ITの技術をクルマの世界へ 富士通Mobility IoT事業の取り組み
2016/7/31(日)
AIを活用した運転制御
車内外のセンサーやデバイスで、ドライバーの状態や周辺環境を認識することはできます。しかし、データを集めるだけでは意味がありません。例えば運転手が運転できる状態にあるかなど、認知・予測・判断を行うことが必要になります。自動運転の運転制御を実現するためにも、もちろん必要になります。松村氏は「AIの活用をしながらディープラーニングを車載に組み込むアルゴリズムや、チップの開発をしていこうと考えている」と述べています。クルマの運転制御だけでなく、プローブデータを集めてそれを分析し、渋滞や路面状態、車輌の状態や事故発生のリスクなどをクラウドで分析するためにも、AIを活用していくとのことです。このクラウドでのAI分析・予測を行う部分が、図1の上段部分になります。ここでは、富士通の持つスーパーコンピューター「京」の技術を応用し、高速な処理を可能にしていきます。「ビッグデータが集まる中で、いかにそれをセキュアに、素早く処理するかが大切になります」と松村氏は述べています。スーパーコンピューターの技術に加え、5Gの通信によるデータの集配信を見据えたエッヂコンピューティングの技術にも取り組んでいるとのことです。
ダイナミックマップの管理
さらに、富士通はダイナミックマップの管理を、IoTプラットフォームの中に組み込もうと考えています。地図は、自動運転に欠かせないものとして重要視されています。日本国内でも、内閣府のSIPを中心として、ダイナミックマップを構築するためのコンソーシアムが組まれています。ダイナミックマップは、路面や車線の情報、建物の場所など静的な情報をベースとして、車輌から集積した事故や渋滞などの動的情報を重ねています。しかしながら、これらのデータはサービスとして上手く活用されていないのが現状です。「地図そのものをつくるわけではありません。メーカーやサプライヤが得意とする地図を構築するところまでは行われていても、システムとして動かした時に機能するかどうかはあまり検討されていません。IT会社として、地図のデータをいかに活用していくか考えていきたい」と松村氏は述べています。ビッグデータを活用したサービス
では、クルマから集まるビッグデータを使うことで、どのようなサービスができるのでしょうか。富士通は「SPATIOWL」という交通情報の管理基盤をサービスとして開発しています。そこに、鉄道やバス、地下鉄などのさまざまな交通機関の情報を統合することで、利用者向けに、マルチモーダルの最適なルートを検索するサービスを行うことができます。また、流通・運送業者向けには、配送料・配送先情報から事前に自動配車し、隊列走行をコントロールするなどのサービスを行うことができます。将来的には、必要最小限のドライバー配置計画や、商用車の車輌診断や故障予測などの運行管理もできるようになるとのことです。
IT企業として、世界レベルの技術を持つ富士通。ドライバーセンシングやAI、セキュリティ、スーパーコンピューターといった既存の技術を活用しながら、クルマのIoTプラットフォームを実現しようとしています。今後はクルマに集まるデータをいかに活用していくのかがカギとなっていくのでしょう。
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