AIは交通をどう変えていくか―東京大学特任教授・中島秀之氏に聞く
2017/12/12(火)
目的が人間側にある限りシンギュラリティは起こらない
――近い将来、AIは人間を脅かすような存在になるのでしょうか?クルマは、行きたい場所があるから乗るのであって、クルマが行き先を決めているわけではありません。クルマがAIになってもそれは変わらないと思います。自分たちの道具として、人間が欲しいからAIを作っているのです。目的が人間側にあるというのは永久的に変わらない構造だと思っています。
都内ですべてのクルマがカーナビを使っていたとしたら、将来どのクルマがどこへ行くかは全部計算できます。そうすると、何分後にどの場所が混むのかが分かります。今のカーナビは、渋滞が起こってから知らせてくれますが、予め混みそうなところを避けて通ることができるようになります。
――AIで今の交通課題は解決しますか?
予測は人間よりコンピューターのほうが得意です。すべてのクルマをコンピューターが集中管理するようになると、都内の交通は今より遥かにスムーズになります。全部が自動運転車になると、信号機は不要で、10センチの差があればクルマ同士が通り抜けることができます。人間にはできない使い方をコンピューターに教えて実行することで、利便性が増します。
技術は倍々で加速しているので、社会もそれについていく必要があります。毎年速度が倍になるという意味で、シンギュラリティが始まっていると思います。みなさんが恐れている、コンピューターが人間の知能を抜くという現象は、今見えている範囲では起こらないでしょう。理由は、目的を人間が持っているからです。「その目的よりこっちのほうが良いのでは?」と言うAIを人間は作りません。人間は、自分たちのしたいことを実行するプログラムを作るのです。
法律も技術に追いつく必要がある
――自動運転車が走るのはまだまだ遠い未来に感じます。産業界も法律も変わらないといけなません。今、タクシーとバスがきれいに分離しているのは、要するに業界保護です。保護しているということは、業界が発展しないということです。クロネコヤマトは法律違反のようなことをあえて始めています。イノベーションです。そういう体制にならないといけないと思っています。法律が技術の後追いなのは仕方がないけれど、後追いの期間をできるだけ短くして欲しいです。
自動運転を規制する法律をつくるのではなくて、自動運転を可能にする法律を即座に作って欲しいと思っています。アメリカではテスラなどが自動運転で走り回っています。極端に言うと、都心は自動運転車以外のクルマを乗り入れ禁止にすればいいと思っています。機械と人間の手が混在しているのが一番危険です。事故も減り、飲酒運転もなくなり、交通渋滞がなくなるでしょう。例えば、東京の山手線の中も随分変わるはずです。
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