自動車教習もオンライン導入? 社会の変化を踏まえ警察庁が通達
2020/12/25(金)
12月10日、警察庁は「指定自動車教習所におけるオンラインによる学科教習の実施について」との通達を発表した。
周知の通り、現在の指定自動車教習所(以下、教習所)における学科教習は、教習所内の教室で実施している。一方、現在は新型コロナウイルスが拡大し、幅広い産業でデジタル化が進展するなど社会情勢は大きく変わった。警察庁は、この変化を踏まえ、「一定の方法で行うことによりオンラインで学科教習を行うことができるものとする」と関係各所に発した。
基本方針では、「オンライン学科教習は、当該教習を希望する教習所において行われるもの」とし、全ての教習所にオンライン学科教習を義務付けるものではない。また、オンライン化の目的は対人接触や移動に伴う感染を回避するためとしつつ、自然災害により教習所が休校した場合などの対応、教習生のニーズなどを踏まえ、「現行法令の教習制度を前提に教習の水準を維持しつつ、教習所の学科教習の実施方法を拡大し、教習生の利便性の向上を図るもの」とした。周知の通り、現在の指定自動車教習所(以下、教習所)における学科教習は、教習所内の教室で実施している。一方、現在は新型コロナウイルスが拡大し、幅広い産業でデジタル化が進展するなど社会情勢は大きく変わった。警察庁は、この変化を踏まえ、「一定の方法で行うことによりオンラインで学科教習を行うことができるものとする」と関係各所に発した。
具体的な実施方法は、「ライブ配信方式」か「録画配信方式」のいずれかが挙がっている。なお、道路交通法の規定により、オンライン学科教習であっても教習所で選任された教習指導員が実施する必要がある。
録画配信方式については、オンライン学科教習を行う教習所で選任された教習指導員が出演または監修することのほか、教習終了後に指導員による質疑対応の機会が確保されている必要がある。さらに、教習生のなりすまし・替え玉受講などを防止するため、個人IDやパスワードなどを用いて、教習生の個人識別を確実に行うことが求められている。
そのほか、実技訓練を伴う「応急救護処置」など、教習所における学科教習と同等の教習効果が認められない項目についてはオンラインでは行わないこと、といった項目なども盛り込まれた。
■早くもオンラインサービスがリリース 新たなニーズ対応も
12月10日、早速この動きに対応するサービスを開始するとの発表があった。都内に本社を構えるアカメディア・ジャパン株式会社が発表したオンラインサービス「オート・アカデミー」だ。自動車教習所で行われている学科教習を、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末から受講できるという。これまでも学科教習をオンライン化するニーズがあったにもかかわらず導入が進まなかったのは、前述のなりすましをはじめとした不正行為や、「実際には講義を聞いていない」といった課題への対策が十分でなかったからだ。
同サービスでは、 警察庁からの通達を踏まえて、独自開発の本人認証学習プログラムを活用。オンライン上の講義でも本人認証を行い、受講者が講義を聞いているかを判別できる受講システムを確立した。具体的には、ID・パスワードの発行に加え、教習所で登録いた生体認証情報を用いる。さらに、確認テストを実施して受講済み認定を行う仕組みだ。
サービス開始に合わせ、アカメディア・ジャパンの菊池参代表は以下のようにコメントした。
「当社が開発した『オート・アカデミー』は、警察庁・公安委員会の法令および指定自動車教習所の3つの基準に準拠した、安心安全にご利用いただけるサービスです。独自開発の本人認証学習プログラム※を取り入れることにより、オンラインでも本人のなりすましや不正を防止し、厳格な学習環境にて講義を受講していただけます」さらに菊池氏は、「コロナ感染症や近年増えている暴風雨・台風被害等で教習所に通えない方々、時間の取れない学生や社会人、育児・家事に追われる主婦の方々など、免許取得を望まれる皆様に広くご利用いただければと思います」とし、新たなニーズへの対応にも意欲を見せている。
(アカメディア・ジャパン プレスリリースより)
※オンライン学習システム特許第6797388号
■自動車業界の変化・多様化に対応を
前述のサービスで新たなニーズ開拓を行う一方で、現状では自動車教習を受ける年代は若年層が多くを占める。そして、その層といえば「若者の車離れ」という課題がしばしば指摘される年代だ。実際のところ、この課題は今どのような状況なのだろうか。ソニー損保が毎年行っている「新成人のカーライフ意識調査」の2020年版(1月7日発表)では、「運転免許の保有率」は56.4%、「取得予定者」の割合は26.1%となった。つまり今でも実に若者の8割以上が運転免許を保有している、あるいは将来保有する考えであることがわかる。しかし、ここ数年の推移を見ると2017年から減少傾向にある。さらに、今後は少子高齢化などの影響で若年層の数そのものが減少していくだろう。
免許保有者の割合 | 取得予定者の割合 | 合計 | |
2016年 | 54.8% | 31.3% | 86.1% |
2017年 | 56.3% | 32.7% | 89.0% |
2018年 | 56.0% | 32.2% | 88.2% |
2019年 | 61.5% | 24.2% | 85.7% |
2020年 | 56.4% | 26.1% | 82.5% |
表:ソニー損害保険株式会社「2020年 新成人のカーライフ意識調査」(2020年1月7日発表)をもとにLIGAREが作成。なお、「運転免許の保有率」はマニュアル・オートマ限定の合計。「取得予定者」は、アンケートで「現在、教習所へ通っている(マニュアル・オートマ限定)」と「時期は決まっていないが、取得予定」と回答した者の合計。
そのような状況にあって、今回のオンライン化の動きはどのような効果をもたらすだろうか。今回の通達以前の11月13日、小此木 八郎・国家公安委員会委員長は記者会見で、学科教習のオンライン化は現在政府で進められている行政手続きのオンライン化の流れを踏まえたもので、そのほかにも教習所に関する各種書類の押印廃止についても取り組みも進めていると明かしていた。
これらの施策で合理化・効率化が実現すれば、以前よりも免許を取得しやすい環境が整うことになる。母数が緩やかに減る情勢下で、割合の減少に歯止めを掛けられるか。今後も注視していきたい。
コロナ禍の影響で、密な移動を避けるため自動車による移動が改めて見直された。さらに今後はカーシェアやフルサービスリースなどが拡大し、車の活用方法も多様化が進むだろう。そして、その流れが急速に進んだとしても、より柔軟にモビリティサービスを活用するために運転免許を保有しておくことは今後も欠かせない。
自動車業界に限らず社会全体が大きく変化し続けている状況にあるが、今回の取り組みが将来車を使う人にとって利便性が向上する改革となることに期待したい。
【資料出典】
ソニー損害保険株式会社「2020年 新成人のカーライフ意識調査」(2020年1月7日発表)
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2020/01/20200107_01.html 同リサーチレポート
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/research/
ソニー損害保険株式会社「2020年 新成人のカーライフ意識調査」(2020年1月7日発表)
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2020/01/20200107_01.html 同リサーチレポート
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/research/