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電話配車に自動運転タクシーを組み込む。電脳交通が徳島で進める「一体運用」実証

2026/3/30(月)

実証に使用した現代自動車(Hyundai)の車両 「IONIQ5」(画像提供:電脳交通)

徳島県鳴門市で、自動運転タクシーの実証運行が始まった。本取り組みは徳島県、日本電気(NEC)、電脳交通などが連携して実施するもので、2026年2月6日から3月31日までの期間で運行されている。今回の特徴は、既存のタクシー配車の仕組みの中に自動運転車両を組み込み、通常のタクシー運用と一体で検証している点にある。

地方でドライバー不足が深刻化する中、自動運転はタクシー事業の中でどのように活用できるのか。「電話配車×自動運転」という新しい運用モデルの狙いについて、電脳交通の新規事業開発室長である西本裕紀(にしもと ゆうき)氏に詳しく話を聞いた。

取材・文/LIGARE記者 松永つむじ

自動運転タクシー実証の背景

(画像提供:電脳交通)


今回の実証は鳴門市西部から徳島阿波おどり空港周辺を対象エリアとし、将来的な自動運転レベル4の導入も視野に入れている。特徴は、既存のタクシーと自動運転タクシーを同じ配車システム・配車センターで管理する「一体運用」にある。NECの自動運転サービスプラットフォームと、電脳交通の配車システム「DS」を連携させ、通常のタクシー配車の流れの中で自動運転車両を扱えるようにした。自動運転車両が加わっても、これまでのタクシー業務の流れを大きく変えずに運行できるかを確かめる。

背景にあるのは、地方で深刻化するドライバー不足だ。地域の移動手段をどう維持するかは、多くの自治体や交通事業者が直面する課題となっている。今回の実証は、自動運転タクシーを既存の交通サービスの中に組み込み、地域交通として成り立つかを探る試みでもある。

既存タクシーの運用に「自動運転」を組み込む

今回の実証の特徴は、自動運転車両を走らせるだけの技術検証ではない点にある。というのも、既存のタクシー事業の配車や運行の仕組みの中に自動運転車両を組み込み、実際の事業運用として成立するかを検証することに焦点を当てているからだ。では、この実証で電脳交通はどのような点を重視しているのか。新規事業開発室長の西本裕紀(にしもと ゆうき)氏に話を聞いた。

―――今回の実証では、評価目標としてどのような点に注目していますか。

西本氏:今回の実証では、大きく三つの観点で評価を進めています。運用、安全、そして事業性です。

まず運用面では、既存のタクシー配車の仕組みに自動運転車両を組み込み、実際のオペレーションとして成立するのかについて確認です。これまでの実証では、自動運転車両専用のサービスとして運行するケースが多かったのですが、今回は、通常のタクシー配車の流れの中で自動運転車両を扱う運用を重視しています。

次に安全面についてです。今回の実証はレベル2運行でドライバーが同乗する前提ですが、遠隔監視の仕組みも組み合わせながら、配車と車両の走行状況の両方を同時に把握できる体制を試しています。異常時にどのような対応が必要になるのか、といった点も含めて運用面での学びを得ることが目的です。

そして事業面では、複数の自動運転車両が導入された場合に、どの程度の人員や体制が必要になるのかについて確認しています。例えば3台、5台と台数が増えた場合、運用コストや人員配置がどう変わるのか。将来的にタクシー事業として成立させるための運用モデルをつくることも重要な目的です。

(画像提供:電脳交通)


――徳島・鳴門という地域で実証する意味は何でしょうか。

西本氏:今回の実証は、国の事業として自治体と連携して進める枠組みの中で実施していますが、まずは当社の地元でもある徳島県で取り組みたいという思いがありました。

その中で鳴門エリアが選ばれた背景には、徳島県のタクシー営業圏の事情と交通環境の特徴があります。徳島空港は鳴門市に隣接する自治体(松茂町)にあるのですが、タクシーの営業圏の関係で、県庁所在地である徳島市のタクシー会社が空港で待機営業することは基本的にできません。発地か着地のいずれかを徳島市内とする営業圏ルールがあるためです。

その結果、空港やその周辺で稼働しているタクシー車両は決して多くはなく、かつその他公共交通(空港バス・路線バス)も主たる運行は徳島市内方面に向かっており、鳴門エリアに向かう移動手段が乏しい課題意識を徳島県も抱えておりました。こうした地域の移動課題を背景に、空港周辺を含む鳴門エリアで実証することになりました。

――既存タクシーと自動運転タクシーの「一体運用」とはどのような仕組みなのでしょうか。

西本氏:これまでの自動運転の実証では、自動運転車両専用のサービスとして運行するケースが多く、利用者も事前に参加者を限定するなど、通常のタクシーとは別の仕組みで運用されることが一般的でした。

一方、今回の実証では、既存のタクシー会社の電話配車をそのまま活用しています。利用者は普段どおりタクシー会社の配車番号に電話をかけて依頼します。乗車地と降車地が自動運転の運行条件に合致した場合、オペレーターが自動運転車両の利用を案内し、了承が得られた場合に自動運転タクシーを配車する仕組みです。利用者視点では普段通りにタクシーを呼んでみたら、自動運転車両だった、という体験を設計しました。

既存タクシーと同一の配車フローの中で自動運転車両を扱い、実際のタクシー事業として成立するのかを検証しています。

――実際に利用者の反応はどうでしたか。

西本氏:現時点で、自動運転車両だからという理由で明確に利用を断られたケースはほとんどないと聞いています。一方で、「ドライバーは乗っているのか」と確認されることは何度かありました。今回はレベル2運行でドライバーが同乗していることを説明すると、安心して利用される方が多い印象です。

こうした反応を見ると、無人運転に対する心理的なハードルはまだ一定程度あると感じています。今後は自治体と連携しながら、空港や商業施設などで実際の車両を見てもらう機会を増やし、理解を深めていくことも重要だと考えています。

――電脳交通は今回の実証でどの役割を担っているのでしょうか。

西本氏:大きく三つあります。まず一つは配車業務です。今回の実証では、きんときタクシーから自動運転車両の差配を含めた配車業務を受託し、既存タクシーと自動運転タクシーを同じ配車センターで一体的に管理しています。

二つ目は、配車システムと自動運転システムの連携です。電脳交通の配車システムで設定した乗降地点の情報を自動運転車両側に連携し、ルート生成の結果を受け取ることで配車が成立する仕組みになっています。

三つ目は、乗降地点の設定支援です。今回の実証では、あらかじめ設定した計27カ所の乗降地点内での運行方式を採用しており、きんときタクシーの営業実績データをもとに、利用ニーズの高い地点を選定しています。データの収集・分析を支援し、実際の利用が見込まれる地点を設定することで、実証期間中の利便性と利用頻度を高めています。

運用モニター画面(画像提供:電脳交通)


――既存タクシーと自動運転タクシーの混在により、見えてきた課題はありますか。

西本氏:運用面では、オペレーターの対応が少し複雑になる点が挙げられます。自動運転車両を案内する場合は、通常の配車に加えて運行条件や利用時の注意点などを説明する必要があり、案内項目が増えるからです。

また、遠隔監視の体制も注目点だと考えています。自動運転車両が増えていくと、それぞれのタクシー会社が個別に監視体制を整えるのは効率的ではありません。将来的には遠隔監視機能を集約するなど、地域全体で現実運用を可能にする仕組みづくりが重要になってくると思います。

――今後、レベル4の実装に向けて重要になるポイントは何でしょうか。

西本氏:レベル4の実装を考えると、遠隔監視や運行管理をどのような体制で担うのかが重要なポイントになると考えています。将来的に自動運転車両の台数が増えていけば、各事業者が個別に対応するのではなく、地域全体で運用を支える仕組みも必要になってくるでしょう。

その意味でも、今回の実証を通じて、既存のタクシーの運用の中で自動運転車両をどのように扱うのが現実的なのか、を整理していきたいと考えています。

自動運転車両を「タクシー事業」に組み込むための運用設計

今回の実証が重視しているのは、自動運転車両を走らせることそのものではなく、既存のタクシー運用の中にどのように組み込むかという視点だ。利用者は従来どおりタクシー会社の配車番号に電話し、乗降地点などの条件が合致した場合に自動運転車両が案内される。運用中は、既存の配車フローを大きく変えずに自動運転の運用を組み込み、実際のタクシー事業として成立するのかを検証している。

また、自動運転車両が増えた場合の遠隔監視や運行管理の体制も必要になってくる。各事業者が個別に対応するのではなく、地域全体で運用を実現化できる体制をどのように設計するかが、将来的な普及の鍵になるといえる。今回の実証は、自動運転を地域交通の中で実装していくための運用モデルづくりという側面も持っている。

取材を終えて
自動運転の実証は各地で進んでいるが、既存のタクシー運用の中に組み込む形で検証する例はまだ多くない。今回の取り組みは、技術の実証というよりも、実際の交通サービスとして成立するのかを探る試みといえる。ドライバー不足が深刻化する中、自動運転が地域交通の選択肢として根付くためには、こうした運用面の検証が重要になっていくだろう。

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