未来のモビリティ社会に光のソリューションを ― 小糸製作所, 東京モーターショー2019
2019/11/7(木)
小糸製作所は「モビリティ社会を支えるセンサ・ライティング・ソリューション」をコンセプトに掲げ、自動運転をはじめとした新時代のモビリティを見据えたさまざまな製品を展示した。
まず目に飛び込んできたのは、光を用いて道路上に情報を投影する「ロード・プロジェクション・ランプ」のデモ展示だ。ヘッドランプからプロジェクションマッピングのように絵や図形を投影し、ドライバーに情報を提供する様子を披露した。具体的には、歩行者を検知したときや、図のように車両とすれ違う際に車幅を表示することでドライバーの安全運転をアシストするといった利用が可能だ。道路上に投影する形式のため、表示の仕方では歩行者の側から見た安全性の向上も期待できる。現在のところ、どういった情報を表示するのが最適かという点や、法規的な問題などの議論を進めている段階とのことで、市場に出るのはもう少し先の話になりそうだ。
そのほか、LiDAR、ミリ波レーダー、カメラを統合したセンサーモジュールを展示。今回小糸製作所が展示したのは車体の四隅、ヘッドランプとリアランプに内蔵可能な製品だ。これまではサイズの問題などからランプ内部の搭載は難しかったが、各機器の改良が進んだこともあり、内蔵可能なサイズまで小型化することに成功したという。デザイン面で車両の形状に大きな制約が掛からない点もメリットの一つだが、LiDARやカメラの弱点でもある汚れや傷から守られる点も大きい。正に自動運転車両にうってつけのソリューションだと言えるだろう。
世界初「ブレードスキャンADB」を発表
交通事故削減にも貢献
さらに、小糸製作所は世界初となる「ブレードスキャンADB」の展示も行った。ADB(アダプティブドライビングビーム)とは、車載カメラで認識した情報に応じて、ヘッドランプの照射パターンを制御して、対向車や前走車のまぶしさを軽減しつつハイビーム同様に視界を良好に保つシステムだ。すでに小糸製作所では複数のLEDを個別に点消灯して配光を制御する「アレイADB」を実用化しており、今回の「ブレードスキャンADB」は今年9月に新型レクサスRXへの採用を発表したばかりの新技術だ。「ブレードスキャンADB」は高速回転する2枚のブレードミラー(リフレクタ)にLEDの光を照射し、光の残像効果を用いて前方を照射する方式。ブレードミラーの回転と12個のLEDの点消灯を制御することで、数百個のLEDを使用するADBと同等の配光を実現している。これにより、対向車や前走車に対する遮光範囲を極めて小さくすることが可能で、照射範囲が広がるため歩行者の早期発見にもつながるという。映像を用いたデモでは、「ブレードスキャンADB」を用いると、従来方法よりもいち早く歩行者を検知できると説明していた。
自動運転サービスが本格的に市場へと投入されるまでには、クリアしなければならない課題はいくつもある。そして、その一つは人とクルマのコミュニケーションだろう。今回小糸製作所が展示した多彩なラインアップは、その課題に「光」を通してさまざまな角度から取り組んでいることを感じさせるものだった。