日(土)に行われる。鳥羽市在住やワークショップ参加の有無に限らず参加可能で、リンク先にて参加登録する。
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株式会社AMANE 佐藤和貴子