“クルマ屋LEXUS”のEVは、デジタル化された車室空間ならではの運転体験も【JMS2023】
2023/11/7(火)
レクサスは、ジャパンモビリティショー2023で次世代バッテリーEV(以下、BEV)コンセプト「LF-ZC」を公開。高い走行性能を継承しつつ、電動化技術の進化によって「クルマ屋ならではのBEV」を目指す。また、ソフトウエアプラットフォーム「Arene OS」を生かしたデジタルコクピットのカスタマイズなど、デジタル化された車室空間における新たな運転体験も提案した。
2026年の導入を目指す次世代BEVコンセプト「LF-ZC」
今回発表された「LF-ZC」は、レクサスの電動化を象徴するモデルとして2026年の導入を目指している。エンジンルームが不要であるBEVの特徴を生かしてドライバーを前方に低く着座させ、広い車室空間を確保。さらに視界も広く取り、運転に没入できる空間にした。また、「Digitalized Intelligent Cockpit」を採用し、運転に没入できるよう、直感的な操作を行える機能を多数搭載している。例えば、ステアリングの両側には操作機能を集約したデジタルパッドを配置。シフトやドライブモードの切り替えなどに関する操作は左側、音楽や空調の操作、電話やAIからの提案に対する応答などの操作は右側に分け、直感的に操作しやすいレイアウトとなっている。
さらに、ヘッドアップディスプレイと同じ原理でフロントウィンドウに情報を映し出す遠視点メーターを採用したほか、車体の両サイドに配置したデジタルミラーによる車両周辺の映像を投影することで、視線の移動を最小限に抑え、運転に集中できるコックピットを構築した。
左図はレクサス プレスリリースより
現実空間とバーチャル空間が交差する新たな運転体験
「Digitalized Intelligent Cockpit」には、新たなソフトウエアプラットフォーム「Arene OS」を採用。車内でステアバイワイヤを使用してeSportsをプレイし、気に入ったセッティングをOTA(Over The Air)で実装することができ、バーチャル空間で行った車両セッティングを現実世界でも再現する新たな運転体験を味わえる。OTAの活用で先進安全技術やマルチメディアなど、機能のアップデートに順次対応することも可能だ。さらに、AIを活用した次世代型の音声認識では、日頃の運転や行動パターンに加え、ドライバーの好み・感情を踏まえた走行ルートやモードの提案を行う。クルマ側がドライバーにとって最適なセッティングに自動で変更することで、パーソナライズされた運転体験を提供できる。
そのほか、一部素材には「Bamboo CMF Concept※」を採用。古来日本で使われてきた伝統的かつサステナブルな素材である竹を用い、環境への配慮とラグジュアリーなデザインの両立を示した。
※CMFは、Color、Material、Finishの略。クルマづくりにおける、色や素材、質感を含めたデザインを指す。
BEVの普及に向けた次世代技術
レクサスの次世代BEVでは、車体をフロント・センター・リアに3分割した新たなモジュール構造「ギガキャスト」を採用する。キャスト化によって形状の自由度を高めつつ、一体成形により剛性を高めることが可能だ。車体のセンター部分に電池を搭載することで、フロントとリアは構造上の影響を受けず、次世代電池の開発を素早く車両に反映させることが可能となり、開発の迅速化などに貢献できる。生産工程においては、「自走組立ライン」を採用。フロント・センター・リアの3つの部品と電池・モーター・タイヤ・無線端末で構成された組み立て中のクルマが自走して、次の工程へと移動することができる。これにより、コンベアを用いないラインを構築することができ、工場レイアウトの自由度が高まるほか、量産の準備期間や工場投資を削減できるという。
さらにレクサスは、次世代BEVへの搭載に向けて「次世代電池パフォーマンス版(角形)」を開発中だ。この次世代電池開発では、空力性能や軽量化による車両効率や電池性能の向上によって、航続距離1,000kmの実現を目指している。また、低ハイト化によって車両デザインの自由度を高め、高い運転性能を維持するための低重心化にも貢献する。加えて、高エネルギー密度の実現のため、電池構造をシンプルかつコンパクトにすることで、より多くのエネルギーを搭載できるという。
2035年のBEVブランド変革に向けて
ジャパンモビリティショーでは「Pushing the Boundaries of the Electrified Experience」をテーマにした数々の展示を行ったレクサス。前述した「LF-ZC」のほかにも、BEVフラッグシップコンセプトモデル「LF-ZL」の世界初公開も実施するなど、2035年までに達成を目指すBEVブランドへの変革に向けて新たな指針を示した。「クルマ屋ならではのBEV」を掲げつつ、電動化・デジタル化の波を反映した運転体験のアップデートを加速させている。