生成AIの活用進む 「モビリティ×AI」の現在地【CES2024】
2024/2/20(火)
ラスベガスで開催されたCES 2024で話題になったモビリティに関連する情報を総括してお届けする。今年は全体的な盛り上がりは見せたものの、大手自動車メーカーの姿は減っている。高い技術を持つ自動車機器および周辺機器メーカーをはじめ、ソフトウエア開発、アライアンスでの出展が多く、自動車以外のマイクロモビリティや空飛ぶクルマなどのモビリティも目立っていた。
北米進出を狙う 新興EVメーカーの出展
1月9日から13日までラスベガスで開催されたCES 2024では、大きく3つある展示エリアのうち、ラスベガスコンベンションセンターのウェストホールとセントラルホールの半分、駐車場エリアがモビリティ関連(CESでのカテゴリ表記はVehicle Tech)で占められていた。その数は600以上と発表されている。だが、GM、フォードといった米国ビッグスリーの姿は無く、大手自動車メーカーで出展していたのは、BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、KIA、ヒュンダイ、そしてホンダとソニー・ホンダモビリティなど。中国メーカーも見当たらず、そのかわり、ベトナムのVinFast Automotive、トルコのToggといった北米進出を狙う新興EVメーカーが目立っていた。
そうした中でソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」とホンダの新しいEVブランド「Honda 0シリーズ」は大きな話題になり、発表会には大勢の参加者が詰めかけていた。メルセデス・ベンツは、CLAクラスのコンセプトカーや現在開発中のGクラスSUVのプロトタイプを米国市場で初披露し、インパクトのある華やかなブースは、中に入れないほどいつも満員状態であった。
本来の見どころである最新技術のあれこれ
CESでは2011年頃から自動車メーカーの出展が増え、EVや自動運転、コネクテッドカー、インフォテインメントなどに関する最新技術を発表する重要な場となっている。自動運転は実装段階に入ったことで、インパクトのある発表は減った印象だが、半導体や車載コンピューティング、センサーといったハードからソフトウエア開発まで専門的な展示が増え、業界からの注目は続いている。例えば、自動運転のオープンソース開発を推進するティアフォーは、各社で収集していたカメラ画像やLiDARによる点群データなどを共有し、プラットフォーム上で自動運転AI開発をスケールさせられる「Co-MLOps(Cooperative Machine Learning Operations)」プロジェクトを発表している。開発を主導する自動運転OS「Autoware」を搭載したロボバス・シャトルも展示され、熱心に質問する来場者がよく見られた。
クァルコムは基調講演にも登壇し、CEOのクリスティアーノ・アモン氏は「自動車でも生成AIの使用が進み、省電力で高性能なコンピュータプロセッサが必要になる」と述べ、モバイル向けに開発してきた「Snapdragon」を車載向けに強化していくとしている。ブースでは最新のインフォテインメントなども紹介され、モビリティ分野でも存在感を見せている。
その生成AIの活用では、モビリティ向けコネクテッドテクノロジーを提供するセレンスが、フォルクスワーゲン、Microsoftと共同でChatGPTを車載アシスタントに統合する「Cerence Chat Pro」を開発していることが発表された。
実用面というところでは、自動の駐車システムや充電機器などの出展が多かった。EVの普及でこの2点は課題になっており、ビジネスチャンスにしようと参入が増えていることがわかった。
韓国のLGが最新家電と並べて次世代モビリティとして発表していた、SDV(Software-Defined Vehicle)のコンセプトカー「LG able」のイメージムービーでは、駐車や充電、洗車やメンテナンスまですべて自動で行ってくれる駐車場も提案されていた。
コンセプトカーには自動運転でドライブしながら周辺や店の情報を表示してくれるARナビが搭載され、買った商品を保存できるフリーザー機能オーダーまである。車内の大型ディスプレイは出し入れ自由で、プロジェクターでドライブシアターもできるという、まるで走る家電のようであった。
次に来る移動のトレンドも見えた?
モビリティ分野は自動車以外の出展もあり、そこから次のトレンドが見えてくる。例えば、マイクロモビリティは一世を風靡した電動キックボードが減り、代わりに電動バイクの展示がざっと数えただけで20近くあった。デザインはオシャレで個性的なものが多く、大量生産するシェア用というよりは、大事に乗り続けたいという気持ちにさせようとする開発者側の熱意が感じられた。個性的な電動バイクがあちこちで見られた
意外なことに出展が多かったのが、日本では空飛ぶクルマ、海外ではフライングタクシーなどと呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)だ。長距離は難しいが、渋滞が多い都心部や観光地で早く快適に移動する手段としてeVTOLに対する期待が高まっている。1人乗りから複数人まで様々なタイプがあり、一部はすでに販売も開始されている。韓国のヒュンダイグループがアドバンス・エアモビリティとして新たに立ち上げたブランドSupernalは、北米の都心部から空港までの移動手段となる、5人乗り(パイロットを含む)の「Supernal S-A2」を開発。運用も含めたトータルなサービスを提供するとしており、2028年からの運用開始を予定している。
中国のXPENG AEROHTが開発するコンセプトモデル「eVTOL Flying Car」は、まさしく空飛ぶクルマといえるもので、スーパーカーの上に折りたためる4つのローターを搭載し、地上と空を自由に移動できる。
他にも、コンパクトタイプのeVTOLとそれを後部に乗せて運べる自動車を組み合わせた「Modular Flying Car」も発表している。個人向けで年内には予約注文を開始し、2025年には引き渡される予定だ。
昨年東京で開催されたJapan Mobility Showのように、最近はモーターショーでもEVや自動運転の出展が増えていることから、CESは今後こうした自動車以外の出展に力を入れていく可能性がある。もしくは再び大手メーカーが戻り、話題を集める重要な発表の場としてあり続けるのか。来年の出展がどのようになるのかが今から気になるところだ。
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(ITジャーナリスト / 野々下 裕子)