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GTC Japan 2016 インタビュー ダニー・シャピーロ氏 ─ NVIDIA

2017/11/12(日)


─レーダーやLIDARをつくるTier1と比較してNVIDIAの優位なところは何ですか。

Tier1は競合ではなくパートナーであり、システムを開発していく上での協働者だと考えています。ただし、クルマの頭脳としてのGPUは、パフォーマンスや柔軟性を考えると卓越した製品であると考えています。自動運転で克服しなければいけない複雑な問題については、これまでのやり方では間に合わないので、ディープニューラルネットで学習しなければいけません。

 

─画像認識の領域で競合している企業はありますか。

私たちの市場は全く新しいものだと思います。技術は非常に正確で、人間を超えた能力で画像を認識することができます。そして、クルマのためにAIスーパーコンピューターをつくっているところは他にないと思います。

 

─モノを検知していく上でのこれからの課題は何でしょうか。

われわれは、メーカーではないのでシステムをつくっています。例えば、BB8は3000マイルを運転して学習できることを確認しました。プロセスが分かり、ソフトウェアやツールはこれから開発を進めていきます。また、一台だけではなく、フリートの形で何百代ものクルマからデータをとってきて学習を加速させることができます。

クルマに学習させるためは、走行距離だけでは足りません。どのような場所を動いていて、いつ走っていたのかという細かい情報も重要になります。高速道路や幹線道路のような平らな道を走行して得られたデータがたくさんあったとしても、実際に人間が運転するのはそういうところだけではありません。

また、現実的には、コーナーを曲がったときに人やクルマ、自転車が急に飛び込んできたとき、どう対応するかが問題となります。NVIDIAは潜在的に危険な状態をシュミレートすることが可能です。ここで重要になるのがGPUです。ビデオゲームのようなバーチャルな世界に人やクルマ、障害物を置き、仮想の世界で事象を起こしてどう対応していくか見られるようになります。

安全面の要求事項として、最終的には社会や政府の規制当局が考えて定義していかなければいけませんが、NVIDIAのDRIVE PX2は、人間が運転するよりは数倍は安全です。ただし、全車両が自律運転ができるようになったら安全かというと、人間が周りにいる限り事故がゼロになることはありません。航空機でも、10年前に比べると安全になりましたが、いまだに事故が起きていることを考えても分かると思います。

 

─Teslaの起こした死亡事故についてはどうお考えですか。

スケールできないADASシステムの欠陥がわかります。Teslaは「Autonomous」、つまり自律運転ではないので欠陥があるのだと思います。

今考えられることとしては、スマートカメラだけでは足りないということです。コンピューティングという意味での馬力を伸ばさなければいけません。あの日、アメリカでは95の死亡事故があり、Teslaの事故はそのうちの一つだったということです。あの事故から一つだけ良い教訓があったとしたら全体の意識の高揚につながったということです。自動運転の能力がどういったもので、どこまでのことができるのか、きちんとコミュニケーションを取らなければいけません。

 

─将来的にNVIDIAのシステムがクルマに乗った場合、メーカーとの開発の競合は起こらないのですか。

メーカーはクルマを運転したときの体験や見かけ、運転のしやすさや感覚を売っていると思います。それは自動運転になっても変わりません。自動運転になるとクルマのブランドというところに安全性の実績が入ってくると思います。システム自体の安全性や、システムに基づいた快適性はどのくらいなのか、運転手や乗っている人にどのくらいうまくコミュニケーションできるのかなどがブランドの質の一つになるでしょう。このクルマの心臓部分を、メーカーがアウトソーシングするとは思えません。

オープンなプラットフォームを使って、その上でカスタマイズをして差別化していきます。運転の体験やインタラクションが差別化のポイントとなるでしょう。例えば、ビデオゲームでは、ほぼ全てがNVIDIAのハードウェアやソフトウェアを使っていますが、ゲームは全て違うものです。このような差別化が自動車でも起こると考えています。
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